国籍別こんなに違う!?外国人が日本での賃貸部屋探しで重視するポイントとは
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異国の地ニッポンでの部屋探し。生活習慣や物価の異なる国々からやって来る外国人は、どのような賃貸物件を好むのでしょうか? 管理会社、オーナー、外国人入居者という3者の立場から好まれる条件やポイントを紹介します。
東南アジア系外国人は、初期費用・家賃の安さを重視
様々な国籍の外国人入居希望者に日々接している、株式会社イチイ 国際部マネージャーの瀬谷徹平さん
外国人向け不動産会社のパイオニアとして、入居支援に取り組む(株)イチイ。国際部の瀬谷さんに外国人に好まれる部屋の特徴を尋ねたところ、最近来日が増えた東南アジア系外国人の場合は、「初期費用の安さ」。そして「ルームシェア可」の条件も必須だといいます。
「日本語学校に通うベトナム、ミャンマーなどの東南アジア系留学生の希望家賃は3~4万円。
しかし、都心で一人暮らしをするには厳しい金額ですから、ルームシェアをせざるを得ません。
ただ、受け入れてくれる物件は極めて少ないのが現状です。日本人には不人気の古い2Kの間取りでも、二人暮らしのルームシェアには向いていますから、空室対策にぜひ検討していただきたいです」と瀬谷さん。
一方、中国人や韓国人は、近年は一人暮らし派が主流。中国の経済成長に伴い、留学生も富裕層が増えて、高額の家賃を払う学生もいるといいます。
では、欧米系の外国人はどんな傾向なのでしょうか。
「一番に求められるのは部屋の広さで、一人暮らしでも30㎡以上の2DKを求める人が多いです。和室のみの物件は敬遠されますが、何室かあるうちの1室が畳でも気にならないようです」
設備に関しては、留学生の場合、数カ月から1年程で引っ越しをしたり、帰国するケースが多いので、家具家電付きが喜ばれます。
また、3点ユニットはアジア系には不人気だが、欧米系の人は狭くなければそれほど抵抗がないようです。
キッチンにもお国柄が現れます。中国人にはIHクッキングヒーターは不評。中華の炒め物が美味しく調理できるガスコンロの方が好まれる傾向です。また、自炊率が高いインド系ファミリー層は、3口コンロのシステムキッチンを望む人が多いそうです。
このように「外国人」といっても好みは多様なので、一括りの対策は無意味です。
その地域には留学生が多いのか、社会人が多いのか、どんな国の人が多く住んでいるのかなどの事前分析が必須です。
「例えば日本語学校に近いなら、留学生を対象に家具家電付きにするなど、ニーズを見極めた対策が必要です」と瀬谷さんは語ります。
バスルームはシャワーのみに改装し、家具家電付きに
築古アパートを改装し、2年前から神奈川県で留学生向けの女性専用シェアハウスを経営している廣田裕司さん
オーナーの廣田さんは、神奈川県の某大学近くにある築古アパートの3DKを3部屋の女性専用シェアハウスに改装し、2年前からアジア系留学生を受け入れています。
共有スペースとして8畳のダイニングキッチンを設け、冷蔵庫・電子レンジ・炊飯器・洗濯機などを備え付け、居室はベッド・机・本棚・洋服掛けなどの家具付きに。無料インターネットも導入したそうです。
「入浴はシャワーのみの人が多いので、バスタブは撤去して水道光熱費を抑えました。また、『日本のトイレはウォシュレット』と期待していた人が多く、不満が出たので、後から温水洗浄便座機能を追加しました」と廣田さん。
留学生の予算に合わせて、家賃は3万5000円~4万5000円+水道光熱費1万円に設定。1年の定期借家契約を結んでいます。
「大学が保証人なので安心ですし、今のところ滞納やゴミトラブルはありません。入居者しか出入りできない規則なので、パーティーで大騒ぎということもないです」留学生はSNSでつながっていて、口コミでの入居も多いそうです。
ルームシェア可、バス・トイレ別、学校へ近いことが条件
留学生として6年前来日し、現在都内企業で会社員として働くベトナム人女性、ファン・ティ・トゥアンさん
ベトナム人のトゥアンさんは、ベトナム人材に特化した就業・教育・生活事業を展開する(株)asegonia(アセゴニア)の社員。
来日当初は日本語学校の寮に住んだが、次はネットで部屋探しをしたといいます。「希望条件はルームシェア可で学校に近く、家賃が安めで、バス・トイレ別。3点ユニットは湿気がこもるのが苦手で」とトゥアンさん。
敷礼金なし・家賃6万円の築古ワンルームを見つけ、友人と同居した。現在築20年の2DKに妹と同居中とのこと。
部屋がきれいで日当たりが良く、会社に通いやすいことが選んだ決め手。トゥアンさんいわく、ベトナム人が好むのは畳よりフローリングで、日本式の押入れは不人気です。
「押入れは何となく湿気で黴びた印象で、衣類は入れたくないです。クローゼットの方がいいですね」
日本食に慣れない間は自炊が多く、キッチンコンロは2口が喜ばれるそう。また、1階は防犯面から、女性にはやはり敬遠されがちです。
「以前1階に住んでいた時、干した衣類を盗まれる被害があり、すぐ引っ越しました」と振り返りました。
【国籍別】留学生&若手社会人が部屋探しで気にするポイント
国によって文化はさまざま。部屋探しの希望条件も異なります。
下記では主に3つのタイプを紹介。自分の物件の周辺ニーズを把握して、空室対策の参考にしてみてください。
・初期費用は安く、家具家電付きがいい
・部屋の広さは・古さはあまり気にしない
・家賃を安くするためにルームシェアがしたい
・バス・トイレ別がいいが、シャワーのみでもOK
・多少家賃が高くてもいいから、一人部屋希望
・IHよりガスコンロがいい
・部屋の日当たり重視
・バス・トイレは別がいい
・部屋の広さ・同線・周辺環境重視
・キレイなら築古でもOK
・一人暮らしでも30平米以上の広さがほしい
・3点ユニットでもいいが、狭いのは嫌
国籍に関わらず共通傾向にある部屋の好み
国籍にかかわらず、下記の条件は外国人入居者に共通した入居条件です。
・初期費用が安い
・家具家電付き
・2~3人でのルームシェア可
・フローリングの洋室、押入れではなくクローゼット
・バス・トイレ別
・日本語学校や留学先の大学、職場から近い(駅から多少遠くてもいいが、電車移動は少なくしたい)
※2019年3月時点の取材による傾向で、個人の好みとは異なります。
周辺のニーズを把握することが大切
今回は実際にお話を伺い、国籍ごとの違いやポイントを紹介しました。
今後も外国人需要はなくなることはないと思いますので、
周辺に住んでいる外国人のニーズを把握して、有効な空室対策をしましょう!
※この記事内のデータ、数値などに関しては2019年6月4日時点の情報です。
取材・文/菱沼 晶