牧野知之氏が語る 人口減少、住宅過剰でも勝てる賃貸住宅

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オラガ総研株式会社 代表取締役 不動産事業プロデューサー 牧野 知弘(まきの ともひろ)氏 東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループ、三井不動産、日本コマーシャル投資法人を経て2015年オラガ総研設立。著書に「2020年マンション大崩壊」(文春新書)「マイホーム価値革命」(NHK出版新書)等。

『空き家問題 ―1000万戸の衝撃』や『2020年マンション大崩壊』など話題の著書を出版し、テレビ番組や経済誌の連載などで活躍中の牧野氏に、本誌の編集長上田がインタビュー。人口減少、住宅過剰時代を生き抜くために何が必要なのかを伺った。

社会構造の変化により不動産の二極化が進む

話題になった『空き家問題 ―1000万戸の衝撃』や『2020年マンション大崩壊』などの著書を拝読すると、日本の社会構造の変化が重要なキーワードとなっているようですが、今後の不動産市況をどの様に見ていますでしょうか?

牧野:日本は人口減少、極端な高齢化、ライフスタイルの多様化という社会構造の変化に直面しています。それにより空き家の増加、建築費の上昇が引き起こされ、価値が上がる不動産と下がる不動産、勝ち残るオーナーと敗れるオーナーといった二極化現象が起こってくるでしょう。

空き家は、東京五輪が開かれる2020年には1000万戸に達し、空き家率は15%に上ると言われています。

それはこれから賃貸住宅を建てることに関しても厳しいと言えるのでしょうか?

牧野:消極的な立場に見られますが、私は建ててはいけないとは一度も書いたことはありません。現状を正しく理解し、きちんと中長期的な計画を立て実行していけば、安定経営を続けていくことは充分可能だと考えます。

大家さんが賢くなり、自分で専門家を選ぶことが当たり前の時代に

では、これから賃貸経営を始める時に注意すべき点は何ですか?

牧野:「もっと賢くなりましょう」というのが私からの最初のメッセージです。失敗した事例を聞くと、ハウスメーカーの営業担当者の笑顔や人柄が良かったから契約をしたという話が多い。何千万円も払うのに、あまりにも不勉強で、無防備です。

建てれば黙っていてもお客さんが入る時代は終わり、自分からお客さんを探しにいかなければならない新しい流れが起きていますから、顧客マーケティングは欠かせません。事業である以上、大家さん自身もしっかり必要な知識を勉強して、自分の理想とするアパート像を描いた上で、良い運営者や管理者を自分の目で選んで賃貸経営をする。事業として当たり前のことを、日本でもようやく求められる時代になってきたといえるでしょう。

マーケティングといっても、普通のオーナーには難しいのでは?

牧野:昔は、不動産の売買価格や賃料の情報は、不動産会社が独占していましたが、今やネット検索をすれば、誰でもそうした情報にアクセスできます。

ネット以外でも情報は得られます。たとえば近くの喫茶店でアルバイトしている学生さんと仲良くなったり、自分の子どもや孫が学生なら友達に聞いてもらったり。

どんな間取りや設備が今のトレンドか、自分のエリアでどんな人が暮らしているかをじっくり観察して、彼らが喜んでくれる企画は何かを考え、自分なりのイメージを作っていただきたい。不動産会社や税理士に「お任せ」「丸投げ」はいけません。

また、建てた後のメンテナンスも重要です。目先のコストをケチらずに、必要な修繕や予備的な処置をこまめに実施すると、入居者の安心感につながります。それが長期安定経営のコツです。

街のブランド価値が変化、駅の競争力を見極めるべし

オーナーが資産組み換えや別の場所への投資を考えている場合に、賃貸住宅に向いた立地の基準はありますか?

牧野:どこに建てるかを選ぶとき、「価値観の変化」を意識することが非常に重要になっています。今、田園調布、芦屋など、誰もが知っている高級住宅地のお屋敷が売れず、空き家が増えてきています。

高齢になると、駅から遠くて坂の多い場所は大変なので、平坦で駅に近い立地のマンションへの住み替えが進んでいるからです。ステレオタイプな「見晴らしの良い丘の上の高級住宅地」というブランド価値が失われているわけです。

駅からの距離は重要ですね。

牧野:単に駅に近ければいいわけではありません。最近の新しい概念として出てきたのが「駅の競争力」です。郊外でも、急行停車駅や乗り換え駅などのターミナル駅は人気があり、その周辺から人が集まってきています。

地方では人口減少対策として中心市街地への移住を促進する「コンパクトシティ実験」が行われていますが、実は大都市の中でも、周辺部からターミナル駅へ、自然発生的なコンパクト化が起きているのです。こうした現象も知っておいたほうがよいでしょう。

人口の増減だけでなく、転入と転出の状況、つまり居住者の入れ替わり度合を調べた「街の新陳代謝ランキング※」を見ると、意外な街が上位に入っていることがあります。人の出入りが激しい街は、不動産の賃貸も売買も頻繁に起こり、消費も促進されるので、街全体が活性化します。こういったデータを参考にしてください。

※東洋経済新報社にて独自に集計。全国814市区を対象に、人口1000人当たりに基準化した人口流動数(転入者、転出者、出生者、死亡者の合計)を算出し、ランキング

上田:地方や郊外がダメで大都市や都心が良いとも限らないと。非常に興味深いですね。この続きはまたじっくりお聞かせください。

牧野氏の主な著書 これからの賃貸経営のヒントが満載!

空き家問題 (祥伝社新書)

空き家問題の根本にあるのは、日本の都市発展の歴史そのものであり、戦後の日本が行き着いた末の姿。空き家の現状とその処方箋を解説。


2020年マンション大崩壊(文春新書)

東京五輪を前にマンション価格は高騰中。その裏で管理費や修繕積立金の滞納などの問題が顕在化。マンションに未来はあるのか?


マイホーム価値革命 2022年、「不動産」の常識が変わる(NHK出版新書 519)

日本の1/3が空き家の時代が始まる。「売る」から「貸す」へ。プロだけが知る“運営”の考え方とは何か?新たなビジョンを提示する。


※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2018年6月5日時点のものです。

取材・文/木村 元紀 撮影/工藤 朋子

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