受水槽の清掃はいつやるべき?必要なタイミングや貯水槽との違いを解説

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公開日:2024年12月12日
更新日:2024年12月18日
受水槽の清掃はいつやるべき?必要なタイミングや貯水槽との違いを解説1

建物の所有者が保守管理を行うことが法律で定められている受水槽。一定以上の規模の賃貸住宅のオーナーであれば、受水槽の清掃費用は定期的にかかる経費として予定しておく必要があります。オーナーが知っておきたい受水槽の清掃頻度や、業者に依頼するときのポイントをまとめました。

受水槽とは

受水槽の清掃はいつやるべき?必要なタイミングや貯水槽との違いを解説2

受水槽とは、ビルやマンションなどの建物で、水道局から供給されてきた水を各戸に給水する前にいったん貯めておくタンクのことを指しています。給水方式には、受水槽を経て給水する「受水槽給水方式」、配水管から住戸へ直接給水する「直結給水方式」などの種類があります。

受水槽は建物の1階や地下にあることが多いですが、古い建物では屋上にあることも。屋上に設置されている受水槽は「高架水槽」「高置水槽」などと呼ばれます。10㎥(立法メートル)を超える受水槽を備えた給水設備の場合、建物所有者は定期的な清掃や定期検査を行うことが水道法で義務付けられています。

受水槽の役割とメリット

通常の戸建てであれば、水道は給水管から直接供給されます。しかし、大きな建物や戸数の多い集合住宅の場合は給水管だけでは給水しきれず、上の方の階に水を送る水圧も足りません。そこで一度、大量の水を受水槽に貯めておいてから、ポンプや重力の力を使って各戸に供給します。

受水槽によって、配水管の水圧にかかわらず、各蛇口から一定の水圧で安定した量の水を出すことができます。また、断水時や災害時でも給水が確保できるという役割もあります。

受水槽の基本構造

受水槽からの給水方法には「高置水槽式」や「ポンプ直送式」、「圧力水槽式」などがありますが、受水槽の基本構造は法律や条例で次のように定められています。

・受水槽の天井、底または周壁を建物の一部として使用しないこと
・清掃の際に断水しないように2基以上設けるか、中に仕切りを設ける
・受水槽の天井には1%以上の勾配を設ける
・受水槽底部には1%以上の勾配、排水溝、吸い込みピットを設ける
・受水槽マンホールは防水パッキンと鍵をつけて直径60cm以上、周囲から10cm以上立ち上げて設置する
・容量2㎥以上の受水槽には防虫網つきの通気口を設け、その開口部は受水槽上面から10cm以上の高さにする
・受水槽内の給水管と、給水ポンプの吸い込みは対角に設ける
・オーバーフロー管は間接排水とし、開口端には防虫網をつける
・受水槽内部に飲料水用給水管以外の配管を設けない
・受水槽天井の上部には飲料水用給水管以外の配管を設けない
・受水槽の上方にポンプなどを設置する場合は、飲料水を汚染しないような措置をとる

 

水は生命にかかわる大切なものであるため、衛生的に保たれるよう、また清掃や点検がスムーズに行われるように厳密に構造が定められているのです。

受水槽と貯水槽の違い

受水槽と似た言葉に貯水槽があります。一度にたくさんの水を使う施設などで水を貯めておく役割は同じですが、受水槽が飲料用水だけを貯めるのに対し、工業用水や防災用水を貯める貯水槽もあります。貯水槽はその名前の通り水を貯める設備の総称で、その一部として受水槽が含まれることになります。

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受水槽の清掃はいつやるべき?必要なタイミングや貯水槽との違いを解説2

受水槽はいつ清掃すればいい?

受水槽の清掃はいつやるべき?必要なタイミングや貯水槽との違いを解説2

受水槽を清掃するタイミング

毎年行うことが義務付けられている受水槽の清掃。水道法に定められているのは「年一回」という頻度のみですが、1年のうちの何月ごろに清掃すれば良いのでしょうか。

清掃会社数社のホームページによると、GWから梅雨の時期、夏ごろがよく推奨されています。気温が上がって雑菌が繁殖しやすい時期を迎えることや、帰省などで人がいなくなり、水の回転が悪くなることが理由に挙げられています。水を使う頻度が下がると、水が入れ替わらず塩素が減って消毒能力が低くなるという訳です。

受水槽の点検頻度ガイドライン

年1回の受水槽内部の清掃は、都道府県の認可を受けた専門業者に依頼する必要がありますが、それ以外にも管理会社やオーナーによる日常的な点検を行うようにしたいところ。例えば、東京都では、5〜10㎥以下の特定小規模貯水槽を備えた施設のオーナーに次のような管理を指導しています。

施設の管理状況の点検

月に1回はマンホールの施錠状況、防虫網の状況、水槽付近の状況等について点検を行う。定期的な点検のほか、台風や地震などの影響で水質が悪くなるおそれのある場合も点検を行う

水質検査
(1)水の色・にごり・におい・味のチェック(毎日)

透明なガラスコップに蛇口から水道水をくみ、水の色が透明か、にごりがないか、塩素(カルキ)臭以外の臭いがないか、変な味がしないか調べる

(2)残留塩素の測定(週1回)

給水栓末端で、遊離残留塩素が0.1mg/L以上あるかを確認する

(3)水質検査(年1回)

受水槽の清掃はどこに依頼すればいい?

