何が、どう変わる?約40年ぶりに改正された「相続法」の改正ポイント

  • 相続、節税、保険

平成30年7月、相続法が約40年ぶりに大きく改正されました。今回の改正は相続にどのような影響を及ぼすのでしょうか?久保原弁護士による今回の法律相談Q&Aは特別編として、相続法の改正ポイントについて解説していただきました。

九帆堂法律事務所 弁護士 久保原 和也

2007年、京都大学大学院法学研究科修了。同年、司法試験合格。2008年、九帆堂法律事務所設立。


最高裁で勝訴した更新料裁判の大家さん側弁護団の首都圏担当。更新料裁判では、首都圏で唯一の弁護団所属弁護士としてさまざまな情報を発信。


相続法改正の概要

平成30年7月6日、民法他相続法の改正法が成立しました。民法の相続分野は昭和55年以来、実質的に大きな見直しはありませんでしたが、その間に高齢化がより進展するなど、社会環境は大きく変わりました。

そこで社会の変化に対応するため、約40年ぶりの今回の改正では多岐にわたる改正項目が盛り込まれました。主な改正点をご紹介します。

「配偶者居住権」の新設(2020年4月1日施行)

例えば、自宅(3000万円)及び預貯金(3000万円)を残してAさんが死亡し、相続人が妻と子一人だった場合、妻と子の法定相続分は各50%(妻3000万円、子3000万円)です。

この法定相続分で遺産分割をする場合、妻が自宅に住み続けるために自宅の所有権を相続すると、預貯金はすべて子が取得することになり、妻は生活資金を相続できなくなります。これを改善するため、配偶者居住権が新設されました。

これによれば、子は母(Aの妻)の居住権という負担付きの自宅所有権(所有権は3000万円ですが、負担付きなので評価が下がります)を取得します。仮に負担付き所有権の評価が2000万円だとすれば、現金は1000万円取得することになります。

一方、妻は居住権1000万円(所有権と負担付き所有権の評価の差額)と、現金2000万円を相続できることになります。自宅に住み続けながら、しかも生活資金も相続できるようになるわけです。被相続人の遺言内容や遺産分割の方法に選択肢が加わることになります。

 

遺産分割に関する見直し等(2019年7月1日施行)

1)自宅の生前贈与の尊重

配偶者の老後の生活保障のために、自宅を配偶者に生前贈与や遺贈(遺言によって法定相続人または第三者に対し、無償で遺産を贈与すること。)を行うことや、持分を贈与して共有にするということがよく行われます。

しかし、現行法のもとではこれらは原則として遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱われるため、相続時には調整され、配偶者が最終的に取得する財産額は結果的に贈与等がなかった場合と同じになってしまいます。

これでは遺贈や生前贈与をした趣旨が活きないため、今回の改正では婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地(居住用不動産)を遺贈又は贈与した場合については、原則、特別受益を受けたものに含まなくてよいとされました。

2)預貯金債権の仮払い制度

相続された預貯金債権は、相続人の生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などのために引き出すことが必要です。しかし、平成28年12月19日の最高裁大法廷決定では「相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれるから、共同相続人による単独での払い戻しができない」と判断されました。

そこで今回、必要な資金需要に対応できるよう、遺産分割前でも仮払いができる制度が導入されました。具体的には、遺産に属する預貯金債権のうち、「口座ごとの預貯金額×3分の1×払い戻しを行う相続人の法定相続分」は単独での払い戻しが認められます(同一の金融機関に対する権利行使の上限は150万円)。

それを超える場合でも、仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになります。

自筆証書遺言に関する見直し

1)自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日施行)

遺言は自筆で作成することもできます。しかし、自筆証書遺言は遺言書の全文を自書する必要があり、作成は容易ではありません。

そこで遺言書のうちの財産目録は各頁に署名押印をすれば、パソコン等で作成した目録や、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付することができると改正されました。

2)法務局における遺言書の保管制度(2020年7月10日施行)

現在、自筆証書遺言を預かってくれる公的機関はなく、紛失や改ざんの恐れがありました。今回の改正では、法務局が自筆証書遺言を保管する制度が新設されました。

遺留分制度に関する見直し(2019年7月1日施行)

遺留分(被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して法律上確保された相続財産の割合。)が侵害された場合、現行法では遺留分侵害の限度で贈与又は遺贈された物件(持分)の返還請求ができるとされています(遺留分減殺請求)。その結果、遺留分減殺請求によって一部の持分が返還され、共有状態が生じます。

しかし、共有状態では目的財産を特定の人に与えたいという遺言者の意思が実現できなくなる恐れがあり、権利関係が複雑になります。

そこで、遺留分減殺請求で生ずる権利は物件の返還ではなく、遺留分侵害額に相当する金銭債権になると改正されました。金銭債権することで共有関係が当然に生ずることを回避できるようになります。

また、この金銭債権は裁判所に対し、分割払いの許可を求めることもできるようになります。

相続人以外の寄与分が金銭で請求可能に

子の妻のように相続人以外の親族は、どんなに被相続人の介護に尽くしても相続人ではないため、被相続人の死亡に際し、相続財産の分配にあずかれないのが現行法でした。

しかし、被相続人の子が先に死亡しており、その妻が被相続人の介護を無償で行っていた場合、介護をしていない他の子が相続を受けられるのと比較すれば実質的に不平等な状態が生じます。

そこで、相続開始後に相続人に対し、金銭(特別寄与料)の請求ができると改正されました。

今回の相続法の改正は相続のあり方を大きく変えるものです。すでに遺言をされている方も、内容を見直すことが必要かもしれません。

※この記事内のデータ、数値などに関しては2018年12月12日時点の情報です。

イラスト/黒崎 玄

スムスム君

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