賃貸住宅の防音性能を高めるコツを解説!騒音トラブルを防ぐためのポイントは?
- 賃貸経営ノウハウ

賃貸住宅の入居者が挙げる住まいへの不満として、常に上位に入ってくる「音」の問題。音の不満による退去やトラブルを防ぐためにも、まずは賃貸住宅の防音性能を知っておくことが大切です。それを踏まえた効果的な防音対策をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
コロナ禍で騒音トラブルが増加?賃貸住宅 最近の”音”事情

もともと、賃貸住宅の防音への不満は高いものでしたが、昨今のコロナ禍で在宅時間が増えたことにより、さらに顕著な問題となりました。
テレワーク中にオンライン会議などで室内で声を発する活動が多くなったり、普段は聞くことのなかった日中の掃除機や洗濯機の音が気になるようになってしまったりと、入居者同士が長時間の在宅中に住戸内外の音に敏感になり、不満やトラブルが発生しやすい状況になっています。
コロナ禍での住宅に求める条件の変化を調べた調査※でも、「遮音性に優れた住宅に住みたくなった」という人が、「変化があった」という答えの中でもトップを占めるなど、入居者の防音性能へのニーズは確実に高まっています。
そこでまず、生活音にはどういったものがあるのか、対策のポイントと併せてご紹介します。
※リクルート住まいカンパニー「コロナ禍住宅検討者調査 賃貸検討者版(全国)」2020年5月調査
賃貸住宅で知っておきたい!2つの音の種類
住宅に関する代表的な音の種類として「空気伝搬音」と「床衝撃音(固体伝搬音)」が挙げられます。「空気伝搬音」は室外や隣室の音源から、窓や戸境壁を通して空気の振動が伝わってくる音のことです。テレビの音やギターやピアノなどを演奏する音、話し声などがこれに当てはまります。
一方、「床衝撃音(固体伝搬音)」は、上階で人が移動したり、物が落下して床が直接振動して下の階に響く音のことを言います。上で歩いている足音や椅子などを動かしたりする音などが挙げられます。
賃貸住宅の防音性能を高める!2つの音を抑える対策のポイント
「空気伝搬音」は床下や天井裏の空間の空気や、窓の隙間などを通して音が伝わり、カーテンや壁・床などの障害物が多くなると音の大きさは減衰するため、壁内に吸音材を施工するなどの対策ができます。
「床衝撃音(固体伝搬音)」の場合、壁や床を厚くしても音が伝わってしまうため、空気伝播音ほど音を抑えられる対策はできませんが、防振ゴムを床に施工するなどの対策をすることで和らげることは可能です。
防音対策は、それぞれの音源の特性を踏まえたうえで、以下の表にまとめた「吸音」「遮音」「制振」の3ポイントを適切に組み合わせることで、効果を高めることができます。
遮音 | 音の侵入や漏出を防ぐこと。 質量が大きくて厚い素材ほど遮音性能が高い |
吸音 | 音を反射させずに吸収することで、通過する音を減らす。 多孔質の素材が適切 |
制振 | 固いものが振動して音の伝搬を抑えること。 クッション材などで音の伝道を遮断 |
建物の構造や内装材の仕様によって音の伝わり方が違うため、同じ防音材を使っても効果に差が出ます。建物と防音材それぞれの特性と相性を知った上で、もっとも効果的な防音材を選び、正しく施工することが重要です。
鉄筋コンクリート造でも静かとは限らない!その理由は?

RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションやアパートの方が木造アパートよりも防音性能に優れているイメージ、ありませんか?
確かに「空気伝播音」の遮音性能を比較したときに、壁の透過損失を示す「D値」で見ると(数字が大きいほど高性能)、隣戸との戸境壁(界壁)については、マンションが「D45-50」程度なのに対して、一般的な木造アパートは「D30以下」(壁内が空洞の場合は「 D20-25」程度 )と少なめ。
「床衝撃音(固体伝搬音)」についても、下の階の音圧レベルを示す「L値」で表したときに(数字が小さいほど高性能)、マンションは「L40−50」なのに対し、一般的な木造アパートは「L70−75」となっています。
壁が厚いなどの構造上、防音性に優れているのはRC造(鉄筋コンクリート造)とされており、空気伝播音は伝わりにくくなります。しかし、足音や家具を移動する音などの固体伝播音はRC造であっても伝わってしまいます。
また、RC造であっても、すべての壁がコンクリートになっていない場合もあります。壁に石膏ボードを採用しているケースもあり、入居者間の音が聞こえてしまうなど、期待していたほど遮音できていない、ということも起こりうるので、注意が必要です。
少ない負担で効果的にできる!防音対策の方法を紹介
本格的な防音対策をするには、構造壁の下地材を剥がすなど、建物の骨組みまで手を入れなければなりません。ここでは賃貸経営としての費用対効果を考え、比較的少ない負担でできる防音対策をご紹介します。
話し声などの「空気伝搬音」に効果的な対策

