【法律Q&A】賃貸住宅の建築時に起こりうるトラブル

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久保原弁護士による法律相談、「管理」におけるトラブルのQ&Aです。第1回は建て替え・新築時から入居開始までに起こりうるトラブルです。リスクを回避するために、オーナーは何を気を付けるべきなのでしょうか?

九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也

2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。


2008 年、九帆堂法律事務所設立。


最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。


Q1:建築途中で建築費用の安い業者を見つけた場合、建築会社を変更できる?

A1:変更は可能ですが、通常は違約金が必要となります。安易な変更はおすすめできません。

建築会社との契約は請負契約ですので、民法上、注文者であるオーナーは仕事が完成しない間は、いつでも契約解除ができます。建築工事はオーナーの利益のために行われるものであり、信頼関係が損なわれた相手が工事を完成させても無意味であると考えられているのです。

しかし、建築会社に生じた損害は賠償をしなければならず、具体的には、契約で定められた請負代金からまだ生じていない費用支出を控除した額を賠償することになります。また、通常は違約金が契約で定められており、その場合は違約金も必要です。このように考えると、建築途中で建築費用の安い企業を見つけたからといって、安易な変更はかえって負担を大きくすると言えるでしょう。

Q2:建築会社の見込みに反し入居者募集が苦戦した場合、損害賠償できる?

A2:残念ながら、通常はできません。事業リスクはオーナーにあります。

建築会社が、建築契約前に賃貸マンションを建築した場合の収支予定表を作成し、参考資料として交付してくれる場合があります。しかし、それは通常はあくまでもサービスの一環であり、その収支計画について建築会社が何らかの保証をしているとまでは考えられません。したがって、事業が思い通りにいかなくても、建築会社に損害賠償請求をすることはできないということになります。

このように事業リスクはオーナーが負うわけですから、建築契約の前に。オーナー自身が収支計画の検証を十分に行う必要があります。周辺の賃貸市場をリサーチし、立地・間取り・景観などからどのように差別化を図ることができるか、入念に検討してから建築契約を締結しましょう。

Q3:入居者トラブルを回避するために、建築前から注意しておくべきことは?

A3:騒音問題や原状回復、定期メンテナンスなどを見据えておくことが重要です。

代表的な入居者トラブルに騒音のトラブルがあります。発生するとオーナーが関与せずにはいられず、かつ、簡単には解決に至らないため、大きな悩みの種となることもあります。建築会社とよく相談をし、ある程度の防音構造にしておく方が無難です。

また、賃貸マンションは入退去の度に原状回復工事が行われ、工事費用の一部を入居者に請求することもあります。明確で合理的な金額の原状回復工事が可能なのかを確認し、クロスなどの費用の目安の一覧表を作成しておくとよいでしょう。定期的なメンテナンスが必要な設備等についても、メンテナンス費用やその時期を確認し、収支計画を検証することはもちろん、入居者対応も後手後手にならないように準備をしましょう。

Q4:資材の高騰を理由に、建築会社から請負代金の増額請求を受け困っています。

原則として、請負代金の増額請求に応じる必要はありません。

請負代金の金額は、請負契約の重要な要素です。オーナーは金額に納得したからこそ工事を依頼しているので、工事内容に変更がないのに後で増額を要求されても、原則として応じる必要はありません。逆に、建築会社は資材の高騰などのリスクを加味して見積もりを作成しているので、増額が認められなくてもやむを得ないということができます。

しかし、建築工事は長期契約のため、予期せぬ事情変更の場合は、全リスクを建築会社の負担とするのは不公平な場合もあります。そこで請負契約においては、増額を認めたり、協議ができる場合について定めることが一般的です。予期せぬほどの資材の高騰は通常考えにくいですが、契約内容を事前に確認しておくことが重要です。

Q5:建築工事の途中で、建築会社が倒産してしまいました。まず何をすべき?

破産管財人に申し入れを行い、まずは現場の現状確認をしましょう。

建築会社が破産した場合も、契約は自動的に解除されません。破産管財人が、工事を続けて報酬を請求するか、契約を解除して出来高に相当する額の報酬を請求するかを選択します。契約解除の場合は残工事を他の会社に依頼します。オーナーはいずれにしても破産管財人に申し入れし、早期に現場確認を行うことが重要です。完了した工事に瑕疵はないかをチェックし、自身でも出来高部分の請負代金額を算定するなど、破産管財人との協議に備えます。

残工事を他の会社に依頼する場合、費用増加などの損害の多くはオーナー持ちです。しかし、着工から完成までを保険でサポートする「住宅完成保証制度」などに加入した建築会社に発注すれば、安心でしょう。

イラスト/すぎやまえみこ

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