十人十色の相続準備!生前準備の必要性や相談相手は?相続税申告は自分でorプロに頼む?

「相続」といっても、財産や被相続人の状況などによって様々。まさに人の数だけケースが存在する相続準備の実態について「ベンチャーサポート相続税理士法人」がアンケート調査を行いました。2回に分けて発表された調査結果をご紹介します。
生前から相続準備をしている人はおおよそ4人に1人
アンケートの対象は、全国の「親の相続準備ができていない60歳以上の男女」。まだ始めていない人たちに、いつ頃から相続の準備を始めようと考えているのか聞いたところ、以下のような結果になりました。
Q.いつごろから相続の準備を始めようと考えていますか?
被相続人の生前から・・・23.4%
被相続人の葬儀が終わり次第すぐに・・・16.0%
被相続人が亡くなってから3ヶ月以内・・・9.8%
ちなみに最も多いのは「手続きしようと思っていない(相続しようと思っていない)38.4%で、その理由の半分近く(45.2%)が「相続するほどの財産がないから」でした。また、「母の面倒を見なかったので、相続権は放棄しようと思うようになった」、「長男が継いでいるので相続放棄するつもり」などのコメントもありました。
生前準備をしない理由は「話の切り出しにくさ」?
被相続人が亡くなってから相続準備を考えている、つまり生前準備はしないと回答した人に、そのタイミングで始める理由を聞いたところ、上位3位までは次のような理由でした。
Q.相続準備をそのタイミングで始める理由(複数選択)
頃合だと思ったから(具体的な理由なし)・・・62.0%
一般的に四十九日法要前後と聞いていたから・・・20.3%
親族でそういう話が出たから・・・9.4%
6割以上はなんとなく「時期としてそれくらい」と思っているようです。
また、被相続人が亡くなるまで相続準備ができない理由については、「亡くなってからするものだと思っていた(37.2%)」が3割強で最多でした。続く「相続の話を切り出しにくかった(35.9%)」、「生前準備の必要性を感じなかった(34.4%)」も近い割合で、以下のようなフリーコメントがありました。
・亡くなってからでも手続きは済むのではないかと思っている
・準備しても寿命が予想以上に延びたら相続財産が変わってしまう
・亡くなる前から相続の話をするのは、亡くなるのを待っているかのような印象を与えるのではと感じる
・できるだけ長生きしてもらいたいので、そんな話はしにくい
回答からは、相続は親が亡くなってから準備するものだという認識や、まだ元気な親に対して、亡くなったときの話をすることに対する抵抗が垣間見えます。
相続について、親の気持ちに配慮した切り出し方のコツは?

子どもからは切り出しにくい話題ではあるものの、実際に相続が発生したときに慌てないために、同法人の専門家からは4つのアドバイスと、会話例が紹介されています。
1.親の気持ちに配慮して、説得はしないこと
NG例:
「財産のリストを作ってほしい」
「きちんと相続対策してくれないと家族が大変な思いをするんだ」
2.世間一般の話題や、周りに起こった相続の話と絡めて切り出す
切り出し方の例:
「まだ若いと思っていた○○さん(芸能人など)も亡くなったんだね」
「近所の○○さんが亡くなったけど、誰が家を継ぐかでもめているらしいよ」
3.健康状態や持病の状況などを話題にしてから切り出す
切り出し方の例:
「新しい薬が処方されているけど身体の調子は大丈夫?」
「かかりつけの病院には定期的に通ってる?」
4.相続に関するセミナーに親子で参加する
他にも、古希や喜寿など長寿の話題から入って自分の年齢を意識してもらうことや、体調の話題から「介護が必要になったときや、認知症になったときのことを考えておこうよ」とつなげて、親の要望も聞くことなどのアドバイスがありました。
相談先は税理士が最多!「自力で」と考えている人も多い

次に、親の相続準備ができていない人のうち、相続準備を考えている人に「相続に関することで悩んだ場合は、どのようにしようと思っていますか?」と質問。
「専門家などに相談する(38.9%)」が約4割で最も多いものの、続く「家族や知人などに相談する(30.3%)」「自分で解決する(ネットや書籍で調べる)(29.4%)」からは、自力でなんとかしようという人も多いことが分かります。
「専門家に相談する」人の相談先としては、「税理士(38.0%)」「司法書士(29.6%)」「弁護士(29.2%)」という回答でした。財産の状況次第では「プロに相談するまでもなく自分たちだけでシンプルに解決しよう」と判断することもあるでしょうし、検討の段階によっても相談先は異なってくると思われます。
不安は書類や税金の過払い!相談が必要な判断基準は?

最後に、相続準備と相続後に不安なことを聞いたところ、上位3位は以下のような回答でした。
相続準備をする際に不安なこと
必要書類が作成できるか・・・32.4%
土地や不動産をうまく処分できないのではないか・・・31.3%
親族間でトラブルにならないか・・・25.0%
相続後について不安に感じること
自分が相続する側になった時に無事にできるか・・・37.7%
払わなくていい税金まで払ったのではないか・・・36.3%
公正に相続できたのか・・・34.4%
自分でも申告できるものの、計算を間違って追徴課税のペナルティが課されたり、逆に払い過ぎになったりするケースも多いという相続税。
特に不動産の場合は、不慣れだと減額要素を見逃して計算し、相続税を払い過ぎてしまうことがよくあるようです。過少申告や無申告と違って、納め過ぎた場合には税務署からの指摘はありませんので、注意が必要です。
専門家に相談するべきかどうかの判断基準として以下の例が挙げられているので、参考にしてみてください。
自分で申告できる場合
・相続人が自分のみ
・相続人同士の仲が円満である
・特例や税額控除の適用によって相続税が非課税になる
・相続財産に不動産がない
・相続財産になるかどうか判断の難しい財産がない
税理士に依頼するべき場合
・相続人が多く、家族構成が複雑
・相続人同士が対立している
・生前贈与や名義預金がある
・評価の難しい財産がある(不動産や非上場株式など)
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年1月17日時点のものです。
文/丸石 綾野