「サブリース」とは? 契約の仕組みとトラブル回避のための対処法

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公開日:2018年10月8日
更新日:2022年5月31日

なぜサブリースのトラブルが増えている? 弁護士が解説

サブリーストラブルの原因は「説明不足」と「確認不備」

オーナーズ・スタイルの読者(賃貸住宅所有者)817名に、入居者管理の形態について調査(出典:2015年12月実施「オーナー白書アンケート」)を行ったところ、サブリース契約を結ぶオーナーは約24%と、全体の4分の1にとどまりました。

また、サブリース契約を結んでいる読者にサブリース会社への満足度を聞いたところ(出典:オーナーズ・スタイル48号読者アンケート)、57%が「満足している」、「ふつう」が32%、「不満」が11%となりました。

昨今、サブリースに関する報道やニュースが増えているため、サブリースの仕組みやメリットが分からず、契約に二の足を踏んでいる賃貸オーナーが増えている可能性もあります。

なぜ近年、サブリースにまつわるトラブル事例が増えているのでしょう。サブリース被害対策弁護団の一員でもある、谷合周三法律事務所の谷合弁護士はこう指摘します。

「サブリース会社の契約内容やリスクに関する説明不足が大きくあげられます。一方で、オーナー側の契約内容の確認不備が、トラブルに発展していることも。オーナー側もサブリース会社の提案内容や事業収支計画の根拠を確認したり、調査することが重要です」(谷合弁護士)

日本弁護士連合会では、2018年2月15日にサブリース会社と共に、金融機関にもリスク説明を義務付けるように意見書を出しました。

さらに、国交省では前述の登録制度の説明義務を強化し、消費者庁と連携して契約後のトラブル防止のために相談窓口を設けるなど、対策を拡充しています。

解説していただきました
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谷合周三法律事務所 谷合 周三(たにあいしゅうぞう)弁護士

1993年弁護士登録。サブリース被害対策弁護団の一員。「日本弁護士連合会消費者問題対策委員会」副委員長、「欠陥住宅関東ネット」事務局長等を歴任。不動産トラブルや相続問題、欠陥住宅問題の解決に取り組む。

サブリース契約にまつわるトラブル事例

最近増えているサブリーストラブルの典型的なケース事例と対処法、そうしたトラブルを引き起こさないためのポイントを谷合弁護士に解説していただきました。

サブリーストラブル1:大幅な賃料減額要請、応じないと契約打ち切りと言われた
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多少の家賃減額なら応じられるかもしれませんが、ローン返済に支障をきたすような大幅減額は難しいところ。どのように対応すべきなのでしょうか。

谷合弁護士「まず、サブリース会社との契約書に則った減額の提案なのか、契約書の条項を確認することです。2年ごとに賃料を見直すなど、会社側に有利なケースが多く見られます。仮に契約条項通りでなくても、借地借家法32条で、借主側の家賃減額請求は認められています。どちらにしても家賃減額の協議には応じる必要があるでしょう。

ただし、要求通りに減額しなければならないわけではありません。会社側が最初にどう説明していたか、この時期に減額を求める根拠が何かを考慮することになっています。個別の事情によって、議論する余地はあります。

例えば、30年間家賃が変わらない収支計算を踏まえた事業計画を提示され、オーナーはその説明を決め手に契約したとします。にもかかわらず、10年もたたずに家賃相場が変わったからと会社側が減額を求めたとしても、『当初の試算の誤りであり、事業者なら予測できる範囲だ』と反論することはできるでしょう。

協議の結果、会社側の言い分、減額の事情がやむをえないとなった場合、次は、どのくらい減額するか、自分のローン返済との兼ね合いでどこまで我慢できるのか、その中で一致点を探しながらで協議をしていくことになります。いずれにしても、契約時に説明された試算表などの証拠書類をきちんと保管しておくことが大切です」

サブリーストラブル2:30年一括借り上げ契約のはずが、10年で一方的に中途解約された
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トラブル1の事例から、この中途解約につながるケースも多くあります。

「賃料に関する協議が整わない場合は契約を解除できる」旨の、サブリース会社に一方的な中途解約条項が契約書に入っているためです。2~3年で解約を迫る例もあります。

サブリース勧誘時は30年一括借り上げと言いながら、契約書には10年契約と記載されていたケースも。その場合、「更新をするなら大規模修繕やリノベーションをしろ」と取引を持ちかける会社も少なくありません。

谷合弁護士「サブリースの短期の中途解約を防ぐには、契約前なら、最低契約期間を長めに設定する方法があります。国交省の『サブリース標準契約書』に出ている例では、『解約することができない期間』を定められるようになっています。

また、実際にサブリースを解約されてしまうまでにできることも。セカンドオピニオン的に、他のサブリース会社に変更した場合の収支、委託管理の場合はどうか、など他社の見積もりを取ることが大切です。それを元のサブリース会社の契約内容と比較して、言い分が正しいかをチェックし、再交渉することもできます。銀行との交渉も必要になる可能性もあるので、月額返済額の変更が可能か、協議をしてみましょう。

それでもサブリースを解約されてしまったら、他のサブリース会社に頼むしかありません。一番マイナスの少ないところに引き継ぎを検討しましょう。場合によっては、不動産の売却も視野に。その後、最初に勧誘したサブリース会社による不適切な説明に基づいて契約し損害が出たとして、民法上の損害賠償の請求を行うことの検討も可能です」

サブリーストラブル3:親が内容を理解せず契約。解約を申し出たら、高額な違約金を請求された

判断力の衰えた親が、サブリース契約を結ぶことを前提にしたアパートの建築請負契約を結び、子どもが建築途中で契約取り消しを求めるというケースは珍しくありません。サブリース契約に「正統な理由なく解約する場合は違約金が発生する」という条項が入っている場合もあります。

谷合弁護士「まず、サブリース契約を解約したい事情を明確にします。会社側の説明に問題があれば、説明が不十分だから解約したいと主張して、交渉をします。消費者契約法で『適切な説明がなく、不当な勧誘』として解約できる場合もあります。

ただし、消費者契約法は、消費者と事業者との契約で、消費者の利益を守るための法律。賃貸経営は事業であり、サブリース会社との事業者同士の契約だとする意見もあります。これに対して、相続したばかりの後継者など経営経験のない人が行う場合は、消費者と同じ立場として消費者契約法でカバーすべきという見方も。すでに賃貸住宅を何棟も所有する場合は該当しません。

この他、訪問販売や電話勧誘を受けて契約をした場合は、特定商取引法の消費者としての保護対象になる可能性も。契約から(書面交付後)8日以内であれば、クーリングオフ制度を使って契約を撤回することも可能です。

注意すべきことは、サブリース会社が何枚もの書類に押印させ、『説明を受けた』という確認書を紛れ込ませてサインさせて説明義務を果たした証拠を作成するケースがあること。書類をしっかりと読み、納得できない場合はサインしないことが大切です」

編集部より

業界団体の定めた倫理規定の遵守やサービス向上に務めるサブリース会社は多くあります。サブリースのメリットを最大限に活かすためには、信頼できる会社を選ぶことが大切です。オーナー自身がサブリースについて知識を深め、しっかり契約書を確認して、契約に臨むよう心がけてください。

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※この記事内のデータ、数値などに関しては2018年6月5日時点の情報です。

取材・文/木村 元紀 撮影/青木 茂也・豊島 正直 イラスト/加藤 愛里(asterisk-agency)

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