高齢化の進む現代の相続に|残された配偶者を守る相続法改正のポイント

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公開日:2019年9月4日
更新日:2019年11月13日

【ポイント2】配偶者短期居住権の新設(2020年4月1日施行)

もう1つ、残された配偶者の住まいを確保する方策として、配偶者短期居住権が新設されました。

この制度は遺産分割で建物を誰が相続するのか決めるまでの間、配偶者が居住権を取得するという内容のものです。

被相続人が所有していた建物は、被相続人が亡くなると相続人らの共有状態になります。そこで厳密に言えば、建物に居住する残された配偶者は、共有者である子どもに対して賃料を払わないといけないとも思われます。

このようなケースについて、改正前は、自宅を誰が相続するか確定するまでは無償で配偶者に貸される、使用貸借契約があると推認されていました(平成8年最高裁判決)。

今回の改正の意義は、法律で明確に配偶者に無償の短期居住権を定めたことにあります。

これにより、被相続人の意思にかかわらず、相続開始時に被相続人の建物に無償で居住していた配偶者に短期居住権が認められます。存続期間は6カ月間を最低期間として、自宅を誰が相続するか確定するまでです。

【ポイント3】持ち戻し免除の意思表示の推定(2019年7月1日施行)

相続時の住まいの確保とは別に、配偶者へ自宅を生前贈与した場合に対応する改正がなされました。

建物の所有者が配偶者へ建物を生前に贈与した場合、その建物は相続の計算上は特別受益となり遺産の中から先に渡されたものとして計算されます(持ち戻し)。その結果、生前贈与をしても取得できる財産の総額が変わらないことになります。配偶者の居住場所を確保するつもりで自宅を生前贈与しても、自宅が相続の先渡しとして計算されると、結局は預貯金債権等の相続は目減りします。それでは高齢配偶者の住む場所と安定した生活、両方の維持が難しくなってしまいます。

改正後は、婚姻期間が20年以上の配偶者に自宅を生前贈与する場合、持ち戻しを免除する旨の意思表示が推定されます。生前贈与された自宅は相続財産から外され、配偶者は自宅以外の財産を相続分通りに相続ができます(図2参照)。

多くの家族では、持ち戻し計算など事前に想定していないでしょうし、今回の改正は想定通りの相続を実現するものかもしれません。

図2 「 持ち戻し免除の意思表示の推定」が新設されたことによる変化

【事例】
相続人:配偶者と子2名(長男と長女)
遺産:預貯金(8,000万円)
居住用不動産(持分2分の1)2,000万円を生前贈与

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※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2019年9月4日時点のものです。

文/九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也 写真/伊藤 和貴 イラスト/黒崎 玄

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