長期入居と安定経営に効果大!定期メンテナンスのススメ
- 住宅設備
「メンテナンス?設備が故障したら直してるよ」という大家さんは多いのですが、実はそれでは不十分。普段から設備の保守点検・修理・交換などを行うことで入居者満足度は高まり、賃貸経営は安定します。定期メンテナンスの意義やポイントを日管協・相談員の鈴木さんに伺いました。
(株)ハウスメイトパートナーズを経て、現在は日管協総合研究所の研究所員・主任相談員を務める。特に顧客満足度向上のノウハウや、柔軟なクレーム対応に定評がある。
入居者満足度の向上。費用の平準化に役立つ
住宅のメンテナンスといえば、建物本体や共用部分の大規模修繕から小さな部品のリペアまで幅広い。今回は、入居者が部屋で暮らすために欠かせない住宅設備機器に絞って紹介しよう。
定期メンテナンスには、設備の稼働状況や劣化具合を調べて、油をさしたり消耗品を取り替えたりする「保守点検」、機能や性能を回復する「修理」、新しい設備に入れ替える「交換(更新)」が含まれる。まだ故障する前に対処するという意味を含むが、そこまで実践しているオーナーは少ない。
「民法で規定された『貸主の修繕義務』を果たす、要するに『壊れたら直せばいい』という考え方がまだ主流でしょう。しかし、対応が遅れると大変です。給湯器が故障して修理するまでに数日かかれば、その間の銭湯代や損害賠償を請求されたり、退去されたりするおそれがあります。クレームにはすぐに対応することが重要です」と鈴木さん。
つまり、定期メンテナンスを行うことは、入居者満足度を高め、クレームや退去の防止につながるのだ。もう1つのメリットがある。
「機械類に故障は付き物ですが、いつ壊れるかわかりません。何年も問題なかったのに、1カ月で3~4台が立て続けに壊れて費用負担がかさむこともあります。定期的に保守点検を実施していれば、費用の平準化・平均化が可能です」
費用の積み立てが大切。リースや延長保証の活用も
どの設備にいつどんな作業が必要で、いくらかかるのか。建物の構造、間取りなどによって異なるため、以下目安を示してある。例えば「アパートの1Kタイプ」では、30年間のトータルで約90万円かかる。11~15年、21~25年に特に金額が膨らんでいるのは、交換の時期が重なるためだ。
主な受託設備メンテナンスの周期と費用の目安
「定期メンテナンスを適切な周期で実施するには、費用を積み立てておくことが大切です。新築後2~3年は、ほとんど故障も起きないため、何も準備しないオーナーも少なくありません。しかし、この時期に原資を作っておけば、先々楽になります」と鈴木さん。
外壁修繕などの大規模修繕を含めた修繕積立金の目安は、1K~1DKタイプで1室1ヵ月あたり4400~5500円だ。
積立金は、税引き後利益からの貯金という扱いになり、経費にはならない。これに対して、設備機器リースを活用すると、メンテナンス込みのリース料が全額経費になる。初期投資に多額の出費がないこともメリットだ。リース対象の設備は、給湯器の他に、キッチンや洗面台など多様化している。
また、大手量販店などでは、1~2年のメーカー保証期間を過ぎても3~10年間の無料修理を行う「延長保証サービス」を導入しているところも多い。こうしたサービスを活用するのもいいだろう。
入居者との対話を大切に、長期入居の武器にしよう
建物や共用部分のメンテナンスの場合、管理会社が目視による定期的な保守点検を行うが、室内の住宅設備はそれができない。
「室内設備のメンテナンスをスムーズに実施するには、入居者とのコミュニケーションが大切です。意欲的な管理会社では、1年に一度、あるいは更新時などに『何か不具合はありませんか。使い勝手の悪いところはありませんか』とアンケートを行い、状況を確認するようにしています。自主管理の場合はオーナー自身が実践してください。こうした入居者への配慮を見せることは、物件の評価や印象を良くすることになります」と鈴木さん。
ちょっとしたクレームの電話があっても、不具合や故障を早めにキャッチするきっかけになると考えてメンテナンスに活かすという発想も必要だろう。
さらに「設備交換を入居者の退去防止に活かすこともできます。更新時期に合わせて、1回目は換気扇、2回目はインターホンの新調などで、更新料を入居者に還元していけば、長期入居を促すことにつながるでしょう」と鈴木さんはアドバイスする。
定期メンテナンスは、事後に対応する後ろ向きの行動ではなく、入居者満足度を高め、空室を防止するための積極的な武器になることも覚えておこう。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2018年3月6日時点の情報です。
取材・文/木村 元紀