攻撃は最大の防御!次世代に優良資産を残すための売買・組み換えのススメ

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土地オーナーには、資産形成を阻む意外な3つの壁がある。そのハードルをクリアして優良な資産を増やすコツを、金融関係と不動産経営の両面に詳しいコンサルタントの菅井敏之氏に伺った。

元メガバンク支店長 不動産投資家 菅井 敏之 氏

都市銀行で個人・法人融資を長年手掛け、支店長を歴任。2008年に退職し、アパート経営を開始。銀行員としてお金を貸す側、オーナーとして借りる側、両方の視点で全国にて講演を行う。自ら経営する田園調布のカフェ『SUGER COFFEE』を拠点に個人投資家の相談にも乗っている。不動産融資オンライン講座「ゴールデンエッグクラブ」を運営。


著書『金の卵を産むニワトリを持ちなさい』(アスコム刊)

「土地を守る」という呪縛 ▶資産を守るには増やすべし

土地オーナーは資産形成に当たって「“土地は売ってはいけない”という発想に縛られている人が多い」と菅井氏は指摘する。

「“先祖代々の土地を守らなければいけない”は勝手な思い込み。先祖がその場所へ住み着いたのは、生活の糧が得られる農地だったからで、もっと実り多い場所に移すことには反対しないはず。子孫が優良な資産を築いて、経済的に豊かで幸せに暮らせるように願っていると思いますね」

こうした呪縛から逃れないと資産を食いつぶすことになりかねない。相続税があるからだ。有効な対策を打たないと、いくら節税しても相続税をゼロにはできない。

納税資金がなければ土地を切り売りして払うことになるだろう。しかも、相続発生から申告納税までは10カ月しかないため、すぐに換金できる優良な資産価値の高い土地を処分せざるを得なくなる。結果的に、悪い土地が残り、資産規模も縮小してしまう。

「土地を守るのではなく資産を守ることが大切。そのためには、積極的に資産を増やす必要があります。より良い資産に組み換えなければ、収入も資産も現状がピークで、後は目減りするだけです」(菅井氏)

経営者意識と財務感覚の欠如▶銀行は黒字と純資産を重視

「資産を増やすには、銀行の力が欠かせません。銀行は事業の経営状態を見て融資しますが、地主系の賃貸オーナーは経営者感覚が希薄な人が多く、話がかみ合いません」と銀行員時代を振り返る。

通常の経営者なら、生産設備が老朽化すれば、時代の変化に合わせて新しい設備に替え、生産効率の向上やコスト削減を図る。その資金を銀行から調達するため、懸命にP/Lを黒字にし、B/S上の純資産を保つことにこだわる(図表1)。赤字決算や債務超過ではお金を借りられないからで、「経営者としての当然の努力」だ。

銀行が与信審査をする際に重視するのが財務諸表だ。特に「P/L」と「B/S」がキーポイント。手取り収入があっても決算上の赤字が続いている事業主には融資が下りない。P/ L上で3年以上黒字が基本。また、B/Sでは、純資産の厚みをチェックされる。時価評価(収益還元法) で債務超過になっていないかに注意。将来の相続税が多い場合、「簿外債務」と見なされる可能性もある。※収益還元法:不動産から得られる収益を基に資産価値を評価する方法。

ところが、地主系の賃貸オーナーは、満室にして収益を高める努力より、「税金を払いたくない」という意識が強く、経費を使い不動産所得を赤字にして所得税を節税し、不動産の評価を下げて相続税を減らそうとする。いずれもP/LやB/Sを悪化させる行為だ。

「銀行としては融資したいと思っても、これでは稟議が通りません。税務だけでなく、財務感覚を併せ持つことが経営者には必須です」と菅井氏。

これまでの銀行の資産評価▶換金性と時価でチェック

複数の不動産を所有する不動産オーナーであれば、純資産は豊富なことが多い。ただ注意したいのは、資産の評価方法が変化しつつあること。従来、多くの銀行は、固定資産税評価額や路線価をベースに“積算法”で不動産の担保評価をしてきた。

「しかし最近は、その不動産からいくらの収益が得られるのか、つまり“収益還元法”で評価する銀行が増えています」

収益性の低い不動産は、いくら面積が広くて固定資産税評価額や路線価が高くても、資産評価は低い。収益還元法による収益価格が市場で売買される時の実勢価格=時価に近いからだ。路線価ベースの評価では純資産があったのに、収益還元法に基づく時価会計で見ると債務超過という場合も多い。

収益価格が高ければ収益性が高いということなので、投資家にも売れやすい。処分性・換金性・流動性にも優れている。

「お金持ちの共通点は、B/Sの中身が良質かどうかを常に意識していることです。良質な資産とは流動性が高いこと。それを増やすための財務戦略の一つとして、資産の組み換えは必須です。まず、将来性の見込めない資産を売り、いったんキャッシュに換えます。もともと純資産が多い上にキャッシュがあれば、銀行の信用力は絶大です。キャッシュを温存しながら融資を受けて良質な資産を購入することで、大きく資産を膨らませる好循環が生み出せます」(菅井氏)

“蟻の目”で見極め チームで取り組むべし

資産組み換えの第一歩は「不良資産の損切り」だ。

「入居率80%以下が3カ月以上続いたら売るなど、自分なりの基準を決めて冷静に実行しましょう。」

次は優良な資産の見極め。人口減少で地方や郊外はダメだという見方もあるが、必ずしも正解ではないという。

「人口動態などのマクロのデータも重要ですが、現場にフォーカスする“蟻の目”を持つことが大切です。意外な場所でピンポイントのニーズを見極めれば、高利回りの運用も可能です。例えば『進学校が近くて家族で住める3LDKに引っ越したい』『高齢の親と近居したいが近くにアパートがない』といった要望が解決できれば、多少は駅から遠くても需要のある場所が見つかります」

こうした有望な案件を見つけるためのポイントは2つある。1つは「銀行の信用力があり購買力がある人に良い情報が集まる」ので、 前述した財務感覚に磨きをかけることが大切。もう1つは「知恵者を集めてチームを組み、英知を結集して取り組むこと」だ。

「税理士、弁護士、金融関係、管理会社、オーナー仲間など、メンバーとの会話の中から、インターネットなどの表に出てこないアナログな情報をキャッチできます」

そんな交流を通して経営感覚も磨かれるはずだ。

資産防衛10の鉄則

1)「先祖伝来の土地を守る」「売ってはいけない」という呪縛が衰退を招く

2)相続税から「財産を守る」には「資産を増やす」ことが不可欠

3)相続税の納税資金の準備が遅れると、優良な資産から失ってしまう

4)資産の優劣(流動性・収益性)を見極め、不良資産は早めに売却。現金化

5)資産の組み換え、資産形成には銀行の融資が必要

6)“経営者意識”がないオーナーは銀行の格付けが低い

7)赤字(P/L)・債務超過(B/S)は 融資が下りない。財務感覚を磨く

8)時代の変化を見極め、常に最新の入居者ニーズに対応する

9)知恵者を集めてチームで考える

10)5年先、10年先の事業計画書を作る

※この記事内のデータ、数値などに関しては2016年12月12日時点の情報です。

取材・文/木村 元紀

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