※写真はイメージです
冒頭にもあったように、「空気伝搬音」は窓の隙間などを通して音が伝わります。そこで、遮音シートをテープ状にした遮音テープ(隙間テープ)を、窓やドアの隙間に貼り付けるだけで、防音効果を高めることができます。ただし、完全に遮音できるわけではないので、その他の対策と併用することで効果を高めましょう。

※写真はイメージです
防音カーテンを入れておけば、空気で伝わる音を遮ることができるため、カーテンのある部屋で生じた音が外に漏れるのを効果的に減らすことができます。先述した「遮音テープ(隙間テープ)」と併用することによって、より高い防音効果が期待できます。

「フェルメノン(FB-シリーズ)」 ドリックス
最近ではフェルトタイプのものもあり、プロでなくても設置のしやすい商品が増えている防音(吸音)パネル。軽くて壁に取り付けやすい上に吸音効果も高いため、手軽に防音性能をプラスすることができます。写真で紹介している商品は、圧迫感のない厚さでたった9㎜の吸音材。DIY 感覚で壁に取り付けることができ、反響音を抑制することができます。

「賃貸内窓®」かんたん内窓本舗(サカエアルミ)
窓から入ってくる音は、窓ガラスから伝わるものよりも、サッシの隙間から入り込んでくることが多いです。サッシと窓ガラス、両方の防音性能の向上が重要になりますが、密着性の高い内窓を設置することで、既存の窓とサッシの隙間を抜けていた音を遮ります。写真の商品は、既存のサッシや窓枠に傷をつけることなく後付けができるタイプの内窓です。

※写真はイメージです
木造アパートの住戸を隔てる界壁については、比較的軽めな工事で防音効果を高められます。最もローコストな対策として挙げられるのが、単価の低い石膏ボードを二重張りする方法。より効果を高めるためには、薄くて性能が良い防音材を使用するのがおすすめです。例えば、2枚の石膏ボードの間に遮音・制振シートを挟む形にすると遮音性が向上します。
足音などの「床衝撃音(固体伝搬音)」に効果的な対策

※写真はイメージです
より高い効果の見込める遮音フローリングなどの商品もありますが、価格はやや高め。そこで、よりコストを抑えて簡単に対策ができるのが防振・防音マット。単体での使用よりも、例えば厚さ数ミリのクッションフロア、フェルト、遮音制振マットを組み合わせれば、効果は増大します。組み合わせ方も様々なので、自分の状況に合うものを検討してみましょう。
防音に優れた物件を建てたい方へ!おすすめ企業をピックアップ

同社が開発した木造住宅高遮音床仕様『Mute50』は木造でありながら床衝撃音を一般的な鉄骨住宅に比べ約3分の1に軽減。スラブ厚270mm相当のRC造分譲マンションに匹敵する性能を実現しています。オプションとして採用できる「Mute45」については、床衝撃音は約4分の1 に軽減し、騒音ストレスは分譲マンションを超える性能を持っています。

楽器演奏愛好家に向けて、高品質な演奏環境を追求したコンセプト型賃貸住宅「音楽マンション®」。フルボリュームでCDを聴いてもほとんど漏れ聞こえない遮音性の高さを誇り、それでいて他社の重量鉄骨造と比べても、RC造ながら建築コストを抑えられる点も魅力です。圧倒的な差別化と希少性により、相場より約8,000円〜1万円の高い家賃設定を可能にし、高入居率を実現しています。

ここまで紹介してきた対策は、あくまでも手軽に導入できるものです。例えば、子供が飛び跳ねたときに出るような鈍い「重量衝撃音」は、建物の構造自体を変えなければ防音効果は出ません。防音工事の専門家への相談も含めて、費用対効果を見極めた対策を検討してみてください。
※この記事内のデータ、数値などは2021年6月30日時点の情報です。