何が違う?賃貸アパート・マンションの構造・工法の特徴を解説[会社選び#4]

建築パートナーを選ぶポイントの1つになるのが、建物の構造や工法です。そこで、主要な木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の3タイプについて、特徴とメリット・デメリット紹介しましょう。

構造材料で変わる建築コストと減価償却費

アパート・マンション経営で収益に大きな影響を与えるのは、総事業費/建築コストと減価償却費/耐用年数です。

どちらも主要構造に使う材料に関係してきます。また、建て方/工法は、設計の自由度に関わる項目です。それぞれ図1に特徴をまとめました。

何が違う?賃貸アパート・マンションの構造・工法の特徴を解説[会社選び#4]2

木造は、耐用年数が短く、早めに減価償却できる反面、火災保険料が高めになります。鉄筋コンクリート造は、耐用年数が長く、減価償却期間も長期になり、火災保険料はもっとも低くなります。鉄骨造は両者の中間タイプと言えるでしょう。

建築費を比べる場合、いわゆる本体工事費と延べ床面積から割り出す「坪単価」では、実感がわかないと思いますので、賃貸する部屋1室あたりの目安を割り出してみました。

単身用1Kタイプ25㎡が8戸の2階建てで、本体工事費以外の付帯工事費や空調設備費などを含めた建築費総額を1室あたりに換算した数値です(2021年現在)。

・木造:600~700万円
・鉄骨造:800~900万円
・鉄筋コンクリート造:1200万円以上

次に主なタイプについて解説します。

【木造軸組工法】プランの自由度が高く、耐用年数が短い

日本国内のマイホームやアパートでもっとも普及しているのが木造軸組工法です。地場工務店やアパート・ビルダーの多くは、この工法を採用しています。

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基本的な構造は、柱と梁というタテヨコの軸を組んで建物の荷重を支える仕組みです。柱と梁で構成される寺社建築のような伝統的工法は、大地震による揺れに弱いイメージがあるかもしれません。

しかし、現代の木造軸組工法は、タテヨコ軸で組まれた四辺形の対角線状に「筋かい」という斜めの補強材を入れたり、構造用合板を張ったりした耐力壁を設け、柱や梁・土台のつなぎ目を金物で強化するなど、耐震性は従来よりも格段に高まっています。

メリット

・狭小地、変形地、高低差のある敷地でも対応できる
・建物の形状や間取りプランの自由度が高い
・間取り変更、増改築もしやすい

デメリット

・職人の技術力によって施工精度にバラツキが出る
・工期がやや長い。2階建てで4~5ヵ月
・他の構造に比べて遮音性は高くない

【2×4(ツーバイフォー)工法】地震に強い木造、耐火性・気密性も優れる

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壁・床・天井を六面体の箱型に組んで建物を支える仕組みで、同じ木造でも軸組工法に比べると揺れにくい構造です。「枠組み壁工法」とも呼ばれています。壁パネルのフレームに使われる主要な規格材の断面寸法が2インチ×4インチのため、名称が「2×4工法」になりました。

耐震性や気密性に優れる反面、壁自体で建物を支えているため、開口部の位置や大きさに制限があります。施工方法がマニュアル化され、職人の熟練度は求められないため、精度のバラツキが少なく、在来工法よりも工期は短いとされます。

また、耐火建築物の認定を受ければ、防火地域・準防火地域で3~4階建ての建物も建築可能です。この工法を採用しているハウスメーカーも少なくありません。

メリット

・木造の中では耐震性、耐火性、気密性に優れている
・防火地域、準防火地域での中層建築も可能
・熟練工が不要なため、施工精度のバラツキが出にくい

デメリット

・設計の自由度は軸組工法より少し低い
・外壁を除去する増改築は難しい。屋内のリフォームにも制約がある

【プレハブ工法】基本性能や品質が安定。ハウスメーカーごとに独自開発

部材のサイズや規格をモジュール化して工場での生産比率を高め、現場作業を減らした工法です。ハウスメーカーによって、大きく木質系、鉄骨系、コンクリート系に分かれます。

木質系は、2×4工法に似た木質パネル・タイプ。鉄骨系は、主に軽量鉄骨の骨組みに乾式コンクリートパネル(いわゆるALC)を張り付けるタイプ。コンクリート系は、建物を部屋単位に分けた箱形ブロックを工場で造り込み、現場では積み木のように据え付けるユニット系などがあります。

鉄骨系プレハブでは、耐力壁にダンパーを入れた「制振装置」や、基礎と土台の間に積層ゴムや転がり支床などの免震装置を入れて、地震の揺れを抑える工法を用いて独自色を出しているケースが少なくありません。

メリット

・工場生産比率が高いため、施工精度や品質が安定
・在来工法に比べて耐震、耐火、断熱などの基本性能が優れている
・現場施工中心の在来工法よりも工期は短い

デメリット

・「自由設計」と謳っていても、パターンの決まった企画型プランが中心
・狭小地や変形地には対応できない場合も多い。クレーン車の搬入が必要

【鉄骨造】土地を高度利用でき、大空間が可能

骨組みに鉄骨(Steel)を使った構造で、「S造」と略されます。鉄骨の厚みが6mm未満の軽量鉄骨と6mm以上の重量鉄骨に分かれ、前者は主にハウスメーカーのプレハブ工法で採用されているタイプです。

重量鉄骨は、地場工務店が在来工法で建てるケースが少なくありません。ハウスメーカーでも対応しています。

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軽量鉄骨の軸組工法は「鉄骨ブレース構造」とも言われ、3~5階建てまでの中低層が中心。

重量鉄骨は、柱と梁を剛接合してブレースが不要の「ラーメン構造」が一般的で、10階建て以上の高層ビルも可能です。

なお、重量鉄骨では在来工法の地場工務店のほうがハウスメーカーよりも低コストであることが一般的でしたが、最近では差がなくなってきました。工期の短いハウスメーカーのほうが、総事業費が低くなるケースもあります。

メリット

・広い店舗など、大空間のプランが可能。設計の自由度も高い
・耐震性、強度に優れる
・容積率の高い商業地で、高層化して土地の高度利用ができる

デメリット

・木造より火に弱い(要耐火被覆)
・組み立てにクレーン車が必要なため、周辺道路が狭い場所には不向き

【鉄筋コンクリート造】基本性能は高い。コストと工期がネック

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圧縮力に強いコンクリートを、引っ張り力に強い鉄筋で補強した構造。「強化されたコンクリート」という意味の「reinforced concrete」を略して「RC造」と呼ばれています。

5階建て以下の中低層は「壁式構造」、それ以上の中高層は「ラーメン構造」が一般的。木造や鉄骨造に比べて遮音性や耐火性に優れています。いわゆるマンションタイプで、同じ間取りタイプなら、アパートよりも高めの家賃設定が可能です。

メリット

・耐震性、耐久性、耐火性、気密性、遮音性に優れる
・設計自由度が高く、デザイナーズ賃貸にも対応
・耐用年数が住宅で47年と一番長く、長期融資が組める

デメリット

・工期が長く、建築コストと解体費が共に高い
・高層化して住戸数を多くしないと採算が合いにくい
・ミキサー車が入れない狭あい道路の敷地には向かない

文/木村 元紀

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