賃貸マンション・アパートの給排水管は交換が必要?メンテナンス基礎知識を解説[豆知識#2]

賃貸マンション・アパートの大規模修繕と言えば、外壁補修や屋上防水が代表的。これに対して、今まであまり話題に上らなかったのが給排水管です。そもそも「給排水管の交換って必要なの?」と疑問に思う賃貸オーナーも少なくありません。賃貸経営における給排水メンテナンスの基礎知識として、漏水や詰まりが起きる原因や対処法、工事の進め方について解説します。

【取材・監修】配管保全センター株式会社 代表取締役 藤田 崇大 さん

賃貸マンション・アパートで給排水管のメンテナンスは必要?

賃貸マンション・アパートで大規模修繕を行う目的は、建築してから時間が経つにつれて劣化していく建物の基本性能を元に戻し、耐久性や資産価値を保つためです。例えば外壁であれば、築10数年になると、汚れやひび割れなどが目立ち始めるため、目に見える劣化状態を何とかしないといけないと誰しも感じるでしょう。つまり、目視による点検が可能です。

一方、給排水管は建物の内部に組み込まれた付帯設備のため、表面からは見えません。蛇口からの赤水や白濁水、臭気、排水不良などは配管が劣化している兆候ですが、入居者からクレームが来なければ、どうしても見過ごしてしまいがちです。

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給水用の塩ビライニング鋼管の内部にできたサビコブ(築40年超のマンション、異種金属接触部分)|配管保全センター提供

しかし、配管が劣化した状態(写真参照)を放置していると、配管のサビや破損による漏水が起きたり、詰まって水があふれたりして、室内が水浸しになるようなトラブルが発生する恐れがあります。入居者の退去を招きかねませんから、賃貸経営にとっては深刻です。こうしたトラブルを防止するために、給排水管のメンテナンスは欠かせません。

給排水管は何年ぐらいで修繕が必要?

では、給排水管の修繕はいつごろ実施すれば良いのでしょうか。図1に、国土交通省の長期修繕ガイドラインの例を示しました。

図1:給排水管の修繕周期の目安
対象部位 工事区分 修繕周期
改訂前
(~2021.8)
改訂後
(2021.9)
共用部分 給水管・排水管 更生 15年 19~23年
更新 30年 30~40年
専有部分 給水管・排水管 更新 記載なし 28~32年

※国土交通省『長期修繕計画ガイドライン』(2021年9月改訂)を基に作成

「更生」とは、元の配管をそのまま活かして、中に発生したサビや固形物を研磨して落とした後に、サビない樹脂を内側にコーティングする工事のことです。基本的には、炭素鋼鋼管(通称「白ガス管」)やライニング鋼管などが対象になります。「更新」とは、古い配管を撤去して新しいものに取り換える工事のことで、すべての素材が対象です。

このデータのポイントは3つあります。1点は、2021年に改訂されて周期の年数が伸びていること。2点目は、修繕サイクルの長さ。そして最後は、改訂前になかった専有部分の配管の更新が追加されていることです。3番目のポイントについては、次の項で解説します。

配管の修繕周期はなぜ延びた?分譲と賃貸の違いとは

まず、2021年の改訂で修繕周期が延びた理由は、マンションでの施工事例を反映させて実態に即した数値に変更したと考えられます。以前より5~10年くらい修繕が遅くなっても大丈夫だということでしょう。特に、築年が新しいほど耐久性の高い素材が使われるようになっているので、耐用年数も延びています。

次に修繕周期の長さです。外壁や屋上防水の修繕は、一般には15年前後と言われます。耐用年数が47年の鉄筋コンクリート造のマンションなら生涯に2~3回。アパートでも耐用年数(木造は22年、軽量鉄骨造は27年)の期間内に最低1度は実施する必要があるわけです。しかし給排水管の場合は、新規交換までの期間が30~40年と倍以上も長いスパンになっています。

