これからの築古物件との向き合い方 建て替え/修繕/売却……進むべき道は?

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公開日:2026年7月2日
更新日:2026年7月6日
これからの築古物件との向き合い方 建て替え/修繕/売却……進むべき道は?1

本誌読者にも、築30年以上の築古物件をこれからどうしようかと考えているオーナーは少なくないでしょう。
手をこまねいていると、建物設備の劣化で改修費がかさむ一方で、家賃下落や空室増による収入減に見舞われてしまいます。
現状を打開する方法は「建て替え」「修繕」「売却」の3つです。それぞれの判断のポイントと見極め方を解説します。

取材・監修
これからの築古物件との向き合い方 建て替え/修繕/売却……進むべき道は?2

オラガ総研株式会社 代表取締役 不動産事業プロデューサー / 経済・社会問題評論家

牧野 知弘

東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産で各種不動産投資業務に従事。2009年にオフィス・牧野、2015年にオラガ総研を設立し、代表取締役にお就任されました。

 

不動産市況は転換期:どこに舵を切るか見極める

これからの築古物件との向き合い方 建て替え/修繕/売却……進むべき道は?2

賃貸経営を取り巻く現在の不動産市況を、はじめにつかんでおきましょう。2026年の公示地価では「全国平均で5年連続の上昇」と報道され、コロナ禍以降、順調に上昇している傾向が示されました。これをどう受け止めるべきでしょうか。

「平均値というのは、なかなか罪深いものです。全体平均で上昇していると、おしなべて上昇していると思いがちですが、実際に上がっているのは大都市の中心部がほとんどです。他には半導体工場が集積する新たな企業城下町やリゾート地など、人が集まる場所が上昇しています。もはや平成バブル期のようなエリア全体での成長はなく、個々の街の成長度合いによる動きに変質してきています」(牧野さん)

また、市況の転換にも注意したいところです。マンション価格も投資マネーが集中する東京の高騰が目立っていますが、これには裏があります。

「メディアの報道は、現場の実感値と半年以上のタイムラグがあります。マンション価格の上昇は、すでに2025年の秋に止まりました。要因は金利上昇です。金利が上がると買い手の期待利回りが高まり、賃料を上げられなければ価格は下がる、というのが不動産投資の鉄則です。しかし、既存物件の家賃増額には時間がかかります。そのため、転売益を狙う投資家はしびれを切らして出口を急いでおり、早くも湾岸エリアでは売り在庫が急増中です。今後は価格調整の動きも顕在化するかもしれません」(牧野さん)

転売の時代から、不動産の王道である運用の時代へ

これからの築古物件との向き合い方 建て替え/修繕/売却……進むべき道は?2

投資マネーが向かう新築・築浅物件が苦戦する一方で、「築古物件はむしろ利回りを確保しやすいため(上図参照)、個別条件や戦略次第で、市場で十分な競争力を保てる可能性があります」と牧野さんは指摘します。このときに意識しておきたいのが潮目の変化です。

「短期の値上がり益を狙う“転売の時代〞から、中長期的に必要なリニューアルをしながら賃料収入を高める“運用の時代〞に入ったと感じています。運用の巧拙によって成績が決まるのが不動産の王道であり、その原点に戻ったともいえます」(牧野さん)

時代に合った築古物件との付き合い方を見直し、インフレや金利の引き上げに耐えうる賃貸経営を目指して、オーナーが進むべき道を改めて考えてみましょう。

物件の立ち位置を知る:判断する4つのフレーム

これからの築古物件との向き合い方 建て替え/修繕/売却……進むべき道は?2

「建て替え」「修繕」「売却」という3つの選択肢のうち、どの戦略を取るかを見極めるには、手持ち物件の立ち位置を知ることが非常に重要です。チェックすべき枠組みは、次ページの4つです。
「A・立地の将来性」「B・マーケット内での競争力」は物件が置かれている外部環境であり、オーナーによるコントロールが難しい部分です。これらを分析することで、現地で賃貸経営を続けられるか、あるいは売却したほうがいいのかが浮かび上がってきます。
一方で、「C・建物設備の状況」「D・入居者のプロフィール」は運用中の築古物件にかかわるもので、オーナー自身の修繕・管理の手腕次第で改善可能な内容になっています。それぞれのポイントについて、詳しく解説していきましょう。

【A・立地の将来性】成長する街の条件とは?

