繁忙期に空室が埋まらない原因と対策はなに?管理・仲介現場のホンネを直撃インタビュー

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1月~3月は入退去の動きが一年のうちで最も活発になる、賃貸業界の繁忙期。でも、「繁忙期なのになかなか入居が決まらない!!このままだと半年や1年は空室が続いてしまうかも…」、と、頭を抱えている大家さんも多いのでは?

実は、入居が決まる物件・決まらない物件には、それなりの“理由”があるんです。
決まらない原因や決まる大家さんの特長など、現場の仲介担当者のホンネを管理・仲介のプロである伊部尚子さんに伺いました。

伊部 尚子さん 株式会社ハウスメイトパートナーズ

株式会社ハウスメイトパートナーズ  営業本部東京営業部 課長。仲介・管理の現場で20年超のキャリア。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん、入居者さん、不動産会社の「三方良し」を目指して、賃貸管理の現場で邁進中!


入居のチャンスを逃さないためには“数日の遅れ”も許さない!

編集部:賃貸のオンシーズンがやってきました。繁忙期に空室を速やかに埋めるには、どんな心がけが大切ですか?

伊部さん:繁忙期の入居者獲得は、SUUMOなどの部屋探しポータルサイトへのスピーディーな情報アップが大切です。たとえば物件の原状回復工事やリフォームが完了したら、素早く写真を撮って、素早くサイトにアップ!が肝心。

数日アップが遅れるだけで入居者を獲得するチャンスをロスしてしまうんですよ。繁忙期の時期は特に、週末に部屋探しサイトをじっくりと検索し、土日に現地を見ようとしている人が多いので、週末をまたぐのは禁物です。

たくさんの人がサイトを閲覧するタイミングで、キレイになった室内を見てもらえないのは本当にもったいないですから。

編集部:写真撮影やサイトへのアップは、管理会社や仲介会社の担当者が気にかけてやってくれているのではないのでしょうか?

伊部さん:そうですね。通常であれば、随時行っていることです。

ただ、繁忙期の1月~3月は新築物件の竣工が集中していて、担当者はどうしてもそちらに手が取られてしまうのと、さらに、入退去の対応、原状回復工事の発注など、現場は大わらわの時期なんです。

そうなると担当者も人間ですから、写真を撮りに行きたくてもどうしても後回しになってしまったり、大家さんが工事発注している場合は担当者が工事の完了日を把握していなかったりすることも……。

編集部:お一人で何物件も担当されているし、繁忙期は想像を超える忙しさでしょうね!

伊部さん:ですから、「来週水曜にリフォームが終わるよ」など、スケジュール感を伝えてあげると良いですね。大家さんの熱意も伝わります。

普段から担当者とコンタクトを取って、物件に高い関心を持っているという印象を与えている大家さんだと、担当者も「がんばらなきゃ!」と前向きに対応するので、入居も早く決まることが多いですよ。

編集部:今はインターネットで部屋探しの時代なので、物件の写真って大事ですよね。 撮影で気をつけることはありますか?

伊部さん:ポータルサイトに掲載されている物件写真を見ると、斜めになっていたり、ぼやけていたり、部屋のありのままの良さが出ていないものが未だに多くて愕然とします。大家さんも物件の掲載サイトを見て、不動産会社が載せた写真がいまいち良くないと思ったら、ご自分で撮った写真を提供してもいいと思いますよ。ただし、ポータルサイトに掲載できる写真にはデータの大きさ制限があるため、担当者に確認してください。

理想は借り手が知りたい情報が写真ですべてわかることです。

たとえば狭いワンルームなどの写真で、「この壁はどこの部分なのだろう?」と見ている人が間取り図と照らし合わせないとわからないような不親切なものはNG!広角レンズで撮影して部屋の全体を見せるなどの工夫が必要です。

