「民泊新法」がついに始動!気になる中身をわかりやすく解説

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「民泊」のルールを定めた住宅宿泊事業法案が閣議決定された。賃貸オーナーにとって、民泊の規制緩和はビジネスチャンスとなるのか?民泊新法に詳しい弁護士の谷口さんに新法の中身を伺った。

弁護士法人 御堂筋法律事務所 東京事務所 弁護士 谷口和寛さん

東京大学法科大学院卒業。2014年5月~2016年4月、任期付公務員として観光庁観光産業課の課長補佐。旅行業、宿泊業、民泊などの観光産業の法務を担当。「民泊サービスのあり方に関する検討会」の事務局、「イベント民泊ガイドライン」、「OTAガイドライン」等の企画・立案を行う。


新法による規制緩和で民泊事業の健全な普及を

日本を訪れる外国人観光客が劇的に増え、宿泊施設の不足を招いている。そこで住宅の空き部屋に旅行者を有料で泊める「民泊」のルールづくりが進み、民泊を全国で規制緩和する「住宅宿泊事業法案(民泊新法案)が今年3月に閣議決定された。政府はこうした規制緩和によって民泊を広げ、訪日客を2020年までに4000万人に増やす目標を掲げている。

「2014年の夏頃から具体的な検討が始まり、議論を重ねてまいりましたが、ようやく新制度の概要が明らかにされました」

と観光庁で民泊の法務立案を担当していた弁護士の谷口和寛さんは語る。

現在、民泊は東京都大田区や大阪府などの国家戦略特区で認めらている他、旅館業法に基づいた「簡易宿所」としての営業許可を受ければ運用できる。これに「民泊新法」が加わり、3つの制度が並立したわけだ。

「これまでは無許可で営業する民泊事業者も多く、近隣住民とのトラブルも多発していました。施行は来年になると思いますが、新法でヤミ民泊は難しくなり、健全な民泊サービスの普及につながるでしょう」

民泊新法では、ホスト(住宅宿泊事業者)、代行業者(住宅宿泊管理業者)、Airbnbのようなプ ラットフォーマー(住宅宿泊仲介業者)のそれぞれに対して規制を定めている。この記事では、所有する住宅を貸し出して民泊を運営したいと考える賃貸オーナーの視点に立って、ホストへの規制・義務について紹介していきたい。

 

年間宿泊数は上限180日都道府県に「届出」が必要

民泊新法が施行されると、ホストは都道府県知事(保健所設置市はその首長)に「届出」をすることで、旅館業法の許認可がなくても民泊運営が可能となる。

「届出にあたっては、商号、名称または氏名、住所、物件の所在地、管理業務を委託する住宅宿泊管理業者の情報、住宅の図面などを一緒に提出する必要があります。これらの手続きはインターネットでもできるようになると思います」

なお、虚偽の届出を行った場合は、6カ月以下の懲役・100万円以下の罰金が科される可能性がある。また、届出を行わずに住宅宿泊事業を行った場合は、旅館業法違反として、旅館業法に基づく罰則等の対象となる。

念頭に置いておきたいのは、1年間で提供できる営業日数が180日以内に限られることだ。また、届け出た住宅の部屋数が省令で定める居室数よりも多い時、宿泊者が滞在する際に家主が不在となる場合(買い物等による短時間の不在は除く)は、民泊の運営業務を宅宿泊管理業者に委託しなければならない。

ただし、自宅が隣接しているケースなど、ホストが自身の生活の拠点として使用している住宅との距離や、その他の事情を勘案した結果、委託の必要がないと認められる場合もありそうだ。

一方、宿泊者との仲介や契約の締結を他者に依頼する場合は、住宅宿泊仲介業者か旅行業者に委託することが義務づけられている。

運営にあたって、ホスト(住宅宿泊管理業者がいる場合は同者)に課せられる業務も知っておこう。各部屋の床面積に応じた宿泊者数の制限、清掃などの衛生管理、非常用照明器具の設置、避難経路の表示、火災・災害時の宿泊者の安全確保(消防設備については特に 規定なし)、地域住民からの苦情や問い合わせに対する適切かつ迅速な対処、宿泊者名簿の備え付け、 標識の掲示などが求められる。

「また、周辺地域の住民に前もって民泊運営の許可を取る必要は法案上はないようですが、誠実な対応が求められるのは当然でしょう」

“二毛作”や特区民泊なら180日規制に縛られない

貸付オーナーにとって最も気になるのはやはり年間営業日数の180日規制だろう。最大でも年間の稼働率が50%にとどまるため、空室対策に有効とはいえ、採算性を考えると悩ましい。そこで、これを乗り越える選択肢として、マンスリーマンション賃貸サイトに物件を掲載し、民泊の繁忙期以外の期間を短期賃貸として貸し出す”二毛作”を提案する会社も登場している。

「民泊新法は特区民泊とは別物なので、180日規制に縛られない特区物件を作れば、365日営業しても問題はありません。逆に特区に所在していても最低宿泊日数6泊7日(大田区)といった条件をクリアするのが難しかった物件では、新法が助け船になるケースも出てくるでしょう」

自治体の規制も気になるところだ。例えば京都市では、新法施行後も条例で「住居専用地域の集合住宅での民泊を禁止する」という方針を打ち出している。

「こうした動きに注意は必要ですが、新法が施行されれば民泊事業への参入ハードルが格段に下がることは間違いありません」

民泊に関心のある方は参入のタイミングを逃さないよう、今後の動向をしっかりと見守りましょう 。

民泊新報上のオーナーへの主な規制・義務

① 年間提供日数上限は180日

年間の提供日数は180日以下。180日を超えた場合は無許可の旅館営業として、指導、処分、罰則の対象となる。

② 都道府県への届け出

民泊ホストは都道府県知事に氏名、住所、物件の所在地、委託先の住宅宿泊管理業者、図面等の届け出が必要。

③ 管理会社への管理委託

部屋数が一定数を超えたり、家主不在型の民泊の場合は、運営業務を住宅宿泊管理業者に委託する必要がある。

④ 宿泊者の仲介は仲介会社へ委託

宿泊客との間の仲介を依頼する場合は、旅行業者または住宅宿泊仲介業者に依頼しなければならない。

⑤ 住宅宿泊事業の標識掲示

届出住宅ごとに公衆の見えやすい場所に、国が定めた様式の標識を掲げなければならない。

⑥ 提供日数を登録行政庁に報告

届出住宅の民泊提供日数を定期的に報告する義務があり、虚偽の報告を行った場合には30万円以下の罰金。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2017年6月5日時点の情報です。

取材・文/菱沼 晶 撮影/工藤 朋子 イラスト/黒崎 玄

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