アパート、マンション、戸建て…賃貸住宅を建てるとなぜ相続税を節税できる?その効果を解説!

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公開日:2021年12月9日
更新日:2022年3月15日
アパート、マンション、戸建て…賃貸住宅を建てるとなぜ相続税を節税できる?その効果を解説!1

親から受け継いだ未利用の土地や古い賃貸アパートやマンションは、ただ持っているだけでは、次の相続で資産が目減りしてしまう?ここでは賃貸住宅を建てることで得られる節税効果など相続税の基本ポイントを解説します。

お話を聞いた方
アパート、マンション、戸建て…賃貸住宅を建てるとなぜ相続税を節税できる?その効果を解説!2

不動産コンサルタント 小野 信一 氏

ネクスト・アイズ株式会社 代表取締役。不動産建築・取得や資産の悩みに対し、第三者の立場で公正中立にアドバイスをしている。全国での講演や著書も多数で、相談者からの信頼が厚い。

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税理士・行政書士 岡本 篤典 氏

岡本篤典税理士事務所 代表。名古屋国税局・税務署などの勤務を経て、同税理士事務所を開業。行政書士・相続アドバイザー・FP・宅建の資格も持ち、資産課税分野を得意としている。

相続で資産を減らさないために有効な防衛策を

アパート、マンション、戸建て…賃貸住宅を建てるとなぜ相続税を節税できる?その効果を解説!2

親から不動産を相続しながら、ただ漫然と所有しているだけの二代目オーナーさんは少なくないでしょう。

たとえば「古いアパートを受け継いだけど、運用は管理会社にお任せ。他に駐車場もあるみたい…。固定資産税もけっこうかかるし、お金があまり手元に残らない」、あるいは「自分ももう60歳を超えたから、そろそろ自分の子への相続も考えておかないと…。親から相続されたアパートは、かなり築年が経って古くなり、空室も目立つ。建て替えた方がいいのかな…?」といった声も聞かれます。

そもそも、賃貸住宅がどうして相続税対策になるのか、よく理解していないオーナーさんもいます。数十年前の親の代に立てた対策は、もはや有効ではありません。せっかく受け継いだ不動産も、きちんとした対策を行なわなければ、次の代でなくなってしまうかもしれません。

そこで、まず賃貸住宅の建築による相続税対策の基本を知っておきましょう。さらに新築や建て替えをすべきか否かの判断ポイント、建築の進め方を解説します。

建築の節税効果①:賃貸用の土地・建物は評価額が大幅に圧縮

アパート、マンション、戸建て…賃貸住宅を建てるとなぜ相続税を節税できる?その効果を解説!2

「賃貸住宅は相続税対策に有効」と言われる理由は、相続税を計算する際の財産評価方法の違いにあります。相続財産のうち、現金や預貯金は額面通り、上場株式は過去3カ月の株価平均値というふうに単純明快。ところが不動産の場合は、種類や用途によって異なります。土地か建物か、同じ土地でも更地か建物付きかによって変わり、建物は自宅用か貸家かによっても違います。つまり、活用の仕方によって「評価額」を調整できるのです。

具体的にいうと、土地の「相続税評価額」は、何も建っていない更地(駐車場、資材置き場も同様)の状態で、市場で取り引きされる「時価」よりもすでに低い価額となります。売却するのに時間と経費がかかるからです。

道路の整備された市街地の場合は「路線価」で評価され、公示価格の8割程度といわれます。そこに貸家が建っていれば、さらに[借地権割合×借家権割合×賃貸割合]で計算した割合が減額されます。借り手がいると、土地オーナー自身が自由に利用できない制限がつくからです。

借地権割合は30~90%の7段階に分かれていますが、市街地などでは60~70%が多い傾向です。借家権は全国一律30%なので、掛け合わせると20%前後の圧縮になります。

次に建物の相続税の計算では、固定資産税評価額が用いられ、実際にかかった建築費の5~6割の水準になります。さらに貸家の場合は[借家権割合×賃貸割合]分の30%程度が減額されます。

たとえば、現金1億円と更地評価1億円の土地の合計2億円の財産があったとします。ここに現金1億円で賃貸住宅を建てると、下図のように財産全体の評価額は6割以下の1億1400万円まで下げられます。非常に圧縮効果が高い対策といえるでしょう。

賃貸住宅の建築による相続税の圧縮効果
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ただ、注意したいのは、それぞれの計算式にある「賃貸割合」という項目。建物全体のうち実際に貸し出している面積(戸数※)の割合のことで、空室率が高ければ賃貸割合は縮小してしまいます。つまり相続時に満室(賃貸割合=100%)の物件が、最も節税効果が高いということになるのです。

※空室が1カ月程度であるなど一時的な期間の場合は、賃貸しているものと認められます。

建築の節税効果②:小規模宅地等の特例で賃貸住宅は50%評価減

建物敷地の場合には、さらに大幅な相続税評価額の減額を受けられる「小規模宅地等の特例」があります。

一定面積まで80%減額となるのは、亡くなった親の自宅に同居していた子が相続した場合などに適用される特定居住用宅地等と、いわゆる親の家業など(不動産貸付業等を除く)を引き継いだ場合の特定事業用地等です。アパートや賃貸マンションなどの賃貸住宅の場合は、「貸付事業用宅地等」に該当し、200㎡まで50%減額となります。なお、貸付事業用宅地等のうち、同族会社の事業用に貸し付けている場合は80%減となります。

自宅と賃貸住宅を所有している場合は、重複して利用することもできますが、上限面積については個別の要件とは異なる計算方法となります。いずれも対象となる土地について細かい規定があり、間違いやすい点もあります。該当するか否かを判断する場合は、税理士など専門家に相談するのがいいでしょう。

賃貸住宅の建築で得られる節税効果まとめ

■ 賃貸住宅の建築により土地・建物ともに相続税評価額を圧縮できる
■ 相続時に満室(※)でなければ、圧縮効果は減ってしまう
■ 小規模宅地等の特例で土地の評価額がさらに減額できる

※空室が1カ月程度であるなど一時的な期間の場合は、賃貸しているものと認められます。

ここまで、賃貸住宅を建てることによって得られる節税効果を解説してきました。続いては、未活用の土地や築古物件を持っている場合に、新築や建て替えをすべきか否かの判断ポイント、建築する際のダンドリとスケジュールを解説していきますので、以下からご覧ください。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2021年12月9日時点の情報です。
取材・文/木村 元紀

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