また、窓や収納の様子、キッチンのコンロは何口か、コンセントなどがどこにあるのかなども写真でわかるようにしておくといいですね。ポイントは住む人の目線で撮ること。部屋を借りるにあたって気にするポイント、知りたい情報を写真で見られるようにしておくことが大切です。

編集部:以前は内見で確認していたことを、今はサイトで確認できてしまうんですね。

伊部さん:内見の前にふるいにかけられてしまうので、そこで残らないと話にならないんです。

ですから、内見に来てもらえば魅力がわかる、ではなく、写真の段階で物件の状況や魅力をどれだけ伝えられるかが重要です。掲載できる写真の点数も増えているので、周辺環境の写真ばかりたくさん載せるより、室内の様子が分かる写真を充実させてください。周辺環境の写真を載せる場合は、ファミリー向けならばスーパーや郵便局、小児科などの病院、若い単身向けの物件ならコンビニ、ドラッグストア、100円ショップ、レンタルDVDなど、物件のターゲットに合うものにすることも大切です。

内見は“一発必中”で射止める!

編集部:では、内見に来た人に決めてもらえない物件については、どんな原因が考えられますか?

伊部さん:リフォームやクリーニングで部屋をきれいにリフレッシュしても、1週間も経てばキッチンや下駄箱などにうっすらとホコリが溜まりがちです。よかれと思って用意したアメニティにホコリが溜まっていたら、せっかくのサービスも台無しですよね。

でも繁忙期で多忙な担当者に、頻繁に見に来て掃除をしてもらうのは無理な相談。絶対にこの時期に入居を決めたいなら、大家さんの出番です。いつ内見に来てもらっても大丈夫なように、大家さんご自身で定期的にお掃除に行くことをおすすめします。

特にこの時期は乾燥するので、排水トラップの封水切れで臭いが上がってきてしまう場合がよくあります。内見時に室内に排水臭がこもっていると決まるものも決まらないので、せっかくお掃除に行くなら、ついでに排水トラップに水を満たしてください。キッチン、トイレ、洗面所、浴室は水を流し、洗濯機置き場はペットボトルなどを使って水を注ぎ入れるだけでOKです。

お掃除に行ったら、「今日掃除してきたよ」と仲介会社にアピールするのも良いと思います。内見の案内が入っても安心感がありますし、大家さんの熱心な姿勢が伝わって仲介会社の営業にも気合いが入ります。

編集部:今の時代、内見に来てくれた人を逃がすのはもったいないですよね?

伊部さん:その通りです。お客さまはインターネットの検索サイトで住みたい物件をあらかじめ絞ってから見に来ますから、内見が入れば、“一発必中”で、射止めなければ入居はなかなか決まりません。

内見者は「最優良見込み客」だと心得て、いつ見られてもいいように、物件は常に綺麗な状態を保っておきたいですね。良い印象を持って見に来てくれているので、実際の物件を見てがっかりさせないことが大事です。

特にエントランスは誰もが通って目にする場所なので、照明を変えたり、絵を飾ったりして素敵な雰囲気にしておくと効果が大きいですよ。ただし、ファミリー向けの物件なのか、単身向けなのか、ターゲットによっても好まれる雰囲気は違います。自分でイメージアップできる自信がなければ、センスのあるプロに演出してもらうのも賢い手です。

もうひとつ気をつけたいのは、共用部の清潔感です。ゴミ置き場や駐輪場が乱れていたり、共用部に置きっ放しの古い植木鉢など、荒んだ印象があると、内見者は住んで大丈夫かなと不安になります。

編集部:最近はモデルルームのように演出した物件も増えてきましたね。

伊部さん:「ステージング」といって、部屋をインテリアや小物などで飾り付けてモデルルームのような空間にする方法が流行っています。借り手の心を射止めるには、部屋を見栄え良くしておく必要がありますから、これはおすすめですね。

伊部さん:たとえば柱壁の出っ張りがあるなど、間取り的に使いにくそうに見える部屋の場合、壁の凹み部分のサイズに合わせてデスクを置くといった演出をすれば、内見者は「こんなふうに家具を置けば使いやすそう」と想像できます。

