結果につながる本気の空室対策|最新の設備・条件ランキングから入居者ニーズをひも解く
空室率が高まる理由は、「部屋探しをする入居希望者から選ばれない」と「既存の入居者が不満を持って出ていく」の2点です。入居者ニーズは、その裏返し。入居者の“きもち”を知らなければニーズへの対応はできません。コロナ禍がもたらした変化を察知し、入居者の変わらぬ本音をつかんで、迷わず空室問題に立ち向かいましょう。
入居者の“きもち”を反映した人気設備・条件ランキングを空室対策に活かす
入居者ニーズは、技術の進化や価値観の多様化につれて少しずつ変わっていきます。時には、想定外の事態がもたらす激変も体験するでしょう。
「立地が良ければ安泰」と慢心していたオーナーの肝を冷やしたのが、今回のコロナ禍が招いた日常の揺らぎ。23区の18m2以上〜30m2未満のシングル物件は、家賃下落に直面しています(※マンション賃料インデックス 公表資料(2021年12月21日公表)。過去数十年経験しなかった事態といえます。
入居者の“きもち”は、今どこに向かっているのか、最新事情を映し出す以下のアンケートを基にひも解いてみましょう。
ウィズコロナで人気の高まった設備・条件ランキング
インターネットは人気設備からインフラに格上げ!空室解消の有効手段に
ネット通販やオンラインゲームの普及で「無料インターネット」と「宅配ボックス」は、何年も前から不動の人気設備でした。そこに割って入ったのが「高速インターネット」。
周知のように、テレワークの急激な浸透で「おうちオフィス」というキーワードが登場。オンライン授業も広がり、「家なかスクール」も生まれました。「有料でもいいから通信速度と接続の安定性が大事」という声もあり、内見時に速度測定アプリで回線のスピードを測る光景も珍しくなくなりました。
仕事・学習・日常生活が混在する“暮らしの箱”にとって、ネットは「人気設備」から「必須のインフラ」に格上げされ、通信品質が住宅の基本性能の一つになったといえるでしょう。
部屋数と広さの人気がアップ、おうち時間の充実も根強い
ネット環境と並んで順位がアップしたのは、「ワークスペースを確保できる“間取り”と“広さ”」です。コロナ禍前、部屋の広さは「妥協してもOKランキング」のトップ3に入っていました(※アットホーム「妥協OKな条件ランキングBEST10」2020年2月28日)。
希望条件の優先順位が入れ替わっています。働き方・学び方が変わった以上、暮らし方が変わるのも必然の結果ではないでしょうか。
また、「プライベートな時を過ごす空間/オフタイム重視」だった住まいに、パブリックなオフィスや学校が入り込み、「機能的で集中できる空間/オンタイム併用」というニーズが加わりました。
もちろん、住まいにくつろぎを求める従来型のニーズも健在。広いリビング、日当たり、キッチンの充実度、ゴミ出しの便利さの人気は根強くあります。
フルタイムで在宅勤務をする会社員は、いまだ大都市圏でも平均で3分の1以下となっています。通勤・通学の利便性を優先する層がまだまだ主流のため、在宅と通勤のニーズを踏まえた両面作戦が必要になるでしょう。
いずれにしても「おうち/家なか」を重視する “きもち”を深刻に受け止めないと、早晩、入居者から見放されてしまうでしょう。現在の家賃水準以上を保ち、空室を増やさないための具体策は以下の記事で紹介していきます。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2022年3月4日時点の情報です。
取材・文/木村 元紀 イラスト/アサミナオ