混雑率の高い駅=賃貸需要も高い駅?都市鉄道の混雑率が発表!東京で最も混雑する路線はどこ?

自宅勤務がある程度定着したとはいえ、通勤ラッシュ時の電車の混雑は収まったとは言えません。特に混雑している路線や駅はどこなのでしょうか?都心への人口集中が加速する中、2024(令和6)年度の三大都市圏の鉄道混雑率とともに、賃貸需要との関連を探ってみましょう。
三大都市圏すべてで前年より鉄道の混雑率がアップ
国土交通省では、通勤通学時間帯における鉄道の混雑状況を把握するため、毎年度混雑調査を実施しています。混雑率とは、最混雑時間帯1時間の平均を示したもので、目安としては次のような混み具合となります。
混雑率の目安 | |
100% | 座席につくか、座席前の吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる。 |
150% | 肩が触れ合わない程度。ドア付近の人が多くなる。 |
180% | 肩が触れ合い、やや圧迫感がある。ドア付近の人は窮屈となり、体の向きを変えるのが困難となる。 |
200% | 体が触れ合い、相当圧迫感がある。ドア付近の人は身動きがとれない。 |
発表されたばかりの令和6(2024)年度実績では、三大都市圏主要区間の平均混雑率は以下の通りでした。
三大都市圏主要区間の平均混雑率 令和6年度実績 ※( )内は昨年度混雑率 | ||
東京圏 | 大阪圏 | 名古屋圏 |
139%(136%) | 116%(115%) | 126%(123%) |
三大都市圏ともに100%を超えており、昨年実績より増加しています。ちなみに混雑率は輸送力とも相関関係にあり、50年前である昭和50(1975)年の混雑率は東京圏で221%、大阪圏・名古屋圏でも200%前後でした。日本の高度経済成長期における人口の都市集中に、鉄道の輸送力が追いついていなかった時代と言えます。
混雑率が最も高いのは地下鉄日比谷線の三ノ輪→入谷
東京圏における主要区間の混雑率ランキングトップ5は次の通りです。
東京圏の混雑率ランキング 令和6(2024)年度 | |||
順位 | 路線 | 区間 | 混雑率 |
1位 | 日暮里・舎人ライナー | 赤土小学校前→西日暮里 | 177% |
2位 | 東京メトロ日比谷線 | 三ノ輪→入谷 | 163% |
3位 | JR埼京線 | 板橋→池袋 | 163% |
4位 | JR中央線(快速) | 中野→新宿 | 161% |
5位 | JR京浜東北線 | 川口→赤羽 | 156% |
JR・私鉄にかかわらず、東京圏ではほとんどの路線が混雑率100%を超えており、150%を超える区間も多数あります。郊外でも湘南モノレール「富士見町→大船」では7時台に153%を超えるなど、首都圏への出勤のため早い時間に混雑していることが見て取れます。
大阪圏・名古屋圏の主要区間の混雑率ランキング
続いて大阪圏・名古屋圏のランキングを見てみましょう。
大阪圏の混雑率ランキング 令和6(2024)年度 | |||
順位 | 路線 | 区間 | 混雑率 |
1位 | 阪急神戸本線 | 神崎川→十三 | 141% |
2位 | 大阪メトロ御堂筋線 | 梅田→淀屋橋 | 139% |
3位 | 大阪メトロ中央線 | 森ノ宮→谷町四丁目 | 133% |
4位 | 阪急宝塚本線 | 三国→十三 | 126% |
5位 | 京阪本線 | 野江→京橋 | 122% |
名古屋圏の混雑率ランキング 令和6(2024)年度 | |||
順位 | 路線 | 区間 | 混雑率 |
1位 | 名古屋鉄道(東) | 神宮前→金山(7:40~8:40) | 140% |
1位 | 名古屋鉄道常滑線 | 豊田本町→神宮前 | 140% |
3位 | 名古屋鉄道犬山線 | 下小田井→枇杷島分岐点 | 139% |
4位 | 名古屋鉄道戸瀬線 | 矢田→大曽根 | 139% |
5位 | 名古屋鉄道本線(西) | 栄生→名鉄名古屋 | 138% |
首都圏ほどではないものの、上位の駅は130%を超える混雑率です。名古屋圏では名古屋鉄道が上位を独占しました。また、三大都市圏以外でも福岡県の西日本鉄道貝塚線「名島→貝塚」では164%と高い混雑率となっています。
混雑率上位の駅は人気も高い?家賃の関係は?
混雑率が高いエリアは住んでいる人が多いと思われるため、賃貸需要も高いのでしょうか。ここで、東京圏の混雑率上位路線の家賃相場を見てみましょう。

日暮里・舎人ライナー:赤土小学校前駅(駅舎)
最も混雑度が高かったのが日暮里舎人ライナーの上り区間「赤土小学校前→西日暮里」でした。2020年から5年連続首位です。足立区の見沼代親水公園駅から荒川区の日暮里駅を結ぶモノレールで、混雑度が高いのは終点である日暮里の手前2駅です。
赤土小学校前駅の家賃相場はSUUMOによるとワンルームで7.8万円、ファミリー向け2LDKで21.6万円。荒川区の家賃相場(ワンルーム:8.3万円、2LDK:18.6万円)と比べるとワンルームは相場よりやや安く、ファミリー向け物件では相場より高くなっています。
このことから、ひとり暮らしの人はやや安く住めて、ファミリー需要が高い駅であることが伺えます。立地は京浜東北線と都電荒川線、並行して走る京成本線・東京メトロ千代田線が描く三角形の中心あたりで、複数の路線を利用可能です。
2位の東京メトロ日比谷線の三ノ輪→入谷については、どちらも台東区の駅です。三ノ輪駅の家賃相場はワンルーム 9.6万円、入谷駅は10.3万円。台東区の相場10.6万円から1万円安い三ノ輪駅は、穴場駅として上野から東京駅エリアに通勤する人の人気が集まっているのかもしれません。
混雑路線にある物件はどのような戦略を立てるべき?

混雑率の高いエリアの多くは都心へのアクセスが良いため、賃貸需要は堅調といえます。しかし部屋選びの際に通勤ラッシュのひどさから避けられている可能性もあり、輸送力との兼ね合いもあって一概には言えません。
混雑路線かつ都心の物件は単身向けのワンルームや1Kの需要が高く、家賃をやや高めに設定しても決まりやすそうです。また、混雑路線でも郊外始発駅、複数路線が利用できる駅などは、混雑を避けたい層やファミリー向けに選ばれやすくなります。
混雑率で避けられるリスクが高い場合は、ワークスペースや高速ネット回線など在宅勤務ができる環境を整えることもおすすめです。さらに、バスの時刻表を掲示する、自転車置き場を整備するなど、電車以外の移動手段を提案できると選ばれる確率も高まります。
また、今後ダイヤ改正や車両増車などで混雑率が緩和する場合もあります。よりスムーズな出勤がかなうことで沿線の人気が高まるため、各鉄道会社の動きにはアンテナを張っておくようにしましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年8月20日時点のものです。
取材・文/石垣 光子
ライタープロフィール
石垣 光子(いしがき・みつこ)
情報誌制作会社に10年勤務。学校、住宅、結婚分野の広告ディレクターを経てフリーランスに。ハウスメーカー、リフォーム会社の実例取材・執筆のほか、リノベーションやインテリアに関するコラム、商店街など街おこし関連のパンフレットの編集・執筆を手がけている。