大規模修繕で失敗しないためのポイントを伝授!大前提は賃貸住宅を「あと何年もたせるか」|大規模修繕の鉄則(1)
- 大規模修繕(外壁・屋根)
賃貸アパート・マンションの大規模修繕が普及しない理由は、資金面や修繕に対する理解不足が大きいかもしれません。計画的に大規模修繕を行う意義、実施しない場合のリスク、資金の準備、納得のいく工事のポイントなどについて、この分野に詳しい3人の専門家に取材しました。3回に分けて、賃貸住宅に適した修繕の鉄則を紹介していきます。
不動産オーナー向けの総合コンサルティング会社の代表取締役。不動産活用、空室対策、相続対策を通じてオーナーの資産を防衛。
市萬のパートナー建築士で、建築・インテリアの企画設計などを手掛ける建築事務所の代表取締役。省エネ建築診断士マイスターで断熱改修にも詳しい。
職人直営の大規模修繕専門会社を経営。社長自身が職人で、技術力やデザイン提案力に定評。業界の枠を超えた新サービス開発も手掛ける。
賃貸アパート・マンションの経営にとって必要不可欠な「大規模修繕」
国土交通省の調査結果によると、足場を組むなど建物の大がかりな修繕を行う「大規模修繕」の計画を立てている賃貸住宅オーナーは、わずか2割程度しかいないそうです。
残り8割のオーナーは「必要なときに実施すれば十分」と考えている人が多いそうですが、この「必要なとき」が適切なタイミングかどうかは疑問です。「雨漏りが発生した」など実害が出てから応急的に対処しているケースが多いのではないでしょうか。
「大規模修繕」とは? 定義と実施のタイミング
そもそも大規模修繕とは、住宅としての基本性能を維持するために、経年とともに衰えていく建物の外装仕上げや共用設備などの性能を、新築時の状態に近づける工事です。5年、10年単位のサイクルで計画的に行う必要があります。建物の外見上は少し汚れている程度で、目立った損傷や故障がなくても行うため、素人目には必要性を理解しにくいかもしれません。
しかし、大規模修繕は、単に見栄えをよくする化粧直しではなく、入居者が安心して住み続け、オーナーに収益をもたらしてくれるために必要不可欠な工事だ。これを怠ると、雨漏りやタイル落下などの事故が起きたり、最悪の場合は構造躯体のサビや腐食が進行し、耐震性・耐久性の低下を招いたりするおそれがあります。
では、適切なタイミングとはいつなのでしょうか。一般的な大規模修繕ガイドブックなどでは部位ごとの修繕周期が解説されています。しかし、これはあくまでも一般的な目安です。
「立地や建物の個別条件によって傷み方は違います。劣化状態に応じて手を入れていくことが重要です」(丸橋さん)
賃貸アパート・マンションにおける大規模修繕の考え方
新築時の性能に近付けるのが「修繕」、現在のニーズに合わせて価値や性能を高めるのが「改良」。築古物件は新築当時の状態に戻しても入居者から選ばれにくい。“今の新築”を意識しよう。
大規模修繕は"プラス方向の投資”ととらえる。「建物長期活用」で長期的な安定収益
実際に大規模修繕を行う際には、オーナー自身の意向も大切です。
「これから何年ぐらい賃貸経営を続けたいか、どのくらい建物を長持ちさせたいか」によって、修繕すべき部位や仕様、コストのかけ方が変わり、「修繕」にとどまらず性能を高める「改良」まで考えるかも視野に入ってきます。
事業方針を立てるに当たって考慮しておきたいのは“建物長期活用”という最近のトレンドです。
「大規模修繕は、単なる出費ではなく、コストをかけても長持ちさせたほうが、将来にわたって安定収益を確保できるというプラス方向の投資ととらえる時代になっています」(西島さん)
鉄筋コンクリート造のマンションなら、正しくメンテナンスすれば80年近くもつ時代。昨今関心が高まっているSDGs(持続可能な開発目標)の観点から、環境負荷の抑止に貢献する取り組みにもなるでしょう。
賃貸アパート、マンションを「あと何年もたせる?」が大前提
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※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2022年6月8日時点のものです。
取材・文/木村 元紀 イラスト/高村あゆみ