業務を依頼したら断られた、管理替えで違約金を請求された…賃貸管理で起こりうるトラブル

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公開日:2023年3月4日
更新日:2025年9月10日
業務を依頼したら断られた、管理替えで違約金を請求された…賃貸管理で起こりうるトラブル1

久保原弁護士による法律相談Q&A。今回のテーマは、入居者、管理会社との間で、賃貸経営の多くの場面で想定される「賃貸管理で起こりうるトラブル」です。いざトラブルが発生しても困らないように、事前に知識を身に着けておきましょう。

業務を依頼したら断られた、管理替えで違約金を請求された…賃貸管理で起こりうるトラブル2

文/九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也(写真)、伊藤 和貴

〈久保原弁護士プロフィール〉京都大学大学院法学研究科修了。2008 年、九帆堂法律事務所設立。最高裁で勝訴した更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士として様々な情報を発信。

〈伊藤弁護士プロフィール〉東京大学法学部、同法科大学院修了。2018年、九帆堂法律事務所入所。大家さんの代理人として多数の賃貸借案件を扱う。

Q1:入居者との契約更新手続を不動産会社にお願いしたら断られました。不動産会社の仕事では?

A1:不動産会社との契約を確認してください。管理契約を締結していないケースも散見されます。

「管理契約」と言っても、契約形態や業務内容は様々です。①契約管理(賃料徴収、契約更新手続、建物トラブル緊急対応窓口、敷金精算等)、②共有部等の清掃、③設備管理(各設備の点検等)を委託する内容が標準的と思われますが、現在の契約内容を確かめるためには、契約書の確認が第一です。

また、単に仲介をお願いした不動産会社が管理会社であると勘違いしている大家さんも少なからず見受けられます。次回の仲介を期待して、更新手続は費用を取らずに行ってくれることも確かにありますが、その場合はあくまで善意でやってくれるということになるでしょう。

なお、交渉内容によっては弁護士法違反のおそれがありますので、管理会社では対応できない業務もあります。

Q2:管理会社が使っている契約書の書式に不備があり、入居者に火災保険の締結を断られてしまいました。

A2:まずはミスをしてしまった管理会社から対応策を聞き、十分に協議しましょう。

管理会社の書式の不備で、オーナーの要望していた事項や特にこだわっていた条件(ペット飼育不可、女性専用物件等)が契約書から抜けていた場合、管理会社にクレームを言うことはできても、入居者に対してその条件を守るよう求めることは基本的にできません。

もっとも、契約締結の交渉段階で管理会社が口頭説明を十分に行っていた場合など、契約書に記載がなくても入居者に対応を求めることができる場合もあります。

また、本当に必要な条件であること、隣人関係を友好に保つために欠かせない内容であること等を、管理会社を通じてきちんと伝えられれば、不備のない契約書を改めて入居者と取り交わせる場合もありますので、管理会社と対応をよくご相談ください。

Q3:管理会社を替えたいのですが、高額な違約金を支払わなければ解約に応じないと言われました。

原則、解約可能ですが、違約金が生じる場合も。サブリースでは訴訟が必要なこともあります。

一般的な管理契約は原則いつでも解約を求めることができますが、特約で解約時に一定額の違約金を支払うよう定めている場合、これを支払う必要が生じます。大家さんは事業者なので、特約に消費者保護法は適用されず、原則違約金条項は有効となってしまいます。

違約金の額があまりに過大だったり、当初不適切な説明がなされたりした等、様々な要素を掘り起こして争う余地はありますが、実際の対応は専門家に相談して個別具体的に検討する必要があります。

なお、サブリース契約等、賃貸借契約の形式の場合、借地借家法により解約は認められないとして、解約自体に応じてくれない場合があり、こちらはさらに厄介なケースです。訴訟も見据えて弁護士に相談することをおすすめします。

Q4.サブリース会社から高額な保証家賃を提示され、マンション建築を提案されています。

A4:保証家賃は減額されうる、ということを十分に理解したうえで建築計画を立てましょう。

サブリースによる高水準な家賃の保証を約束するなどしてマンション建築を勧誘されることがあります。しかし、相場に比べて高めの保証家賃が入ることを前提に計算し、ローン返済や資産運用の計画を立てたのに、数年後に管理会社から保証家賃の減額を求められるという問題が多発しています。

実は、保証家賃の減額を認めない旨の条項が契約書に盛り込まれていたとしても、借地借家法上、将来の賃料を固定化する条項は無効となるおそれがあります。

仮に賃料の減額を認めないとしても、「それなら解約する」と言われれば、オーナーは経済的に苦しい立場に追い込まれます。今後建築するオーナーは、家賃の減額請求のリスクがあるという前提で収支計画を立てることをおすすめします。

Q5:前の借主が残したエアコンが故障して、入居者から家賃の減額を求められました。

A5:賃料減額に応じなければならない場合も。設備類の故障に関する契約を忘れずにしましょう。

賃貸物件の一部が入居者の落ち度なく使用できない状態になると、入居者はオーナーに対し、家賃を減額するよう求めることができます(民法改正以降は当然減額)。

例えば、前の入居者が「私物のエアコンを次の入居者用に残してもいい」と申し出てきた場合、そのまま使ってエアコンが故障すると、新しいエアコンへの取替え費用の他に、取替え完了までの期間について、入居者から家賃減額請求をされるおそれがあります。

部屋に備え付けられた備品も賃貸物の一部となるので、対価をもらう以上は品質を保証する必要があります。前の入居者が残した家電の故障の際には賃料減額しない旨の条項を入れる、備品に問題がないか前もって詳細に確認するなどの方策を検討しましょう。

Q6:入居者から「管理会社の対応が不誠実だ」というクレームが届きました。

A6:入居者が責任転嫁、もしくは過大な要求をしている可能性もあるので、冷静に判断して対応しましょう。

入居者に対して威圧的な態度をとる、修繕の手配を怠るなど、本当に管理会社に問題がある場合、オーナーに対しても入居者との賃貸借契約上の契約責任が問われ、損害賠償等を求められかねません。管理契約の解約も含めた対処方法の検討が必要です。

ただ、管理会社は滞納賃料の督促や騒音に対する注意など、入居者にとって必ずしも心地良くない業務をしている場面もあります。そのため、入居者が逆恨みして根も葉もないことをオーナーに伝えてきている可能性もあります。

クレームに対する適切な対処をするためには、早期の十分な事実確認が重要なのは言うまでもありません。まずは管理会社に連絡をして,事実聴取を綿密に行うようにしましょう。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2020年3月4日時点の情報です。

イラスト/黒崎 玄

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