住宅セーフティネット法改正で生まれる支援制度とは?
- アパートローン
- 融資保証
- リフォーム・リノベーション
- 修繕・補修

「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」、いわゆる「改正住宅セーフティネット法」が2017年4月に成立しました。高齢者や低所得者などの「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度が創設され、手厚い補助も組み込まれるというこの制度について紹介します。
高齢者などを入居可に、あるいは専用住宅にすると手厚い補助金や支援が!
「専用住宅」には改修費用や家賃の補助も
本格的な高齢化社会に突入した日本。単身高齢者は、今後10年間で100万世帯増加する。しかし、受皿としての公営住宅の大幅増は見込めない。そこで今回の改正は、増え続ける空き家や賃貸住宅の空室などを活用し、住宅セーフティネット機能の強化を図る目的で行われた。
改正のポイントは、大きく3つある。1つは、高齢者・低所得者などの「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度が創設されたことだ。オーナーが物件を都道府県の政令市あるいは中核市に登録すれば、情報が開示され、入居促進につながる。ただし、原則25平米以上の住宅で、現行の耐震基準を満たすことなどが条件となる。登録は1戸から可能だ。
2つ目のポイントは、登録住宅は国や自治体から改修・入居への経済的支援が受けられること。具体的には、次のような制度がある。
1)入居者を住宅確保要配慮者に限定した「専用住宅」にすることを条件に、バリアフリー化などの通常の改修については1戸当たり最大100万円、耐震改修や間取りの変更などに対しては最大200万円の補助を受けることができる。
2)「専用住宅」として自治体に登録した場合、最大4万円までの家賃補助と家賃債務保証料最大6万円までの補助が受けられる。
3)登録住宅の改修費が住宅金融支援機構の融資対象に追加される。
居住支援法人がマッチング家賃の代理納付も円滑に
3つ目のポイントは、空室を保有しているオーナーと、入居を希望する住宅確保要配慮者のマッチングを担う「居住支援法人」の新設だ。福祉系NPO、社会福祉法人といった居住支援活動を行う法人等が都道府県から指定を受けて、住宅確保要配慮者の相談窓口となる。そして登録住宅の情報提供、入居後のフォロー、さらに家賃債務保証事業も行う。
ただし、居住支援法人にとって家賃債務保証事業はリスクが高く、大きな負担を伴う。そのため、住宅金融支援機構が家賃保証保険を担う計画だという。
加えて、生活保護受給者に対する住宅扶助費が直接貸主に支給される「代理納付」をスムーズ化するシステムも新設された。登録住宅のオーナーは、受給者が家賃滞納を起こしそうな実態がある場合、福祉事務所に代理納付の変更に関する通知を行うことができる。福祉事務所は代理納付を検討し、法律手続きに則って進めていく。オーナーにとっては、家賃滞納のリスクが大きく軽減することになる。
新制度の施行は、2017年秋。政府は高齢者や低所得者の生活を住宅面から支えるとともに、深刻になりつつある空き家問題の解決にもつなげて、2020年度末までに17万5000戸の登録を目指しているという。
今後ますます増えると思われる空室問題の1つの解決策として、オーナー側も積極的に導入を検討していくべきだろう。
※「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案」の詳細は、国交省のウェブサイトをご確認ください。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2017年6月5日時点の情報です。
取材・文/藤谷 スミカ
ライタープロフィール
藤谷 スミカ(ふじたに・すみか)
同志社大学文学部英文学科卒。広告制作プロダクション、情報誌出版社を経て、フリーランスのコピーライターとして30余年。ハウスメーカーの実例取材記事、注文住宅、リフォーム、土地活用に関する情報誌の記事、企業PR誌の著名人インタビュー記事、対談記事、企業単行本の執筆等を手がける。