受水槽の清掃はいつやるべき?必要なタイミングや貯水槽との違いを解説2

会社選びのポイント

受水槽清掃は単なる清掃作業ではなく、水質検査や設備のメンテナンスなど専門知識が必要です。そのため、まずは「建築物飲料水貯水槽清掃業」の認可を受けている業者を選ぶようにしましょう。

認可には、必要機械の所有や作業監督者が有資格者であること、作業従事者が決められた研修を修了していることなどが求められます。

その他のポイントとしては以下のような点を確認すると良いでしょう。

ホームページ等でチェックすること
☐ 実績が多いかどうか
☐ 費用が明記されているか
☐ 作業内容やサービス内容が分かりやすく明記されているか
☐ 依頼前に見積もりを出してもらえるか
☐ 対応エリア内か
☐ 口コミの評価はどうか

 

実際の対応でチェックすること

 

☐ 電話対応はしっかりしているか
☐ 折り返しのレスポンスは早いか
☐ 作業内容や見積もり、こちらの質問に対して丁寧に詳しく説明してくれるか

 

これらをふまえて、できれば複数の清掃業者から相見積もりをとることで、よりリーズナブルな費用で受水槽の清掃を行うことができるでしょう。

受水槽の清掃を依頼したときの手順

受水槽の清掃はいつやるべき?必要なタイミングや貯水槽との違いを解説2

入居者への清掃・断水の告知

業者が決まり、清掃日が決まったら入居者への告知を行います。断水は生活に大きな影響があるため、日時が決まり次第、できれば清掃日の2〜3週間前に行いましょう。

告知の方法は掲示板に告知を貼る、ビラを各戸にポスティングするなどの方法が一般的です。告知作業まで代行してくれる清掃業者もあるため、手間がかけられない場合は依頼を検討しましょう。

清掃の立ち会い

清掃そのものは、大まかには以下のような手順で進みます。

  • ①準備(器具の洗浄や消毒、着替えなど)

  • ②水質検査

  • ③配水管の弁を閉めて断水し、受水槽内の水を排水して空にする

  • ④清掃作業(ブラシやスポンジ、ときには高圧洗浄機などで槽内の汚れを除去、清掃前後で写真撮影)

  • ⑤塩素消毒(槽内に塩素を塗布して放置、水洗い)

  • ⑥受水槽への水張り

  • ⑦断水の復旧

  • ⑧水質検査

  • ⑨周囲の清掃

受水槽の規模にもよりますが、かかる時間はだいたい3〜5時間前後です。賃貸オーナーや管理者は清掃中ずっとそばで立ち合いをする必要はありませんが、水質検査の検体を採取するときなどに確認を求められることがあります。

また、きちんと復旧したかどうかを確認するために、終了間際には立ち会った方が安心です。

受水槽の清掃は必要?

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受水槽を清掃しないと発生するリスク

受水槽は定期的な清掃や点検、水質検査を行う必要があります。清掃を怠ると、内部で水垢やカビが発生したり雑菌が繁殖したりするため、蛇口からは汚染された水が出てくることに。それを飲んだ入居者に健康被害が発生するリスクがあります。

そこまではいかなくても、適切な点検が行われないことでポンプが故障して断水したり、貯水槽から水があふれたりするなどといった設備トラブルにつながることもありえます。入居者への賠償や修理費など、膨大な出費となるかもしれません。

法令と規制による清掃義務

水道法では、容量10㎥以上の貯水槽を「簡易専用水道」に区分しています。簡易専用水道の所有者は毎年1回以上清掃を行うことが義務付けられており、違反した場合は100万円以下の罰金が科されることもあります。

法令遵守と定期点検

水道法では他にも「水槽の点検等有害物、汚水等によって水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること」と明記されており、清掃だけでなく点検や水質検査も行う必要があります。

また、容量10㎥以下の「小規模貯水槽水道」についても、条例で定期清掃と適切な維持管理を定めている自治体は多くあります。お住まいの自治体のホームページ等で調べてみましょう。

法律で定められた清掃頻度

水道法には「水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと」とあります。賃貸オーナーは毎年時期を決めて、忘れることなく受水槽の清掃を実施しましょう。

まとめ

受水槽の清掃は怠ると法的に罰せられるだけでなく、入居者の生命を危険にさらしてしまう危険もあります。キレイな水で気持ちよく暮らしてもらうためにも、定期的な清掃を心がけてください。

水そのものに濁りや臭いがないかどうかのチェックはオーナー自身でもできるので、可能であれば毎日行いたいものです。また、残留塩素をはかるための塩素測定器や塩素チェッカーも市販されています。物件の水道の状況を把握するためにも利用してみてはいかがでしょうか。

※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年12月9日時点のものです。

取材・文/石垣 光子

ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。

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