不動産業界にもAIの波!AIを活用したサービスやできるようになったこと、事例をまとめました
書類の電子化など、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急激に進んでいる不動産業界。その流れに合わせて、様々な業務やサービスにAIを取り入れる会社が増えています。ChatGPTなどの生成AIをはじめとするAIによって仕事がより効率的に、また、エンドユーザーにとっても便利になりつつあります。AIの活用事例や、2024年に始まったAIによる顧客サービスをまとめました。
急速に増えている不動産業界でのAI活用事例をピックアップ
AIは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」を表します。膨大なデータを読み込むことによって学習し、人間が考えたり判断したりするようなはたらきを再現するプログラムのことです。
AIは「物や図形、人の顔を認識して区別する」「会話や文章を理解して作成する」「膨大な量のデータを分析し、それをもとに予測する」などの作業を行うことができます。
生成AIとは、学習したデータをもとに新しいデータや情報をつくり出す人工知能で、AIによる小説や絵画なども話題になっています。
【フラット35】では融資の審査にAIを導入
2024年10月から【フラット35】の審査に『AI審査モデル』を導入することを住宅金融支援機構が発表しました。
これまで蓄積してきた【フラット35】の申込内容と不適正利用事案の情報に加えて、個人信用情報やインターネット上の情報を外部から取得。これらの情報をもとに、AIが投資目的利用や住宅購入価格水増し等の不適正な申込みを検知し、審査に活用します。
これまで職員が行ってきた不適正利用の懸念がある申込事案の審査を、AI導入により精度とスピードを上げることができるとしています。
架空の「おとり物件」も9割の精度でAIが感知
不適正なものの審査といえば、不動産業界で長年課題となってきた「おとり物件」についてもAIの活用が進められています。
LIFULL HOME’Sでは、物件情報を受け取った時点で、掲載中の他の物件と照合。すでに募集が終了した物件と同一と思われるものを抽出する「おとり物件検知システム」を開発し、運用しています。検知された物件は「募集が終了している可能性がある」という通知が掲載している仲介会社に送られ、自動で掲載を終了します。
さらに、これまで掲載された膨大な調査データを同社開発のAIに学習させることで「おとり物件」をピンポイントで発見しようという試みを現在検証中です。
これにより、同一物件の掲載情報から検知する方法では見つけにくい「実在しない架空物件の広告」や「1社しか掲載していない物件の広告」にも効果が期待できる、としています。検証では、すでに検知精度を平均87%にまで向上させることに成功し、稼働に向けて準備中です。
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膨大なデータ分析で不動産価格や賃料を査定
データ分析による査定はAIの得意分野で、多くの不動産会社が取り入れています。三井不動産リアルティや住友不動産販売では物件情報を入力することで、無料で即座に販売価格を査定。三菱地所はChatGPTを取り入れた会話形式での査定サービスをリリースしました。
賃貸分野では、大東建託が2023年から『審査AIシステム』による適正家賃の査定を導入。最寄り駅や部屋の広さ、築年数などの情報を入力することで、蓄積されたビッグデータからAIが適正家賃を算出します。
東急リバブルも同様のシステムを導入しており、こちらは同じ物件を賃貸した場合の適正賃料と、売却した場合の査定価格を確認することができます。(賃貸のAI査定はマンションのみが対象)
チャットボットで24時間365日問い合せ対応
生成AIは自然言語処理機能により、まるで実在する担当者とやりとりしているようなスムーズな会話が可能です。これを「チャット(会話)」と「ロボット」を合わせた造語で「チャットボット」といいます。
例えばハウスメイトでは、同社のCMに出演している指原莉乃さんと雑談のような会話を楽しみながら、おすすめ物件や暮らしのお役立ち情報を紹介してもらえます。実際にタレント本人と会話をしているわけではありませんが、ライトユーザーや潜在層へのアプローチには有効なのではないでしょうか。
行政でも問合せ窓口としてチャットボットを実装するサイトが増えてきました。総務省が運営する「Govot(ガボット)」が有名ですが、国交省の「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」にもAIチャットボットがあります。しかし、2024年12月現在はどちらも質問に対しての選択方式がメインで、自由なやりとりというにはまだもう一歩という印象です。
とはいえ、チャットボットのメリットは24時間365日対応が可能な点。いま知りたいことを、行政の窓口が営業時間外でも調べられるのは便利なことには違いありません。
ホームステージング、家具を消すのもAIで
2024年10月には、アットホームが「AIホームステージング」プログラムに関する特許を取得。これは、画像生成AIを活用し、精度の高いホームステージング画像を自動生成できるものです。
これまでのホームステージング画像は画像編集ソフトを使って家具などを配置するのが一般的で、時間とコストがかかるうえ専門の知識も必要でした。その一方、画像生成AIで生成したホームステージング画像は室内の梁やエアコンが消えてしまうなど、部屋の構造や間取りを無視したものになってしまうのが課題でした。
同プログラムではこれらの課題を解決。部屋の構造や間取り、設備などを維持しつつ家具を配置できるようになり、様々なインテリアテイストでの提案を可能にしています。ホームステージングがより身近なものになりそうです。
さらに、別会社のサービスですが、ホームステージングの機能のひとつとして「家具消し機能」も開発されています。これにより、居住中の部屋の室内イメージがわかりやすくなります。
まとめ
いえらぶGROUPの調査によると、不動産会社の68.8%が生成AIを「使いたい」と回答。その一方で、実際に「毎日使っている」(4.8%)や「時々使っている」(16.8%)を合わせた利用割合は合計22.8%でした。
人手不足が深刻な賃貸管理の現場では、AIによる業務の効率化はとても有効です。特に24時間対応が可能な点は物件紹介や内覧予約、問い合わせ対応など、顧客の取りこぼし防止や入居者満足度のアップに効果が期待できます。
これまでアナログで煩雑だった業務をAIにまかせて、経営のコアな部分に集中して取り組めるのは、賃貸オーナーにとってありがたいことではないでしょうか。現在付き合いのある管理会社や仲介会社がいる場合は、AIの導入についてどれくらい進んでいるか、一度尋ねてみてはいかがでしょうか。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2024年12月23日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。