そのため、従来は給排水管の交換時期が来る前に建て替えられてしまうケースが多く、給排水管の大規模修繕を実施する例が少なかったと言えるでしょう。建て替えの理由は必ずしも物理的寿命とは限りません。耐用年数が長いマンションでも、賃貸住宅の場合は、修繕費用と収益とのバランスを比較して、経済的理由から建て替えられたり、更地にして売却されたりするケースがありました。

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分譲マンションの場合は、購入者が永住するか、住み替えるにしても売却して次の所有者が住み続けることを前提に、給排水管も外壁補修や屋上防水と同様に長期修繕計画に組み込んで、一定のサイクルで修繕をすることが常識になっています。しかし、賃貸マンションの場合は、上記の理由で「修繕サイクル」という考え方が馴染まない面もあるかもしれません。

ましてアパートは耐用年数が短いだけに、ほとんどの賃貸オーナーは給排水管の大規模修繕を実施しようとは思わなかったようです。ただ、昨今は建築費の高騰もあり、30年ごとに建て替えるより、修繕をして50年、60年もたせるほうが費用対効果も高くなってきました。木造や軽量鉄骨造の法定耐用年数は20年台と短くても、実際には、きちんと計画修繕をすれば40~50年はもたせられるようになっているからです。

もちろん、賃貸オーナー自身が、経営者として将来の展開をどう考えるかによっても判断は分かれてきます。不動産投資で取得して5年、10年後に売却する出口を想定しているとか、築年が古くなったアパートを引き継ぐ相続人がいないといった理由があれば、高額なコストをかけて修繕する必要はないかもしれません。一方、代々土地を受け継いできた地主系オーナーで、孫子の代まで引き継いでいきたいなら、やはり給排水管の修繕も検討するべきでしょう。

修繕は共用部分より専用部分の配管を優先すべき?

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さて、図1のポイントの3番目、専用部分の追加について解説しましょう。本来、大規模修繕の対象は、建物本体や付帯設備などの共用部分です。住戸内(分譲の場合は「専有部分」、賃貸の場合は「専用部分」)は対象外と言われています。

分譲マンションの場合は、管理組合が修繕積立金で大規模修繕するのは共用部分のみで、専有部分はそれぞれの区分所有者が自分で行うのが原則。管理規約にもそう規定されています。賃貸住宅の大規模修繕を取り上げている、このノウハウ事典でも同じように解説しています。

しかし、給排水管については、専有/専用部分で漏水事故が起きる確率が高いことがわかってきたのです。特に、築年の古いマンションが増加してからは漏水の頻度が高まり、国交省としても実態を認識せざるをえなくなってきたと言えるかもしれません。

また、事故が起きると、水漏れや水あふれが発生した住戸だけでなく、下の階など他の住戸にも影響し、必ずしも住戸単位で完結できません。共用部分である排水立管の更新工事をする場合にも、専有/専用部分への立ち入りが必要になり、壁や床を剥がして元に戻す工事も伴います。そのため、最近の分譲マンションでは、専有部分の給排水管の修繕についても、管理組合が主導して修繕積立金で対応するケースが少なくありません。

以上の他にも、専有部分/専用部分の配管に注目すべき理由はあります。図2のように、専有/専用部分のほうが、漏水リスクが高く、修繕周期も短いからです。

図2:配管の漏水リスク
共用部分 専有/専用部分
管系 太い 細い
肉厚 厚い 薄い
漏水リスク 低い 高い
修繕周期
(国交省ガイドライン)
30~40年 28~32年
1戸あたり修繕コスト 低め(総戸数で頭割り) 高め(住戸単位で負担)

配管保全センター/勉強部屋「築25年以上のマンションの配管の交換工事の優先度は共用部と専有部のどちらが高いか?」「築30年以上のマンションの配管 ケアすべき優先度トップ3!」の記事を参考に再構成

賃貸オーナーの場合も、漏水しやすい材質の配管を使っているのであれば専用部分の配管の修繕についても併せて検討すべき時代になってきたのではないでしょうか。入居者のクレーム・トラブル防止のためには、共用部分よりも専用部分を優先すべきと言えるでしょう。

