「サブリース」とは? 契約の仕組みとトラブル回避のための対処法
- 借り上げ(サブリース)
サブリース契約とは、転貸目的の一括借り上げ賃貸借契約のこと。入居者がいなくても、オーナーはサブリース賃料分を毎月受け取ることができます。「長期家賃保証」など魅力的な謳い文句がつく一方で、「30年一括借り上げ」契約後の家賃見直しが折り合わず解約となった事例などもあり、サブリースの実態がわからないという賃貸オーナーも多いのでは? サブリースの仕組みを正しく理解して使いこなすために、基本的な仕組みや、トラブルにならないための知識・対処法を専門家が解説します。
賃貸管理実務の経験を活かし10年以上に渡って、オーナー・入居者・管理会社からの相談に対応。登録制度の普及、調査研究・講演活動も豊富。
サブリースの仕組みと契約
サブリースとは「転貸目的の一括借り上げ賃貸借契約」のこと
サブリースの意味は「転貸」。サブリース事業を行う会社(以下「サブリース会社」)が転貸を行うことを目的に、賃貸住宅をオーナーから一棟丸ごと借り上げる契約(住戸単位もある)と、サブリース会社から入居者へ転貸する契約がセットになったシステムを指します。
家賃保証を謳う場合も多いですが、法的には「保証契約」ではなく、借地借家法が適用される「賃貸借契約」となります。賃貸住宅のオーナーが得るのは、サブリース会社が家賃総額から管理経費や利益を引いた後の「借り上げ家賃」です。
サブリース会社には、住宅メーカーのグループや提携企業と、独立系の管理会社が行う2種類があります。
サブリースのメリットと注意点
サブリースの第一のメリットは、サブリース会社が一棟丸ごとの借り上げ家賃を長期契約で払うため、空室や滞納による「収入の空白」がないことです。さらに、賃貸経営の実務をプロに任せられるのも大きなポイント。
「入居者とオーナーの間では直接の責任問題も発生しません」(長井さん)
その半面で注意点もあります。保証契約ではなく「賃貸借契約」という点がカギ。「30年一括借り上げ・長期保証」と言っても、契約中の借り上げ家賃の減額や中途解約の可能性があるということに注意が必要です。
最悪の場合、サブリース会社の破たんもありえます。また、家賃収入の水準は、一般管理(管理料の相場は賃料の5%)よりサブリースのほうが低いこと、礼金や更新料などの一時金も入らないことは、デメリットとも言えるでしょう。
サブリースのメリット
●安定した収入を得られる
家賃滞納や空室の有無に関係なく、一定の賃料を確保でき収入の波がないため賃貸経営が安定する。
●融資を受けやすく、返しやすい
事業収支が安定するため、金融機関から建築費用等の融資を受けやすく、ローンも返しやすい。
●管理業務をプロに任せられる
入居者管理(募集~苦情対応)、建物管理(点検・清掃)の手間が不要。確定申告手続きも簡素化。
●トラブルの当事者にならない
入居者トラブルや訴訟になっても、入居者と賃貸借契約を結ぶサブリース会社が対応し費用負担もない。
サブリースの注意点
●賃料が下がる可能性がある
契約中でもサブリース会社から家賃減額の請求を受け、当初設定より賃料水準が下がるケースが多い。
●修繕費等の出費がある
管理の手間はないが、原状回復リフォームや建物・設備の修繕にかかる費用はオーナー負担が多い。
●受け取れない金銭もある
礼金や更新料等はサブリース会社に入る。初期募集期間や退去時の賃料が免除される「免責期間」も。
●中途解約や破たんのリスク
サブリース会社から一方的に契約を打ち切られたり、会社が倒産してしまう可能性もある。
サブリース契約前に知っておきたい! 契約時のポイント
「サブリースは、経営の実務を任せられる」としても、契約をした以上はオーナーが最終的な経営責任を取ります。知識と注意点は知った上で、契約をかわすべきであることを心得ておきましょう。
サブリース契約書の内容をしっかり検討する
まず初めに、契約書や資料を取り寄せて、しっかり検討することが大切です。
「多額の契約を確認するのに1週間では到底無理です。契約の1カ月前から情報を仕入れましょう。建築請負契約が伴う場合は、着工の半年前から検討するべきです」(長井さん)
