【特別対談】国土交通省 賃貸住宅対策室 室長 川合紀子氏『大家さんが安定した運用ができるように支援します』
- 残置物整理、事故物件
- 建物管理
- 外国人
民間賃貸住宅に係る政策の中で、災害時の「みなし仮説住宅」の確保、多様なニーズに応える「DIY型賃貸借」の推奨などを行う国土交通省が、新たな課題にも精力的に取り組んでいる。賃貸住宅対策を指揮する川合紀子室長に、大家さんが知っておくべき政策を伺った。
東京大学経済学部卒業、(旧)建設省へ入省。地域整備や住宅政策関係部局を歴任、在米日本大使館一等書記官を経て2018年7月住宅総合整備課 賃貸住宅対策室 室長に。2019年7月より住宅生産課 住宅瑕疵担保対策 室長を務める
明治大学法学部卒業後(株)リクルートに20年勤務(主にSUUMO)。2006年オーナーズ・スタイル社を設立。大家歴27年
大家さんが安心して外国人を受け入れる仕組みを整備
上田 「賃貸住宅対策室」は、いつ発足したのですか?
川合 国土交通省(以下国交省)で公営住宅などを幅広く扱う住宅総合整備課の中に4年前に作られた部署です。国が取り組んできたのは公的賃貸住宅が中心でしたから、民間の賃貸住宅は未開拓な世界。その中で質の向上、ルールの整理に取り組んでいます。
上田 力を入れている分野は?
川合 大家さんにとって関心の高い分野では、「外国人」「単身入居者」「計画修繕」などが挙げられます。まず、入管法の改正に伴って急増する外国人の受け入れは、各省で取り組んでいますが、住宅分野では、外国人が日本で円滑に住まいを確保できるよう、必要な対応を行いました。
上田 具体的な取り組み内容を教えてください。
川合 外国人との契約に不安を持つ大家さんの懸念には、「保証人」「言語」「生活ルール」の3点が挙げられます。これらのハードルを取り除くために、外国人が就労する企業(受け入れ機関)が入居から退去まで責任をもって対応すべきことを明確にしました。保証人は、企業が自ら連帯保証人になるか家賃債務保証を利用するか、借上社宅にするか、いずれかで対処します。
言語や生活ルールについては、契約時の通訳、情報提供、入居中の生活指導や退去手続きなどに関して、外国人の言語対応サポートを行う企業やNPO法人などによる「登録支援機関」が受け入れ企業を支援する仕組みです。
単身入居者の死亡時の解約や残置物処理などの手続きも支援
上田 単身高齢者の孤独死が増え、躊躇する大家さんも多いです。
川合 法務省と共に、解約や残置物の処理などに手間と資金がかかる現状を改善する対策を検討しました。死後にできることは限られるため、契約前や入居中の情報収集(親族・かかりつけ医など)や各種制度の活用によりトラブルを最小化することがポイントです。
上田 亡くなった場合の解約は、賃借権の相続がネックですね。
川合 賃借権の相続がない「終身建物賃貸借」や期限到来と共に確定的に終了する「定期借家」を活用する方法があります。前者は、都道府県から認可を受けるため、バリアフリー要件がハードルでした。昨年、既存住宅については浴室・階段などに手すりをつける程度でクリアできるよう改正され、格段に利用しやすくなりました。
上田 残置物の処理にもお金と時間がかかります。
川合 解約や残置物を適法に処理するには裁判所の手続きが必須。相続人探索や遺品整理の費用、空室中の家賃損失などを補償してくれる損害保険、少額短期保険などの活用によりリスク回避、損失の防止ができるでしょう。
上田 月額数百円/1戸の保険もあるので、普及するといいですね。