賃貸マンション・アパートは退去時の原状回復リフォームとセットで配管を交換するのがおすすめ

専有/専用部分の配管の修繕を行うタイミングは、図3のように2通りあります。

図3:配管の修繕タイミングの違いとメリット・デメリット
A.漏水時に緊急対応 B.退去時に順次更新
修繕費用 漏水事故が少なければ最低限で済む 入居中の交換より50%程度コストを抑えられる
オーナーの負担 修繕費用は工事会社の言い値・特急料金になりやすい 漏水リスクが下がり、修繕費用の交渉もしやすい
入居者の負担 当該住戸と下階の入居者へ物理的・精神的な負担、復旧費用や賠償金の負担も 入居中の負担なし。漏水リスクも低いため、上下階への影響も少ない※
売却価格 買い手の言い値になりがち 適正価格で売りやすい

※排水管等が、下の階の天井裏にある場合は、退去時に直せるのは、上の階の排水管(退去する部屋の天井の上)で、もしこれを直すのであれば、上の階の方の断水制限が必要となります

通常は、入居者がいるときに漏水事故が起きてクレームが届いてからその都度対処するAの緊急対応が一般的でしょう。しかし、Aの場合、トラブルを解決するのが優先のため、慌てて工事会社を探して、一刻も早く補修してもうら必要があり、相手の言いなりの特急料金を受け入れざるをえません。入居者や影響の出た住戸への補償、賠償なども発生します。

これに対してBの「退去時に順次更新」の方がコストは抑えられます。事前に工事会社を選定し、見積もりを取った上で施工できるからです。入居者とのトラブル防止にもなるでしょう。

また、漏水や水あふれがひどい場合、給排水管それ自体の補修や交換だけでなく、床板や壁を剥がして内装復旧する工事も伴います。実は、この内装復旧の工事費が大きな負担になります。例えば、ファミリータイプで給水管と給湯管を同時に交換するコストは80万円程度。このうち半分以上の40~50万円が内装復旧にかかります。配管交換より内装復旧のほうが高いわけです。原状回復リフォームと同時に行えば、内装復旧にかかるコストを大幅に抑えられます。

ちなみに排水管の場合は施工範囲が広いため、内装復旧を含めて1住戸当たり100万円を超えるケースが珍しくありません。通常の原状回復リフォームではカバーしにくいため、間取り変更などのスケルトンリフォームに併せて行う方が費用対効果は高いと言えるでしょう。

いずれにしても、給排水管については、外壁や屋上防水の大規模修繕のように一括工事で行うというより、住宅設備の定期メンテナンスと同じような考え方で取り組んだほうが良いかもしれません。

配管の漏水はなぜ発生する?原因と対処法

給排水管のトラブルは様々な要因で起こります。ポイントは次の3点です。

①素材と部位
②レイアウト
③新築・改修時の施工不良

それぞれの要因について解説しましょう。

配管の漏水トラブルの要因①素材と部位

まず「①素材と部位」について解説します。配管の素材は、大きく分けると金属系と樹脂系にわかれます。昔は、金属系の鋼管が多かったのですが、20~25年ほど前から樹脂系の配管が一般化しています。

築年の古いマンションに使われている金属系の給排水管で問題になるのは、腐食(サビ)や損傷による漏水です。金属系素材の配管のうち、漏水リスクの高い原因と部位は、1)異種金属接触腐食 、2)給湯用の銅管の潰食、3)鋼管製排水用の詰まり、の順になります。

マンションの給排水管は図3のような仕組みになっています。この構造を頭に入れておくと、あとの説明がわかりやすくなるでしょう。

図3:マンションの給排水管の仕組み
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1)異種金属接触腐食

電気の流れる水溶液の中で、鉄と銅など種類の異なる金属が接触する部分で腐食が進みやすくなる現象です。例えば、マンションでは水道メーターや水栓と給水管が接続されている部分が挙げられます。水道メーターは銅とスズの合金である砲金製、水栓は銅と亜鉛の合金である黄銅(真鍮)製です。これらの部位とつながる給水管が鉄ベースの鋼管製になると、鉄と銅という異種金属が接するためにサビが発生しやすくなるわけです。

