【相続対策】賃貸経営の跡継ぎ問題解決の3STEP
【STEP2】賃貸経営を一緒に経験する
親は必ずしも子どもの能力を正確に把握していません。ろくに会話もしていないのに「長男は性格的に経営に向かない」「二男は優秀だ」と思い込みで判断しがちです。子どもの本当の素質、賃貸経営に対する向き不向きを見抜くには、事業の改善計画を一緒に作って実行してみることがおすすめです。
ボロボロの物件より、安定した収入が得られる物件を引き継がせたいもの。空室対策・収支見直し・節税などのテーマごとに、意見を聞いて子どもの協力を求めると、会社勤めやアパート住まいの経験から面白いアイデアを出してくれることも。
計画を実行するプロセスで、意思決定をし、良い結果が出ることで、やる気のなかった子どもが意外に賃貸経営に目覚めるかもしれません。また、親子で協同作業を進める中で、経営ノウハウを伝え、教育・訓練にもつながります。
【STEP3】誰が継ぐかを決め、準備する
事業改善計画を通じて、子どもに一定の“下積み”を経験させ、賃貸経営を継ぐ心の準備ができた子を後継者に選定します。誰か一人に複数のアパートを集約する方法もあれば、兄弟で分け合うパターンもあるでしょう。それが確定した後に具体的な事業承継プランを作ります。なるべく税制面で有利になるように「法人化」や「生前贈与」など、各種の手法を検討しましょう。
同時に、他の資産も含めて「誰に何を相続させるか」という遺産分割案を作ります。「遺言」や「家族信託」など方法はいくつかありますが、家族全員が納得することが大切。紛争の元になる共有は避けましょう。
兄弟のうち賃貸事業を引き継がない子には、賃貸経営の後継者が事業収益の中から代償分割用の資金を貯めておく方法もあります。早めに事業承継の方向性を決めれば、多様な相続対策が立てられるのです。
オーナーが実践している賃貸経営の引き継ぎの工夫
「税理士さんに自宅に来てもらい、今後の経営アドバイスを息子と一緒に聞いた。収支をオープンに見せたことで興味が沸いたようで『今度、賃貸経営セミナーを聞きに行こうよ』と誘われた。徐々に取り組んでいければと思います」
「会社員の長男から『空室急増ってニュース見たけど、うちは大丈夫?』と聞かれ、『お前ならどうする?』と水を向けたら、私よりしっかりした事業計画を立てて来た。それをキッカケに資産管理会社を作り、一緒に経営しています」
「空室が続いていたので、入居者と同じ年ごろの娘に、女性好みのデザインや色など聞いて、リフォームに取り入れた。入居が決まったのがうれしかったらしく、それ以来、興味を持つように。今では募集のアイデアも出してくれます」
取材・文/木村元紀 イラスト/加藤愛里(asterisk-agency)