大規模修繕にはいくら必要?資金がない時はどうする?アパート・マンション修繕「お金」の鉄則!|大規模修繕の鉄則(2)

リフォーム/塗装
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公開日:2022年6月8日
更新日:2022年8月30日
大規模修繕にはいくら必要?資金がない時はどうする?アパート・マンション修繕「お金」の鉄則!|大規模修繕の鉄則(2)1

所有アパート、マンションの大規模修繕の必要性は分かっていても、「資金的な余裕がないからできない」というオーナーは多くいます。しかし、ズルズル先延ばしにしていると手遅れになりかねません。いかに資金調達するか、予算不足をどう乗り越えるかを考えました。

お話を聞いた方
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株式会社市萬 西島 昭さん

不動産オーナー向けの総合コンサルティング会社の代表取締役。不動産活用、空室対策、相続対策を通じてオーナーの資産を防衛。

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株式会社デザインオー建築事務所 丸橋 浩さん

市萬のパートナー建築士で、建築・インテリアの企画設計などを手掛ける建築事務所の代表取締役。省エネ建築診断士マイスターで断熱改修にも詳しい。

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株式会社アローペイント 染矢 正行さん

職人直営の大規模修繕専門会社を経営。社長自身が職人で、技術力やデザイン提案力に定評。業界の枠を超えた新サービス開発も手掛ける。

賃貸アパート・マンションの大規模修繕は不可避。長期修繕計画で総額を把握

賃貸アパート・マンションの満室経営を維持し、建物の価値を持続していくために、大規模修繕の実施は欠かせません。

技術が進化し「30年間メンテナンスフリー」と謳う外壁材も登場しています。とはいえ、サイディングの素材自体が手入れ不要だとしても、パネルの合わせ目のすき間を埋めるコーキング材は5~10年で劣化し、打ち替えが必要になります。何も手を入れずに何十年も長持ちさせられる建物はありません。

築年が古くなっても入居してもらえる健全な状態に保つには、多かれ少なかれ大規模修繕は避けられないだけに、そのための資金を準備しておかなければならないでしょう。

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いくら準備すればいいかを知るには、建物の「長期修繕計画」が必要になります。建物の劣化状態を診断した上で、今後20年なり、30年なり、オーナーが持たせたい期間まで、どの部位に、いつ、どんな工事をする予定か、それぞれいくらかけるかを計画することです。

なお、修繕費用のトータルとしては、室内設備等も含めて考えておく必要があります。たとえば、下図のようなイメージです。金額は1つの目安ですが、「思ったより高い」と感じる人が多いのではないでしょうか。

かかる修繕費のイメージ(5年ごと・1戸あたり)

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出典:市萬「建物長期活用は賃貸経営成功の秘訣」

上記の表は一般的な修繕費の目安です。金額は建物の状況や修繕の進め方によって異なります。「建物本体」が主に大規模修繕で施工する部位です。

大規模修繕のための資金は積み立てが理想。定期預金や保険も活用していこう

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次に、これだけの資金をどう調達するかです。

金額が大きいため、早い段階から毎月少しずつ積み立てるのが望ましいでしょう。積み立ての方法は、普通預金で貯めるオーナーが多いようですが、すぐに引き出して使ってしまえるのが難点。普通預金口座から毎月自動振り替えの形で定期預金に入れられる「積立式定期預金」も活用されています。

この他、満期返戻金を修繕費に充てられる生命保険・損害保険、投資信託などもあります。自分で貯めるオーナーもいれば、集金代行を委託している管理会社を通じて積み立てているケースも。

実は、将来の修繕に備えて資金を積み立てているオーナーは少数派。その理由は、長期修繕計画を立てていないから目標金額がわからなかったり、積立金は経費にならないなどということからです。

ちなみに、経費計上できる「大規模修繕積立金共済制度」(全国賃貸住宅修繕共済協同組合)が国土交通省から認可されました。詳細はまだ明らかになっていないので、今後の動向に注目したいところです。

資金不足での大規模修繕の先延ばしは禁物、融資を使って早期に着手

積み立てが有効なのは、新築後間もない時期からスタートするなど、予定の修繕時期までかなり余裕がある場合に限られます。劣化診断の結果、すぐに着手しないといけないのに十分な蓄えがない場合はどうすればいいでしょうか。

手元に資金がないからといって、修繕を先延ばしするとリスクが増してしまいます。「劣化の進行→競争力の低下→空室増加→家賃収入の減少→修繕費の確保困難」という悪循環に陥り、手遅れになりかねません。

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こんな事態を防ぐには、借り入れを活用しましょう。築古物件の場合、融資を受けにくいイメージがあるかもしれませんが、まずは取引のある金融機関に打診してみるといいでしょう。

「以前は、建物の法定耐用年数を過ぎた建物は融資対象外になるケースが多かったです。しかし最近は、オーナーの資産内容、賃貸経営の資金繰りの状況次第では、築古物件でも柔軟に対応してくれる金融機関が出てきています。特に、日頃からやりとりしている信用金庫など、地域密着型の金融機関なら、親身に相談に乗ってくれるでしょう」(西島さん)

予算に合わせて分割施工、新サービスの定額制も登場

築古物件で新規融資を受けることに対抗感が強いオーナーも少なくありません。借り入れ金の返済によって事業収支が悪化してしまうのも本末転倒です。

手元に余裕資金がなく、融資も避けたいオーナーで、一度に多額の支出が難しい場合は袋小路になりそうですが、それでも道はあります。「大規模修繕は、建物全体をまとめて一括施工するもの」という固定観念を払拭することです。

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「建物の劣化診断をして、すぐに修繕が必要なところ、5年後でも構わないところを振り分け、優先順位の高いところから着手するという考え方もあります。外階段や廊下、屋上の防水など足場の不要な工事と、外壁塗装のように足場の必要な工事に切り分けるというのも1つの方法です」(丸橋さん)

つまり、必要な工事を先送りするのは避けるべきですが、優先度の低い部位を後回しにする分にはダメージは小さい。このように分割すれば、支出を分散できるというわけです。

さらに、まとまった資金が不要で毎月定額払いで施工を実施するサービスも登場しています。

「同じ外壁でも、日当たりの強い南面と、日陰になる北面では傷み具合が違うため、修繕の必要なタイミングも変わります。小さな工事をこつこつ積み重ね、家賃の範囲内で費用を払えるのが定額制です」(染谷さん)

こうした新しいサービスも積極的に利用するといいでしょう。

注目を集める大規模修繕の「定額制」とは?

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ポイントは「分割施工」になるところ

まずは建物劣化診断で建物の部位ごとの劣化状態を把握し、長期修繕計画で総工事費の見積もりを算出。修繕部位の施工順位、修繕時期を決定したうえで、必要な部位ごとに分割して施工していきます。

支払い額は総工事費を分割して毎月定額で支払っていく(一部前払いの場合もあり)形です。工事先行・後払いになるため、定額払い分は経費計上が可能になるケースが多いです(税務署によって判断が異なる)。

【お金の鉄則】まとめ

●劣化診断を行い長期修繕計画を立案して、建物の修繕に必要な金額をオーナー自身で把握しましょう

●必要資金は、時間をかけた積み立てか、一度に調達する融資を活用。先送りは禁物です

●修繕部位ごとに優先順位を付け、予算に合わせて分割工事も検討。定額制サービスの活用も考えましょう

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大規模修繕の鉄則(1)、(3)は以下の記事でご紹介しています。
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※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2022年6月8日時点のものです。
取材・文/木村 元紀 イラスト/高村あゆみ

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