素敵な暮らしのイメージが見えると、借り手はそこに住みたくなるものです。

最近はステージングの専門会社も増えてきました。ご自身で中途半端に演出するよりもプロに頼んだ方がうまくいくかもしれません。家具を置いてコーディネートするだけでなく、しっかりとターゲット設定をして、プロならではの視点でアピールポイントを見出してお悩みを解決してくれますよ。ちなみに私がよく依頼している会社では家具等のレンタル料を含めて3カ月7万円~で行ってくれます。

「内見どころか、問い合わせすら来ない!」なら、仲介会社に原因を聞いてみよう

編集部:ポータルサイトで閲覧されず、問い合わせすら来ない物件の場合はどうすればいいのでしょう?

伊部さん:繁忙期になっても決まらない物件は、まずどこに問題点があるのかを見極めることが大切です。

仲介会社に1件も問い合わせが来ないような場合は、ポータルサイトでふるいに掛けて落とされている可能性が大。借り手はエリアを絞って検索するので、同じぐらいの広さと立地条件の物件を検索すると、理由がわかると思います。

ライバルがすごく多かったり、家賃や設備の魅力で負けていて下の方に埋もれてしまい、足切りされていませんか?

管理会社に任された物件の場合は、管理会社の担当が条件を変えるご提案をしますが、自主管理の大家さんで複数社に仲介を依頼されているケースでは、仲介会社は大家さんを一生懸命説得しても自社で入居者が決まるとは限らず、ともすれば大家さんの気分を害しかねないので、本当のことが言いづらくなります。ですから、仲介会社が正直な意見を言ってくれるような信頼関係づくりも大事だと思いますね。

伊部さん:今までは決まっていたのに、最近になって決まらなくなった場合は、外的要因があるはずです。それは何なのかがわかっているのは仲介会社ですから、反響が悪いときはマメに顔を出して「原因を正直に教えて」とお願いし、普段から忌憚のない意見を聞かせてくれる人間関係をたくさんつくっておきましょう。

 

こんな大家さんは困る!入居が遠のく大家さんはこんなひと

編集部:繁忙期に管理会社がいちばん困る大家さんってどんな人ですか?

伊部さん:ズバリ、すぐに連絡が取れない方です。

繁忙期の契約はタイミングが非常に大事。早めに入居希望のお客さまにオッケーの返事をしないと、別の候補に流れてしまいかねません。審査を素早く行い、「家賃があと2000円下がらないか」、「保証会社をつけたくないんだけど」、「エアコンを設置してほしい」など、借り手から条件交渉がある場合も、レスポンスをすぐに返すのが鉄則です。

仲介の営業担当者は決まる物件にしか案内したくないのが本音ですから、すぐに連絡がつかなかったり、返事や判断が遅い大家さんの物件は案内を自然と避けてしまうこともあります。普段から担当者とメールアドレスやLINEを交換し、レスポンスの良さをアピールしておくと、繁忙期に決まりやすくなります。特に空室確認はすぐに取れるようにしておいてほしいですね。

 

編集部:なるほど!大家さんの心がけも大切ですね。伊部さん、どうもありがとうございました!

 

まとめ[繁忙期に入居を決めるための心がけ]

1.管理・仲介担当者と密なコミュニケーションで、「熱意」をアピール。

2.サイトに掲載されている写真で物件の魅力が伝わるように内容と点数の充実を。

3.内見者を一発必中するために、いつ見られても良いように定期的な清掃を心がける。

4.仲介会社の担当者に、問い合わせがこない原因はなにか、忌憚なく意見やアドバイスを言ってもらえる関係を築く。

5.いつでも連絡がとれる&返事が早い大家さんになる。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2019年2月12日時点の情報です。

取材・文/菱沼 晶 撮影/青木 茂也