会員数は約700名。全国の大家さんが集まる学びの場
- オーナー事例
営業色を抑え、あえて会の規模拡大を狙わない
「初めのころは営業目的で探りにくる業者さんや、ネットビジネスの勧誘もありましたが、『大家さんによる大家さんのための会』が基本ですから、営業や勧誘はご遠慮いただいています」
決まった会費がなく、勉強会を開くごとに実費相当分しか徴収しないため、事務局の運営自体はボランティアだ。
「運営を手弁当でやっていることに関しては議論もあり、会費を徴収するほうが健全という声もありました。
ただ、定期的に会費をいただけば、その収納管理の事務や責任が発生します。規模を維持するための実務に時間を取られたり、業者さんに会場費を出してもらって楽な方向に走ったり。それでは理念が崩れてしまうと……」
4年ほど前に、創立メンバーの何人かがいろいろな事情で離れていき、事務局スタッフが半減したことがターニングポイントになり、年に1~2回しか勉強会を開けない時期もある。それでも、組織を見直して無理なテコ入れをするようなことはしなかった。
「オープンでゆるーい会のスタイルを守り、流れにまかせて運営しています。不定期に好きな時に勉強会をやっていても、新しく参加してくれて『来て良かった』と喜んでもらえる。赤字の時もありますが、やっぱり懇親会は楽しいので続けています。そのくらいのスタンスが長続きの秘訣かもしれません」

変化する賃貸市場で入居者に喜んでもらうためには
最近は大家さんの会がたくさんでき、勉強会も花盛りだ。大家さんを中心にしたコミュニティの中にも、商売っ気の強いところ、カリスマ大家さんを慕う会のようなところ、資格認定を目指すところ、多様なスタイルが混在している。
今後、変化する賃貸市場の中で会はどうなっていくのだろうか。
「大家さんの会は、今が飽和状態かもしれませんね。そもそも各オーナーの持つ物件は全て一品料理なので、提供された情報が自分に向いているかどうかを判断する必要がありますね。ある人の成功体験が、誰にでも再現性があるとは限りませんから。
アスリートがコンマ何秒詰めるがごとく『業者に交渉して、こんなに指し値を勝ち取った』とか『銀行からいくら融資を引っ張れた』といった話がよくありますが、確かにビジネスなのでコスト削減は大事ですが、その部分にあまりにものめり込みすぎるのはどうなのでしょうか。

我々はやはり業者を含めて“四方よし”にならないと長続きしないと考えております。ビジネス的にどうすれば長い目でどうやってキャッシュフローを増やしていくのか。そのために、入居者に喜んでもらい、家賃をもらえるためには何に注力をするべかを追求していく必要があります。
今後は入居者の体験談を含むDIY賃貸の事例とか民法改正とか、少しテーマを絞り、具体的に役立つ情報を提供していきたいですね」
※この記事は2018年8月に取材をしたものです。
取材・文/木村 元紀 撮影/青木 茂也