水道メーターは図1のように、上下階を貫通するパイプシャフトに収納された給水立管から、室内の横引き管につながる1カ所に設置されています。通常はメーターボックス(MB)に収まっているでしょう。また、水栓は、キッチン・洗面台・浴室などの水回り設備の下部で給水管に接続されています。そのため、異種金属接触腐食が起きる部位、つまり漏水が起きる場所は特定しやすいかもしれません。部分的な補修で対応できるので、コストも10万円以内に抑えられるようです。

2)専有/専用部分の給湯用銅管の潰食

おおむね築25年以上のマンションでは、給湯管として銅管が使われているケースが一般的です。実は、マンションにおける漏水事故の中で圧倒的に多いのが、給湯用の銅管によるものだと言われています。

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その原因が「潰食」です。「潰食」とは、温水に発生する気泡が、銅管のエルボー(曲がり角の)部にマシンガンのように打ちつけられることで、内壁が削られて小さな孔が開く現象です(図参照)。

水漏れした部分を1カ所だけ応急処置的に直しても、温水を使うキッチン、洗面台、浴室など、銅管のエルボー部は何カ所もあります。横引き管が床下を左右に曲がる部分、横引き管から水栓まで立ち上がる部分など、すべての継手を合せると、ファミリータイプでは十カ所以上にのぼるケースが珍しくありません。これらの部位で、同時多発的に潰食を起す可能性があるわけです。

給湯用の銅管が使われているマンションでは、築20年以下でも漏水事故が発生するケースがあります。一度でも潰食が起きた場合は、専有/専用部分の銅管をすべて取り換えることが望ましいでしょう。

ちなみに給水管は、古くは「炭素鋼鋼管」(亜鉛メッキの鋼管、通称「白ガス管」)、次いで内側の樹脂をコーティングした「塩ビライニング鋼管」、2000年前後ぐらいから樹脂管が増えています。白ガス管よりも塩ビライニング鋼管のほうがサビにくいのですが、継手部分は施工不良や劣化の進行により、サビが発生するようです。

3)鋼管系排水管の詰まり

専有/専用部分の横引き排水管は、最近は塩ビ管(塩化ビニル管)が一般化していますが、以前は、白ガス管、塩ビライニング鋼管が使われていました。

いずれも鋼管系のため、サビにより損傷しやすいうえに、キッチン流し台からの油汚れや食品の残りカスなどの固形物が付着して、詰まりによる水あふれが発生したりします。給湯用銅管と同じように、築年が古くなると、複数個所で漏水や詰まりが起こる確率が高まるため、退去時に一斉に交換することが望ましいでしょう。

塩ビ管はサビませんが、詰まりは発生します。例えば、脂っこい鍋モノや油脂分が多い即席麺のスープなどを捨て続ければ詰まりやすくなりますし、沸騰したお湯をそのまま排水口に流すことが度重なれば塩ビ管はゆがんで損傷する可能性もあるそうです。入居者の生活習慣によって劣化の進行具合が異なり、漏水リスクが高まるかもしれません。

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排水用の塩ビ管の内側に附着した油や固形物|配管保全センター提供

ちなみに、分譲マンションは年に1回の頻度で排水管の高圧洗浄をしていることが一般的です。

詰まり防止には効果的ですが、コードの擦れによるエルボー部の破損が起きる可能性もあると言われています。賃貸オーナーは高圧洗浄をしなかったり、頻度が少なかったりするため、結果的に高圧洗浄のコードによる破損のリスクは低いかもしれません。

配管の漏水トラブルの要因②レイアウト

次にポイントになるのが「②レイアウトの違い」。つまり、漏水や詰まりのリスクは室内の間取りや設備配管のレイアウトによって左右されるということです。排水管の素材が鋼管でも塩ビ管でも変わりません。