中長期にわたる賃貸運用に適したエリアかどうか、まずは大枠を押さえます。将来に渡って街の魅力が保たれなければ、継続的な賃貸ニーズは見込めません。そのポイントとして、人口・世帯の増減が第1に挙げられますが、それだけでは足りないと牧野さんは指摘します。

「郊外ニュータウンは、かつて生活施設が整備され、人が集まって人口が増えました。しかし、第1世代の流入でストップして、その後に世代交代せず、いつのまにか“オールドタウン”になってしまい、地価も上がらないエリアが少なくありません。人口動態を見るとき、転入超過だけでなく、人の入れ替わりに目を向けましょう。転入と転出の合計を移動者数として、地域の総人口に対する割合を“新陳代謝率”と定義すると、これが10%を超える地域は、地価上昇との相関関係が顕著です」

【B・マーケット内での競争力】ライバルに対抗できるか?

賃貸ニーズの強い立地だとしても、自分の築古物件が、地域の賃貸マーケットの中で競争力を持っているかどうかが重要です。上図Bのような項目を調べることで、現状のまま賃貸経営が続けられるかが浮き彫りになります。築浅物件のストックや新築物件の供給計画が多ければ、リスクが高いといえます。ネット検索、仲介・管理会社へのヒアリング、足をつかった現地調査などを駆使して把握しましょう。プランの見直しや、用途変更の検討にも役立ちます。

【C・建物設備の状況】あと何年もつか?

築年が古くなると、収益の悪化や資産価値の低下につながるだけではありません。「外装の劣化、設備故障で入居者や近隣住民に被害がおよび、責任を問われるおそれもあります。保険でカバーできなければ損害賠償の打撃が大きくなります。事件・事故にあうリスクを意識しましょう」(牧野さん)

建物の耐用年数は、修繕を含むさまざまなコストに影響するため、大きな選択の分かれ目となります。

【D・入居者のプロフィール】インフレ時代にマッチするか?

デフレ下では、長期入居が安定経営につながるとされていました。しかし、インフレが強まる中では、短期入居で回転率が高いほうが新規募集時に賃料値上げをしやすい傾向があります。建て替えの場合は、立ち退き交渉の手間やコストとも関係してきます。

「入居者の入れ替わりは所有する物件の内部環境を改善するための新陳代謝ともいえます。入居マナーの良くない人、相場に合わせた家賃増額に耐えられない人は入れ替えて、入居者のプロフィールを整えていくことは戦略のひとつです」

収支の試算と「アセット・マネジメント」の発想が必須

これからの築古物件との向き合い方 建て替え/修繕/売却……進むべき道は?2

収支試算は「第三者」への依頼が鉄則

活用方針を立てるにあたっては、各パターンの収支シミュレーションをして、数値で比較検討するプロセスが欠かせません。「試算を頼む場合、不動産会社や管理会社はそれぞれの思惑があり、自社の仕事に引き寄せた結果が出るおそれがあります。客観的なデータを示してくれる第三者のコンサルタントなどに依頼することが望ましいでしょう」(牧野さん)

また、複数の不動産を所有しているオーナーの場合は、単体で判断しないことも重要です。「物件1つの建て替えで採算が合わないとしても、一部の不動産を売却して資金を充てることで成功する場合もあります。建て替えや修繕で残す物件、売却する物件など、資産ポートフォリオ全体の中で組み合わせて戦略を立てることが大切です。この“アセット・マネジメント”の発想を身に付けましょう」(牧野さん)さらに、賃貸経営の観点だけでなく、相続・事業承継についても想定しておく必要があります。早めに誰に何を継がせるかを決め、なし崩し的な共有は避けることが賢明です。

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