人気ブログ『賃貸管理クレーム日記』でおなじみ!賃貸管理のプロ・クマさんが対処法を解説
- 管理会社(入居者管理)
- 弁護士・司法書士
ゴミ出しや騒音などの管理トラブルは的確かつ早めの対応が大切です。きちんと解決しないと、既存の優良な入居者が退去してしまうリスクもあります。そこで賃貸管理のプロとして名高い、賃貸管理クレーム日記でもおなじみのクマさんに、効果的な対処法と予防策を伝授してもらいました。
賃貸管理の現場で26 年間、様々な案件に遭遇。現在。自身のブログ「賃貸管理クレーム日記」は10 年以上続く。
賃貸管理でのトラブル解決の第一歩!当事者の話をよく聞いて親身に礼儀正しく対処する
賃貸経営をしていると、避けて通れないのが入居者のトラブルです。例えば「上階の生活音がうるさい!」といった騒音問題はクレームの定番ですね。
また、未分別ゴミが回収されず、周辺住民や入居者から苦情が来るのはよくあること。入居者がゴミを溜め込む『汚部屋』も深刻です。駐輪場や通路といった共用部の使い方で頭を痛めるオーナーも多いと思います。
気付いたら早急に対処しないと、こうした入居者の迷惑行為に嫌気がさして、普通に暮らしている他の入居者が退去してしまうことにもなりかねません。そこで賃貸管理歴26年のクマさんこと、熊切伸英さんに賢い対処方法を伺いました。
「トラブルを起こしそうな人を事前に見分けるのは正直困難です。マナーの悪い方、メンタルを病んでいる方、やたらと神経質なクレーマー気質の方でも、入居審査を通した以上、こちらの都合で退去してもらうのは簡単ではありません」とクマさん。
では、トラブルの芽を事前に摘み取るためにはどうすればいいのでしょうか。
「物件の状況を一番よく知っているのはそこで暮らすご入居者ですから、全戸からアンケートを取り、改善するのが理想的ですね。オーナー様から依頼があれば、管理会社も実施しやすいと思います。ただし苦情がたくさん来ることも覚悟しておいてください。アンケートが難しければ、更新時に直接尋ねてみるのも良いでしょう。また、私は退去時には退去理由を必ず聞いて分析するようにします」
クマさんは入居者の苦情を「クレームではなく、サービスリクエスト」として捉えているといいます。実際にトラブルが起きてしまった場合は、当事者の話を良く聞いて、丁寧かつ親身に、礼儀正しく対応することが大切です。
「どちらか一方の話だけを聞いて、決めつけず、必ず自分で見て聞いて確認するようにしましょう。また、オーナー様は利害関係者になるため、理不尽なトラブルに感情が高ぶることもあります。ご自身で解決しようとせず、管理会社に間に立ってもらって調整することをおすすめします」
まずは管理会社に今の状況を聞いて、最前線の情報を知ることから始めてはいかがでしょうか。
”賃貸管理のプロ”クマさん直伝 トラブル対応の心得
- 入居者アンケートで住み心地を確認。ただし苦情が押し寄せることもある
- トラブルが起きてしまったら、丁寧かつ礼儀正しい対応を忘れずに
- 一方の話だけを聞いて決めつけず、必ず自分の目で、耳で確認しよう
- 管理会社を緩衝材役にして穏やかに解決を図ろう
- 管理会社に自分から尋ねて今の状況を把握しておこう
「教えて!クマさん」トラブル解決の達人クマさんが伝授!お悩みの多いトラブルの対応法
ゴミトラブル
ゴミトラブルには、置き場に関する問題と室内にゴミを溜め込む「汚部屋」問題がありますが、いずれも不衛生です。物件環境の悪化や室内の劣化にもつながるので、早急に対処しましょう。
●ネットでゴミ置き場を囲っている場合は、掛け忘れや破れに注意。カラスや猫による散乱で荒れてしまいます。ネットが汚いと入居者は触るのが嫌でネットを掛けてくれなくなるので、新しく付け直し、持ち手も取り付けましょう。
●部外者の投げ込みには監視カメラの設置が効果的。予算がない場合はカラーの証拠写真を張り出して警告します。
●未分別ゴミ対策は入居段階での徹底指導が肝心。法人担当者や母親ではなく、必ず入居者本人に説明します。
●雨戸や厚手のカーテンを開けたことがない部屋は汚部屋の可能性も。発覚したら、本人に資力がある場合は専門業者にゴミ撤去を依頼させます。資力がない場合は、連帯保証人に伝えて撤去費用を出してもらいます。
騒音トラブル
騒音トラブルは被害を受けた側からの通報で対応を始めますが、必ずしも苦情元の主張が全て正しいとは限りません。騒音元や隣室に自ら確認し、トラブルを拡大させないよう感情的な調整も引き受けましょう。
日常生活で発生する音で仕方がない場合も、納得してもらうには重ねての丁寧な対応姿勢が大切です。
●学生の夜中の飲み会騒ぎは、入居者に「苦情電話が殺到した」など真顔で大げさに注意すると、案外素直に聞いてくれます。改善されない場合は親に連絡を。
●建物が古いと設備や構造の問題で音が発生することも。玄関ドアの開閉音はクローザーの調整を。建具の閉まりが悪いと力を入れて閉めるため、上下に音が伝わる原因となります。
●テレビ音など配慮不足系の騒音は、自分の音が響いていることに気づいていないことが多く、悪気はありません。「結構響いています」と教えてあげると改善します。または全世帯に注意文書を配布しましょう。
共用部や駐輪場トラブル
ファミリータイプの物件に多いのが共用部トラブル。通路に私物を置いているケースです。通行の妨げになりますし、乱雑な印象がするので注意しましょう。ただし、角が立たない言い方を。「通路は災害のときの避難経路になるので、モノを置いてはいけないんです」と伝えるといいでしょう。
駐輪場で特に悩ましいのが放置自転車。ただ、勝手に撤去や処分をすると、後で所有者からクレームを受け、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。以下の手順で処理を進めることをおすすめします。
(1)入居者へ駐輪許可シールを配って貼付けを徹底し、放置車両と区別。
(2)シールが貼られていない自転車に撤去予告と撤去代請求の張り紙を。張り紙には10 日後に撤去すると書き、実際は1カ月くらい待つ(夏休みで長期不在の場合などもあるので)。自転車に「防犯シール」が貼ってあれば警察に届ける。
(3)捨てる自転車を確定して撤去。
時間と手間はかかりますが、きちんと段階を踏んで対処しましょう。
トラブル対応は真摯に!
いかがでしたでしょうか。賃貸管理には様々なトラブル・クレームが付き物です。優良入居者の退去につながりかねませんので、真摯に対応していきましょう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2018年3月6日時点のものです。
取材・文/藤谷 スミカ
ライタープロフィール
藤谷 スミカ(ふじたに・すみか)
同志社大学文学部英文学科卒。広告制作プロダクション、情報誌出版社を経て、フリーランスのコピーライターとして30余年。ハウスメーカーの実例取材記事、注文住宅、リフォーム、土地活用に関する情報誌の記事、企業PR誌の著名人インタビュー記事、対談記事、企業単行本の執筆等を手がける。