【空室解消の秘訣】外国人・高齢者・ペット可は怖くない
- 外国人
- 高齢者
- ペット共生
リフォーム費用をかけたり家賃を下げたりしなくてもできる空室対策を知っていますか。それは「入居者の募集条件」を見直すことです!意識の変革と少しの手間をかけるだけで、満室経営も可能になってしまう、とっておきのノウハウをご紹介します。
募集条件を緩和して門戸を広げる
空室対策といえば、コストと時間をかけたリフォーム・リノベーションか、家賃値下げや敷金・礼金の引き下げなどが代表的だ。リフォーム・リノベーションは、施工費用や時間がかかるため、余裕のあるオーナーには適している。
また、家賃の値下げや敷金・礼金の引き下げは、物件の価値を下げてしまう恐れがある。そのため、「空室対策は多額のコストをかけずに行うことができない」というのが一般的なイメージだ。
実は、一つの空室対策がある。それは、リフォーム・リノベーションや家賃を下げることなく、審査にかかわる「入居者の募集条件」を見直すことだ。
これまでは「家賃滞納をせず、トラブルを起こさない優良入居者を入れてほしい」というオーナーの希望が強いせいか、不安な入居者の入居を拒否するという傾向がある(図表1)。 こうしたユーザー層を門前払いせずに、積極的に受け入れるようにするのである。
埋もれたマーケットを発掘 新たなサービスで不安解消
賃貸住宅の主要ターゲットだった18歳から30代までの生産年齢人口が急激に減少し、賃貸マーケットが長期的に縮小することが避けられない中で、入居者を確保するには、意識の変革が必要だ。
逆に言えば、ちょっと頭を切り替えるだけで、収入減少を招かず に空室を埋められる可能性がある。これまで埋もれていた新たなマーケットを発掘することができるのだ。
高齢者世帯の増加は周知の通り。在留外国人も一時期減少していたが、ここ数年は増加傾向に転じ、2015年は223万人と過去最高に達した(法務省統計)。
ペットについては、20代から60代 までの4割以上の人は犬か猫を飼いたいと思っているなど、ペット可物件へのニーズは高い(ペットフード協会調べ)。
もちろん、多くのオーナーが不安を抱えているために、踏み出せないでいるようだ(図表2)。
しかし、こうしたハードルは、受け入れ態勢を整える管理会社の増加や、新たな民間サービスを利用することによって乗り越えられるようになっている。そこで今回は、各分野に詳しい賃貸仲介管理会社に取材して分かった、そのノウハウをご紹介しよう。
Part1 外国人
株式会社イチイ 代表取締役・公益財団法人日本賃貸住宅管理協会理事・国際交流研究会長 。著書に、『「外国人向け賃貸住宅」ノウハウと実践 』(週刊住宅新聞社)などがある
外国人対応の管理会社 外部サービス利用で安心
「外国人というだけでNGというオーナーは未だにいます。しかし、韓国系の財閥系企業に勤めるビジネスマン、日本で学ぶ留学生、大学病院勤務のインド系の医師など、身元もしっかりして支払い能力もある優良入居者が多いのも事実です。賃貸業界の中でも、なるべく面倒なことには関わりたくないという風潮は残っていますが、徐々に、前向きに外国人対応に取り組む管理会社は増えつつあります」
こう語るのは、30年以上前から外国人向け賃貸住宅の普及に取り組んできた(株)イチイの荻野さん。まだまだ少数派ながら、外国人社員を雇用したり、外国語対応のホームページを作って募集している管理会社も出てきた。
荻野さんいわく、「トラブル対応は決して容易ではなく、専門的なノウハウもいる」が、多くの場合は、事前の説明不足による入居者の誤解や無知が原因のケースだという。外国人の審査や対応ノウハウを持ったところに頼めば、契約前に生活習慣やマナーの説明をきちんと行う。トラブルが発生したとしても、外国人スタッフがていねいに対応する例もあるという。
また「家賃滞納への不安」を持つオーナーも多いが、外国人専門の保証会社、財団法人による外国人居住支援制度、公的機関の留学生サポートなど、最近では多様なサービスや制度も揃ってきているので、それほど深刻に考える必要はない。
1) 外国人専用賃貸保証「TRUST NET21」
滞納賃料48カ月まで、物件明渡しまでの法的手続き費用・残置物搬出保管・処分費用などを補償。5カ国語に対応し、本国の家族に電話で確認するなど独自の審査体制を持つ
2) 高齢者住宅財団の家賃債務保証
外国人などが賃貸住宅に入居する際の家賃債務保証制度。保証料は月額家賃の35%(2年間)。補償限度額は、滞納家賃が12ヵ月分、原状回復・訴訟費用は家賃の9ヵ月分
3)留学生住宅総合補償
公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)が、大学・短大・専門学校などの協力校の留学生とその連帯保証人を対象に、住宅総合保険と保証人補償をセットに実施する制度
部屋が狭く、3点ユニットなどの理由で空室に悩んでいた物件。契約時の初期費用を抑え、 手続きを簡素化することで外国人が入居しやすい工夫をし、16戸すべてが満室となった。
外国人ニーズにマッチすれば空室解消に効果あり
外国人の入居を可能にしたことですぐに満室になった例も多い。例えば、築30年の2階建て木造アパートで、常に半数以上空いていたが、和室を洋間にリフォームして家具付きにし、外国人可にした事例。
あるいは、広さ15平米程度のワンルームマンションで、日本人のニーズには合わないために長期間埋まらなかった物件を、外国人向けマンスリーにしたところ、高稼働で運営できている事例もあるのだという。
またよく言われることだが、バス・トイレが一緒の形式に慣れている外国人は、日本人に不人気の3点ユニットでも嫌わないし、築年や部屋の広さもそれほど気にしないという。
ただ「駅から遠く、ボロボロの部屋でも外国人なら入ると安易に考えるのは禁物です。 優先度の高い条件にはむしろシビアです。留学生なら第1に家賃、第2に学校やアルバイト先へのアクセスを重視します」
こうしたニーズを踏まえて、当てはまりそうなら、外国人の受け入れの検討をしてみてはいかがだろう。
- 3点ユニットである
- 築年数が経っている
- 室内がそれほど広くない
- 日本語学校や、留学生を受け入れる大学などが近くにある
- 飲食店やコンビニなどが近い (外国人のアルバイト先に多く挙げられる)