自殺や孤独死が起きてしまったらどうする?事前の対策も紹介
賃貸経営は常にリスクと隣り合わせですが、最悪のリスクは自殺・孤独死・殺人事件などの 事件・事故かもしれません。自分の所有する物件で起きてしまったらどうすればいいのか? 事前に対策を行っておくことで、孤独死などのリスクを下げることもできます。
発生を予め想定、ダメージ軽減のための保険や日頃の備えが大事
自殺、孤独死、殺人事件などが発生したら、まず警察へ連絡します。しばらく連絡が取れない入居者の部屋から異臭がするといった場合も同様です。後々のトラブルを避けるためにも、警察官の立会いのもとでオーナーが鍵を開け、警察官に部屋の中に入ってもらいます。
例えば入居者の上司から、「社員と連絡が取れないので部屋で倒れていないか確認してもらえないか」などと依頼された場合、インターホンを押しても反応がないなら、躊躇せずに警察官を呼んで部屋の鍵を開けましょう。もしかしたら瀕死の入居者の命を助けられる可能性があるからです。
部屋の中に異常がなければひと安心ですが、残念ながら遺体が発見された場合は、警察は現場検証を行い、遺体を収容、事件性の有無を調べます。オーナーは、遺族や連帯保証人への連絡です。お悔やみの他、遺品の引き取り依頼、補償など、以降は交渉事が山積みです。
孤独死の発見が遅れて遺体が腐乱した場合、部屋には大きなダメージが残り、特殊清掃や遺品整理などの専門会社に依頼する必要が生じます。痕跡や臭いを取り去るためには、床や内壁、天井などを全て撤去し、スケルトンの状態で一定期間放置しなければならない場合もあります。
リフォームや賃料の値下げで苦しまないように事前にできる対策とは
リフォーム工事を依頼する際は、法外な見積もりを出してくる会社もあるので複数の会社に声をかけましょう。リフォーム費用はケースによりますが、状態がひどければ百万円を超えることもあります。最悪の場合、遺体発見からリフォーム完了まで半年近くかかる場合も。その間、家賃収入は途絶える上、周囲の入居者が退去してしまうこともあります。
また入居者募集を再開する際に、それが自殺や殺人事件であれば、次の入居者に告知する義務が生じます。たとえ自然死・病死であっても、発見が遅れた場合にそれを隠していると、同様に告知義務違反などに問われ、賠償請求される可能性もあります。当分は相場の賃料では募集できないことも覚悟すべきです。
では、事前にどのような対策ができるのでしょうか。近年では、賃貸住宅内で人が死亡した時にオーナーを助けてくれる保険を、一部の損害保険会社や少額短期保険会社が出しています。原状回復費や遺品整理費に加えて家賃の損失まで補償してくれるものや、補償範囲を家賃だけに絞ったものなどがあるので、調べてみるといいでしょう。
さらに、入居者が高齢者の場合は、保証人や親戚などの緊急連絡先に変更がないか、必ず年に1度は確認すべきです。もしもの時に連絡がつかなければ、事後の全ての負担をオーナーが背負うことになりかねません。高齢者が孤独死しても発見が遅れないよう、センサーなどによる見守りサービスを導入するオーナーもいます。
また、あるオーナーは「コミュニケーションが事件・事故の予防につながる」 として、入居者との積極的な交流をはかっているそうです。入居者がオーナーに気軽に相談できるような環境があれば、事件・事故を防ぐ確率も上がるのではないでしょうか。
文/木村 元紀