「連帯保証人を守る」民法改正で利用急増⁉「家賃債務保証」の実態とは
- 家賃債務保証
2020年4月1日から施行される改正民法。そのうちの「連帯保証人の保護」に関する改正により、家賃債務保証の利用増加が予想される。そこで、法改正の背景を含め、保証の仕組みや取引する際の注意点について、日管協の鈴木相談員に伺った。
(株)ハウスメイトパートナーズを経て、日管協総合研究所の研究所員・主任相談員を務める。顧客満足度向上のノウハウや、柔軟なクレーム対応に定評。
連帯保証人保護の極度額が逆に尻込みさせる要因に
「連帯保証人といえば、青天井の保証義務を負う怖い存在」というイメージはないだろうか。現に保証人の財産差し押さえや破産する例も少なくない。こうした事態を防ぐため、今回の民法改正で、個人が連帯保証人になる場合は保証の上限を示す"極度額"の設定が義務化された。
「連帯保証人を保護する改正」でリスクは軽くなるが、なぜ成り手が減るのか。「これまでの賃貸借契約書には、保証の範囲が記載されないために、いくら請求されるかは頭になく、保証する意識が薄いまま引き受けていたケースがほとんど。新ルールで、家賃の数年分、何百万円という金額が明示されると『そんなに払えない』と腰が引けてしまうと見られています」と鈴木さん。
その結果、法人である家賃債務保証会社(以下、保証会社)が連帯保証人の肩代わりをする「機関保証」が増えるというわけだ。その傾向は以前から始まっている。
「賃貸借契約にかかる連帯保証の形態は、すでに約8割は機関保証です。人間関係の希薄化や、高齢の保証人の支払い能力に不安を持つオーナーの増加も背景にあります。民法改正で機関保証の利用がさらに加速し、地域によっては100%近くになるでしょう」
機関保証は2種類。いずれも保証内容の把握が大切
滞納が発生すると、保証会社がオーナーに滞納家賃を支払った後、入居者に督促して未払い家賃の回収を行う仕組みだ。保証料は入居者負担が一般的で、オーナーや管理会社は経費をかけずに滞納リスクと督促の手間を軽減できる。
さらに、機関保証には「一般保証型」と「支払い委託型」がある。「一般保証型」は滞納した場合のみ発生し、オーナーか管理会社が滞納を自ら確認して保証会社に代位弁済の請求をする方式。「支払い委託型」は、家賃が保証会社の口座に入り、滞納の有無にかかわらず、保証会社が家賃を全額立て替えてオーナーに支払う方式だ。
保証対象は保証会社によって異なり、滞納家賃が基本だが、原状回復費用、訴訟費用が含まれるケースもあり、入居者が亡くなった場合の残置物処理費などもある。
保証料の設定も様々だ。「初回費用+更新料」のパターンが中心で、初回は家賃の30〜100%、その後1年ごとに1~2万円と幅が大きい。「初回家賃の50%+1年ごと1万円」のケースが多いが、「初回2万円、更新後は家賃の1%を毎月」「初回契約時のみ」などのバリエーションもある。
管理会社に契約業務を任せている場合でも、オーナー自身が保証会社と契約を結ぶ当事者になるので、契約書の内容を読み込み、保証内容、滞納発生時の手続きなどを把握しておくことが大切だ。