【自主管理大家さんの『空室ゼロ』経営】成功の秘訣は「独自の入居者管理ノウハウ」
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大家業20年の経験をもとに入居率9割以上を誇るベテランオーナーの原さん。空室対策を中心に、入居者の心を掴むノウハウや入居者募集のアイデア、仲介会社とのかかわり方など安定経営を続けるための秘訣の数々を聞いた。
入居者に信頼感を与える、迅速な管理で空室防止
大阪へ5分、神戸へ15分。アクセス抜群で生活施設も充実し、人気が高い兵庫県尼崎市。この街で原さんは、大学卒業後に会社勤めを経た後、商売を手伝いながら、祖父の代から続く賃貸経営に携わってきたが、父の商売の廃業を機に専業大家になった。通算20年、専業化してから13年になる。現在、4棟28戸の賃貸住宅とコインパーキングを経営。今年3月からは岡山県で太陽光発電事業も始めた。
これらをすべて自主管理しているので、掃除から点検・補修、入居者管理などで毎日忙しい。
「常に危機感を持ってやっています。満室だから大丈夫と気を抜いたらダメ。1室空いたらショックを受け、心配になるのです。何百戸も経営していれば1室くらい空室が出ても気にならないでしょうが、私くらいの規模だと1室の空室は経営に大打撃ですから。この危機感が空室防止への行動へと自分を動かしているのです」と原さん。
開口一番こう語る原さんは、退去させないためにあらゆる手段を講じている。
「いろいろやっていると、そのうち1つか2つはヒットします。この方法なら絶対に満室になるという特効薬はありません」と原さん。
自主管理で不満ゼロへ!DIYで個性を大事に
退去の原因となりやすい「不満」を入居者に持たれないために、原さんが力を入れているのは、掃除や巡回を増やして普段から入居者と挨拶を交わし、話しやすい関係を作り、小さなことでも解決する姿勢を見せること。例えば「上階の音がうるさい」と愚痴を聞けば、間に入って上階にさりげなく注意を促す。「設備の調子が悪いので見てほしい」と言われれば、即修理する。「自転車を盗まれた」と聞いて防犯カメラも設置した。
「入居者は余程の事でない限り自分から電話をしてくることは少なく、不満をため込み退去を考えるようになります。不満は小さい内に対処し『大家さんはちゃんと解決してくれるので大丈夫』と思ってもらうことが大事なのです。管理会社に任せてしまうと、入居者の声が届きにくく早期解決のタイミングを逃してしまいます。自主管理にこだわるのはそのためです」と原さん。
現に築53~21年の全物件で新築当時からの入居者がいることからも、不満が少ないことがわかる。やむなく空室になった時には、修繕や改修を行うが、大がかりなリノベーション以外はDIYリフォームを実施し、コスト削減とオリジナリティを大事にしている。
物件の魅力を自らPR、インターネットも募集に活用
空室を早く埋めるために、入居者募集でも積極的に行動し、新しい技術やノウハウをフル活用。一般的なオーナーは、営業下手で仲介会社に自分の物件をうまくPRできない人が少なくない。しかし原さんは、退去が発生するとすぐに仲介会社に営業に行く。物件の魅力を満載した手作りのチラシや資料を渡すだけでなく、仲介会社向けの所有物件紹介サイトを用意。
自らデジカメで撮影した物件の写真や動画を分かりやすい紹介文とともに掲載している。仲介会社は豊富な写真をダウンロードして募集広告に転載することも可能だ。さらにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「フェイスブック」や「LINE」を営業マンとの連絡に活用するなど、時代にいち早く対応している。
「仲介会社からも、現地まで行かなくても物件の内容が見られると喜ばれています。セールスポイントもしっかりと宣伝しているので、数ある物件の中から自分の物件を選んで入居希望者に紹介してもらうのに大いに役立っていると確信しています」と原さんは胸を張る。
仲介会社との媒介契約も、専任ではなく一般にしている。インターネットの活用によって今まで縁のない会社ともつながり、早期の客付けに成功したそうだ。
やったことが成果に直結、賃貸経営の醍醐味を実感
原さんが採り入れている新しい対策やノウハウは、『がんばる家主の会』で勉強し、得たことも多いそうだ。
「貴重な情報提供やアドバイスを受けられ、ありがたいですね。この仕事は入居者や仲介会社など、人との関わりがあって楽しいですよ。それに、何もかも自分で考えて決めていき、喜びも苦労も自分の責任で背負っていくというのが、賃貸経営の醍醐味です」と原さん。
将来の法人化も検討はしているが、子どもたちがまだ小さいので後継を強いることはせずに、彼らには自分の生き方を自由に選択してほしいと考えているそうだ。その時までにはもっと魅力あふれる経営に発展していることだろう。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2017年1月10日時点のものです。
取材・文/皆元初香