【家賃収入の確定申告と節税】大家さん専門税理士が解説!経費の計上・使い方で得をする
- 税理士
節税につながる税制
確定申告をきっかけに、見据えておきたい節税対策を紹介しましょう。例えば、次の掛金を全額控除できる制度は節税に有効です。
個人事業主のための退職金積み立て制度。掛け金の上限は月7万円、年間84万円。サラリーマン大家さんは加盟できない。
投資信託や公社債などで運用する個人年金。掛け金の上限は月6.8万円、年間81.6万円。運用益も非課税。サラリーマンも加入できる。
中小企業が取引先の倒産に備えるための制度。掛け金の最高10倍まで無担保・無保証で借入可能。掛け金は月20万円(総額800万円)。大家さんの場合、法人でないと経費計上できない。
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節税とはニュアンスが違いますが「ふるさと納税」を活用しているオーナーも少なくありません。控除上限内(課税所得金額の2%程度)で自治体に寄付をすると、2000円を超える金額が所得税・住民税から控除されます。自治体からの返戻品の分だけおトクです。
戦略的な経費の使い方
また確定申告の計算は、最終的な収支が決まる前の11月頃に推計して、年内に経費を調整するという方法で節税ができます。次回の確定申告作業は早目に取り組んでみましょう。経費として、繁忙期に向けた物件共用部の特別清掃、宅配ボックスや無料Wi-Fiなど人気の高い設備の導入、仲介管理会社へのお歳暮など、収益アップに直結する支出は意義のある投資です。
ところで、こうした説明をすると「経費を使うこと=節税」と勘違いする大家さんもいます。しかし、単なる経費の支出はキャッシュの減少にしかなりません。「経費を使うなら、節税の効果を把握した上で、戦略的に使う」というのが正解です。ここで大事なのが課税所得に応じた『税率(所得税+住民税。図表3)』です。
収支を予測し、経費を使えば税率を下げられそうな時に、その範囲内で経費を支出するのが妥当でしょう。
災害にあったときの経費の取り扱いについて
事業用と自宅で扱い方が変わる。事業用建物の修繕費は全額経費計上できる。自宅の場合は、罹災証明書を取れば雑損控除が受けられる。「損失額-総所得金額×10%」と「損失額のうち災害関連支出の金額-5万円」のうち、いずれか大きいほうが控除額の上限。「災害関連支出」とは、災害で滅失した住宅や家財などを取り壊したり、除去するために支出した金額など。なお保険金を受け取った場合は、非課税です。ただし、修繕費や雑損控除の損失額から保険金を差し引いて計上する。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2018年12月12日時点のものです。
取材・文/木村 元紀