契約書をチェックするといっても、いきなりサブリースの契約書を見てもすぐに理解できるものではありません。会社によって内容が違うこともあります。
サブリース契約を比較する際のお手本となるのが、国土交通省が作成した「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」です。契約書の雛形、用語の定義・注意点など、詳しく解説されているので、何が重要かを把握しておきましょう。
サブリース会社が「賃貸住宅管理業者登録制度」に登録しているか確認
サブリース会社は、企業規模が大きく、入居率も90%台後半と高いケースが多く見られます。とはいえ、サブリース会社が信頼できるかどうかも気になるところです。そこで、任意で加入できる「賃貸住宅管理業者登録制度」に登録しているかどうかが目安のひとつとなります。
「登録していれば、一定の資格者による説明や書面交付が義務づけられています。さらに経営状況を国交省に毎年届け出る必要があり、ルール違反があれば指導、監督が入る。一定の透明性があるといえます」(長井さん)
この制度に登録していない会社の場合は、重要事項を事前に説明してくれるか、マイナス情報を提供するかなどをチェックしておきましょう。
具体的な契約書の契約条項で最も重要な要素と言えるのは、当初家賃の水準と改定の方法、契約期間、解約などが挙げられます。
ただ、これは基本的な仕組みの場合で、会社によっては、家賃を固定せずに稼働率が高い場合に収益分配をするなど、独自のサービスを行っているケースもあります。各社の違いをよく理解し、説明に疑問がある場合は質問して解消してから、契約に望みましょう。
サブリース契約書でチェックするべきポイント
●契約期間について
勧誘時の説明と契約書上の契約期間が一致しているか(最短1~2年から最長30~35年)。更新や再契約の有無、ある場合はその条件についても確認。
●賃料水準について
契約書上は当初の設定賃料しか記載されていないが、転貸家賃の査定額(募集設定家賃)に対する借り上げ家賃の割合(保証率)についても確認(一般に80=90%が多い)。
●賃料の改定について
初回の賃料改定日(当初の賃料固定期間・据え置き期間の有無)、2回目以降の改定のサイクルは何年か(最近は当初5年固定、その後2年ごとに改定の例が増えている)。
●免責期間について
家賃の支払い義務を免除する期間。「新築引き渡し日」から「賃料支払開始日」までの初期免責期間(1~3カ月が多い)と、入退去時の「再免責期間」(1カ月程度)がある。
●管理費・修繕費の負担区分について
サブリース事業者が行う建物維持管理の対象と内容、建物本体・付帯設備・住戸内の修繕や補修費、共用部の公共料金等の負担の区分(貸主か借主か)について詳細に明記されているか確認し、内容をチェック。
●中途解約について
何カ月前までに申し入れれば解約できるかの「予告期間」(標準契約書では6カ月)と「違約金」の金額を確認。一定の期間は解約できないなどの特約条項を設けることも可能。
サブリース契約をする時にチェックするべきポイント
●国交省の登録制度に加入しているか(任意加入)
「賃貸住宅管理業者登録制度」(加入は任意)の登録会社とは、賃料や敷金の分別管理、有資格者による最重要事項説明と書面交付、サブリース契約の場合は将来の賃料変動についての説明義務などがある。加入しているかは「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確認できる。
●契約前の重要事項説明(重説)が適切か
賃料を事前に交付し、管理内容・条件などについての重要事項説明の内容を分かりやすく説明してくれるかも確認したいポイント。管理内容や費用負担などの詳細なチェックも大切。
●マイナスとなりうる情報も話してくれるか
事業収支計画の収支計算の根拠、家賃値下がりの可能性、大規模修繕にかかる費用や周期など、オーナーのリスクとなるマイナス情報、デメリットなどについての説明があるかも確認しよう。