まず、ワンルームや1Kなどのシングルタイプでは、給排水の立管が玄関側のパイプシャフトに集まっていて、室内に排水竪管がなく、横引き管も短いケースが少なくありません。漏水や詰まりが起きても、室内に立ち入らずに補修できる場合も多いでしょう。

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一方、ファミリータイプの場合、排水立管が室内に2~3本通っているのが一般的。トイレの汚水管とその他の雑排水管です。雑排水管が「キッチン」と「浴室・洗面・洗濯機」のように2系統に分かれて全体で3系統になっているケースもあれば、トイレと浴室などが1系統、離れた場所にあるキッチンが1系統というケースもあります。

いずれにしても、ファミリータイプでは、設備機器から排水立管までの距離が遠い、つまり横引き管が長いほど詰まりやすくなります。スムーズに流すための勾配が十分に取れないからです。また、90度に曲げて接続する継手の数が多いほど、漏水も起きやすくなります。

同じ専有/専用面積、間取りでも、水まわり設備の配置によって横引き管の長さや継手の数が変わってくることに注意してください。

配管の漏水トラブルの要因③新築・改修時の施工不良

最後は「③新築・改修時の施工不良」の問題です。予備知識として、まず、配管の施工方式も違いを押さえておきましょう。

図5:給水・給湯管の施工方法
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配管の施工方式は大きく分けると、先分岐工法とヘッダー工法の2つのタイプがあります(図3参照)。先分岐工法は、1本の給水・給湯管から、順番に枝分かれさせていく形で複数の水まわり設備につなぐ方式です。直角に接続する継手が複数発生します。ジョイント部分は、特殊な工具によるネジ切り、溶接、接着などが必要なため、職人の技術力によって施工精度に差が出ることは否めません。

ヘッダー工法は、1本の給水・給湯管から一括して複数の管に分配するヘッダーを介して各水まわり設備の水栓にダイレクトにつなげる方式です。ヘッダーと水栓の途中にはジョイント部分がないため、漏水しにくいと言われます。分譲マンションでは、蛇腹のさや管に合成樹脂管を挿入する二重構造になった「さや管ヘッダー方式」も少なくありません。劣化が進んだときに、中の樹脂管だけを抜き取って交換しやすいのが特徴です。

築20年以上の比較的古いマンションでは、給水・給湯管の材質は塩ビライニング鋼管や銅管で、施工方法は先分岐工法が一般的。築20年に満たない新しいマンションであれば、サビや腐食の心配がない合成樹脂製の配管でヘッダー工法が増えています。後者の樹脂管を使うヘッダー工法は施工性も良く、熟練工が不要なため施工のバラつきもないとされていました。

しかし最近になって、一部のヘッダー工法の樹脂管で、築20年以内でも破損による漏水の事例が報告されるようになりました。樹脂管の材質と施工状態の違いが原因の1つです。

樹脂管の代表的な種類は、架橋ポリエチレン管とポリブデン管です。ポリブデン管は架橋ポリエチレン管よりも柔らかめで、価格も安いため多用されていました。ただ、ポリブデン管は、柔らかいが故に、無理な施工が行われやすい面があります。例えば、狭いスペースに収めようとして、メーカー規定の最少曲げ半径を守らずに急角度で曲げしまった部分が、時間が経って割れてしまい漏水するケースです。

また、「さや管ヘッダー方式」でも、配管を曲げすぎているため、中の樹脂管がさやから抜けない場合も多くなっています。

まとめ

賃貸マンション・アパートの給排水管は交換が必要?メンテナンス基礎知識を解説[豆知識#2]2

このように現場作業の良しあし、施工不良の有無も漏水リスクに影響するのが給排水管の厄介なところです。

また、この記事では、共用部分に当たる排水立管の修繕、交換については言及していません。受水槽をやめて直結方式にする等の工事を行うオーナーも増えていますが、費用対効果や投資効率を考慮して、工事実施の是非を検討する必要があると言えるでしょう。

文/木村 元紀

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