建て替え・売却・修繕…築古物件の未来を決める3つの選択肢 ― 相続を見据えた賢い判断軸とは?
築年数が経過した賃貸住宅を何もせず「そのまま」子世代に相続させると、重荷を背負わせてしまうことも少なくありません。次世代に優良な資産としてのこすために、それぞれの選択肢のポイントを踏まえ、自分に合う方向性を考えてみましょう。
建て替えか売却しかない?修繕で活かす道も
賃貸住宅を建ててから30年、40年と時が経つと、避けられないのが建物の老朽化であります。外壁や屋根の劣化、給排水管や設備の不具合、耐震性能への不安……。さらには家賃水準の下落や、長期的な空室も起こります。
こうした問題が重なると、オーナーの負担は大きくなり、「建て替えるしかない?」「いっそ手放すべきだろうか」と悩む人も多いでしょう。
しかし、築古であっても駅近や生活利便性など立地面で大きな強みを持ちながら代々守ってきた土地もあります。建て替えや売却だけが解決策ではなく、修繕によって再生できる場合も大いにあるのです。
大切なのは、「相続」という視点を忘れないことです。自分の代では何とか維持できても、次世代に引き継いだときに重荷にならないか、相続税や管理負担を考慮して、早めに方向性を定めておきましょう。
自分に合うのは?未来を考える3つの主な選択肢
オーナーの選択肢として、大きく3つの道があります。それぞれのメリットと注意点を知り、自分の状況や目的に合う道を専門家の意見も踏まえて選びましょう。
今後を考える判断軸
| ● 相続・承継 |
| 家族や後継者の意向を確認し、承継後に負担を残さないための方向性を共有する |
| ● 物件力 |
| 老朽度合いや耐震性、配管・設備更新の必要性を把握し、再生可能性を見極める |
| ● エリアの将来性 |
| 立地条件や周辺環境の変化、将来の需要動向を踏まえ資産価値の行方を検討する |
| ● リスク要因 |
| 資金回収の見通しや長期収益性を確認し、無理のない賃貸経営計画を立てていく |
①「建て替え」将来性を高め安定収入をめざす!
| メリット |
| ●新築で競争力が確保でき、長期安定経営が可能 ●相続税評価額の低減効果を引き続き得られる |
| 注意点 |
| ●初期投資が大きく、融資や資金計画が不可欠 ●需要の変化で収益が揺らぎ、空室リスクも伴う ●管理・維持のコストがかかる |
| 向いているオーナー |
| ●相続人に収益性の高い資産を残したい人 ●代々の土地を守っていきたい人 ●好立地、安定需要が見込める土地の所有者 |
老朽化した物件を建て替えることで、最新の耐震基準を満たし、断熱性能や設備も一新できます。結果として、入居者に選ばれる競争力の高い物件へと生まれ変わり、長期的な安定経営につながります。
また相続対策としても効果的。現金や預貯金は額面そのままが相続税評価額となりますが、賃貸住宅を建築することで建物の相続税評価額は圧縮され、土地評価の減額効果も引き続き享受できます。
一方、建築には多額の資金が必要で、金融機関からの借り入れが不可欠。将来の賃貸需要や返済計画を見極めないと、子世代に負担を残すことになります。
② 「売却」現金化や組み換えで未来に備える!
| メリット |
| ●現金化で分割がしやすくなり、“争族”防止になる ●維持・管理や空室リスクから解放される ●資産を組み換えれば、分散投資・収益改善が図れる |
| 注意点 |
| ●不動産市況により売買価格が変動する ●手放すと継続的な賃料収入は得られない |
| 向いているオーナー |
| ●子どもが賃貸経営を引き継がない人 ●複数の相続人にスムーズに財産を分割したい人 ●立地が賃貸経営に向いていない、将来性がない場合 |
相続の場面では、「不動産は分けにくい」という問題が発生しがち。相続税の納税資金が足りないこともあります。その点、売却して現金化しておけば、分割もしやすく、納税にも充てやすくなります。
また収益性の低い築古物件を売却して、その資金で都心部の収益物件や区分所有マンションなどを購入(組み換え)し、収益力の改善やリスク分散を図る方法もあります。
ただし、売却のタイミングには注意したいところ。市況が良い時に高値で売れることが望ましいですが、修繕状況や入居率によって価格は大きく変動します。複数の査定を受けるのはもちろん、市場環境や税制の動向を踏まえた判断が賢明です。
③ 「修繕」立地を活かし、コストを抑えて収益改善!
| メリット |
| ●建て替えより少ない投資で相続税圧縮効果を継続できる ●入居者ニーズに応じた改修で収益向上を期待できる ●建物寿命を延ばし、売却時の評価も高められる |
| 注意点 |
| ●老朽化の度合いにより、効果が限定的な場合もある ●耐震性や構造面での制約が残る ●将来的に建て替えとの二重投資になる恐れがある |
| 向いているオーナー |
| ●当面は手持ちの物件で賃貸経営を続けたい人 ●大規模な投資には踏み切れない、資金が用意できない人 ●子どもが賃貸経営を引き継いでくれる人 ●短い工事期間で、早く収益を改善したい人 |
物件を残せて、建て替えよりも費用が抑えられる点で、修繕は現実的かつ有効な選択肢と言えます。外壁や屋根の大規模修繕、室内のリフォーム、設備の交換などを行えば、見た目や機能が刷新でき、競争力も高められます。
さらに修繕費は経費計上が可能です。改修で入居率が高まり、家賃水準を維持できれば、承継後も安定した賃貸経営を継続しやすくなります。
ただし、修繕にも限界があります。建物構造の老朽化や立地の需要を含めて活かし続けることができるか、慎重に検討しましょう。
まずは選択肢を捨てず、相談からはじめよう
建築・売却・修繕。どの道を選ぶにしても、それぞれにメリットと注意点があります。重要なのは、最初から選択肢を狭めないことです。「もう建て替えるしかない」と思い込んでいる築古物件で、売却や修繕の方が合理的な場合もあります。逆に、修繕で延命するより建て替えた方が、将来の収益性や相続税対策の面で有利なことも。
判断を誤らないためには、まずその道のプロに相談することが欠かせません。不動産会社、建築会社、管理会社、修繕会社、税理士など、それぞれの立場から異なる視点のアドバイスを受けることで選択肢の幅が広がり、自分に合った方向性が見えてくるはずです。
相続を控えた賃貸オーナーにとって、築古物件の扱いは避けて通れない課題です。次世代の重荷にしないためにも、今こそ立ち止まり、未来の賃貸経営を考えましょう。選択肢を広く持ち、納得できる答えを見つけることが、家族と資産を守る最善の一歩となります。
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※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2025年10月1日時点のものです。
取材・文/藤谷 スミカ
ライタープロフィール
藤谷 スミカ(ふじたに・すみか)
同志社大学文学部英文学科卒。広告制作プロダクション、情報誌出版社を経て、フリーランスのコピーライターとして30余年。ハウスメーカーの実例取材記事、注文住宅、リフォーム、土地活用に関する情報誌の記事、企業PR誌の著名人インタビュー記事、対談記事、企業単行本の執筆等を手がける。

















