平成30年度税制改正!相続税、贈与税、所得税控除は?
- 税理士
数年前から続いている高額所得者への課税強化の流れは今回も踏襲され、締め付けが厳しくなっています。不動産オーナーに関わる税制については、行き過ぎた相続税の節税対策への規制や増税につながる改正も盛り込まれているので要注意です。今回の改正を踏まえて対策の見直しも必要でしょう。
所得税に係る各種控除の見直し
後述の通り、各控除額が増減します。これは特定の収入だけに適用される給与所得控除・公的年金等控除から、どんな所得にも適用される基礎控除へ、控除額が振り替えられたといえるでしょう。給与収入が850万円以下、かつ公的年金等の収入が1,000万円以下であれば、プラス・マイナスが相殺されて変化はありません。
その金額を超える高収入層は控除額が引き下げになり、増税です。この改正に伴い、配偶者控除や扶養控除などの適用要件の所得金額も見直しされます。
なお、給与所得控除は会社員以外にも関係します。賃貸住宅オーナーなら、青色申告をしている場合の親族への専従者給与、資産管理法人の役員報酬に影響が出ます。高齢で、年金を貰いながら役員報酬を得ている場合、片方に係る控除のみが減額になります。
適用開始:2020(平成32)年分の所得税、その翌年分の住民税から
農地に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
見直しの内容は次の通り
1)市民農園など一定の法律に基づき、貸付けられた生産緑地も相続税納税猶予の適用が可能
2)三大都市圏の特定市以外の生産緑地の相続税免除に係る営農継続要件の見直し(20年→終身)
3)生産緑地法・都市計画法改正に伴い、「特定生産緑地」「田園住居地域」内の農地に納税猶予の範囲を拡大
4)特定生産緑地の指定または指定期限の延長がなかった土地は、現在適用されている納税猶予のみ継続。
適用開始:関連法の施行後の相続等により取得する農地等から適用
今後のポイント
「都市農地貸借円滑化法(仮称)」や「特定農地貸付法」などの関連法の施行後に適用されます。生産緑地の「2022年問題」との関係にも要注意です。
小規模宅地等の特例の見直し
特例の適用要件が次のように厳格化されます。
1)居住用宅地については、親と同居していない借家住まいの“家なき子”のうち、親戚や同族会社の所有する家に住む場合などが対象外になります。
2)貸付事業用宅地は、相続開始前3年以内に賃貸を始めた土地を除外します(事業的規模の場合を除く)。
適用開始:2018(平成30)年4月1日以降の相続・遺贈から
今後のポイント
居住用宅地の適用可否は各家庭で再確認が必要。また、貸付事業用宅地の適用目的で相続直前にタワーマンション等の区分物件を複数購入するなどの対策の効果も減少します。