賃貸アパート・マンションは自主管理でも顧客対応は可能?外注のコツとは
「自主管理は空室率が高い?」――必ずしも正しいとはいえません。管理委託費を節約して入居者満足度を高めることも可能です。
各種業務代行サービスにアウトソーシングして、管理の質を高めて入居率をアップさせましょう。
賃貸管理もアウトソーシング(外注)の時代?自主管理との使い分けも
自主管理オーナーは2通りあります。1つは、賃貸管理会社という形態がない時代からアパート経営を行っている地主層に多いタイプ。不具合や故障はその都度、出入りの工務店などに依頼し、集客を任せている駅前不動産会社に入居者対応やその他の管理雑務を無料サービスでやってもらう、いわば「成り行き的な自主管理」です。「昔ながらの大家業の延長としての自主管理」といってもいいかもしれません。
このタイプは、要求が厳しくなっている最近の入居者への対応がおろそかになり、建物設備のメンテナンスも後手後手に回りがちで、空室が悪化しているケースが少なくありません。大家さん自身が高齢化してやる気を失っていることも多いため、賃貸管理専門会社への委託管理に切り替えるほうが望ましいでしょう。
もう1つは、意欲的なサラリーマン大家さんに多いタイプ。当初は管理会社に委託していたものの、管理業務がずさんな会社に当たってしまい、なかなか空室が改善されないことに業を煮やして、自分自身で動くことに決めるという「積極的な自主管理」です。家賃収入の3~5%が相場といわれる管理委託手数料に見合う業務が行われていないと判断したもので、「ビジネスとしての自主管理」ともいえます。
本業が忙しいサラリーマン大家さんは、すべての管理業務を自分でこなすことは現実的ではありません。オーナー自身は賃貸経営者として、要所要所での意思決定を中心に行い、個別の管理業務はそれぞれの専門会社にアウトソーシング(外注)するわけです。これを「分離発注」といいます。
最近は、管理関連業務ごとに専門分化し、代行サービスを展開している会社が増えていますから、ほとんどの管理業務は外注できます。以下にその一例を挙げておきましょう。
入居者募集
複数の不動産会社の仲介店舗を訪問し、資料や手作りのチラシを持参して客付けを直接依頼するオーナーが増えています。
また、オーナーと入居希望者がインターネットで直接取引することをサポートするマッチングサイトを利用すれば、大家さんは1か月分の仲介手数料だけでそれ以上の広告料が不要なため、経費を抑えられます。入居者も仲介手数料が不要です。
さらに、複数の仲介会社への一斉配信や入居者との対応をスマートフォンで行えるクラウドサービス(ネット経由で各種業務サポートを受ける)なども登場しています。
家賃収納代行・滞納保証
連帯保証人を付ける代わりに機関保証をする会社が、入居者の審査、家賃の収納代行、滞納時の督促、仮払いなどを行うサービス。家賃収納のカード決済に対応する会社も増えています。
入居者トラブル対応代行
専門のコールセンターで24時間365日、入居者からのクレーム・相談を受け付け、緊急の場合は一次対応の駆け付けサービスを行うもの。実は、管理会社がこのような「24時間駆けつけサービス」を専門会社に外注をしているケースも少なくありません。
原状回復・残置物処理費用の保証
滞納督促代行に加えて、明け渡し訴訟などの法的手続き費用、原状回復費を入居者が拒否した時の費用、夜逃げなどで残置物があった時の処理の費用などを保証するサービス。高齢者の孤立死保険に対応するケースもあります。
清掃・保守点検代行
共用部の日常清掃から保守点検まで、オーナー自身が必要なサービスメニューのみを選んで契約できるサービス。管理業務一式を丸ごとパッケージで委託する場合に比べて、質が高く、効率化できます。
経理事務代行
請求書や領収書を送るだけで月次決算書や年次決算書を作成してくれるサービス。税理士の顧問料よりもリーズナブルです。
こうしたアウトソーシングを必要に応じて取捨選択した「自主管理+分離発注」で、少しでも入居者満足度を向上できるようにチャレンジしてみましょう。
文/木村 元紀