現役大家さんが語る!管理会社の力を引き出すノウハウ
- 管理会社(入居者管理)
安定経営を続ける現役大家さん3人にお集まりいただき、本音トークの座談会を開催しました!苦労の体験あり、改善の工夫あり。リアルな会話から、管理会社を上手に活用する秘訣が見えてきます。管理会社の仕事ぶりに不満のある大家さんは必読です!
管理会社に不満あり!「こんな苦労で泣かされた」
大学卒業後、(株)リコーに入社し、海外・国内マーケティングを担当。2006 年、相続をきっかけに静岡県の物件の大家となる。サラリーマン時代の感覚を忘れず賃貸経営を展開中。
落合 私は父が亡くなり、サラリーマンから突然、素人大家になったのですが、父の時代から任せていた管理会社は、仕事をまったくしてくれなくて。いくら言っても放置自転車はそのまま、ご入居者の住環境なんかお構いなしでした。
管理費は事実上定額ですから「これからは出来高制にしないか」と提案したのですが、当然回答はノー。それで管理会社を替えました。
廣田 うちは大手の管理会社にもお願いしているのですが、担当者によって力量が違い、当たり外れが大きいですね。私が磨いたばかりの白いタイルの上を平気で泥靴で歩いたトンデモ担当者もいました。
一方、熱心な人は空室が出ると対策を考え、新しい設備にポップを貼って内見時にアピールしてくれたり。同じ会社なのに担当者のレベル差がありすぎてびっくりです。
秋田 私の場合、一番困ったのは、管理会社の突然の倒産でした。大家業を始めて2年たった頃で、すぐに通帳を返してもらって実損は出さずにすみましたが、いきなり管理がストップしたので、ご入居者やテナントに不便が出たらどうしようかと。以来、丸投げは禁物だと思うようになりましたね。
不満を解消するための工夫や心がけたことは?
元は会社員。父の賃貸経営を引き継ぎ、自営業のかたわら大家業を営む。東京都と近郊三県で10 棟90 室を経営。一般社団法人日本不動産経営協会(JRMA)代表理事。
落合 ただ不満をこぼしても改善しませんよね。私はまずご入居者の住環境を第一に考えるという認識を共有する必要があると思いました。それで「私個人の利益のためじゃなく、ご入居者の満足のために動いてほしい」と仕事の視点を徹底して担当者に伝えました。
廣田 私は管理会社と仕事内容を切り分け、お互いの守備範囲を明確に決めたことで不満が減りましたね。たとえば「日常の掃除は自分で行うので、その分は支払わない。しかし業者を呼ぶ年2回の清掃は、費用を払ってお願いしたい」というように、何をやってもらうのかをきちんと詰めるようにしています。
それと、担当者と世間話を交わし、たまに飲みに行くなどしてコミュニケーションを取ることも大事ですね。近隣の仲介会社の評判など色々な情報交換もできますよ。
秋田 私の転機はリーマンショック後に空室が増えたときでした。担当者と一緒に危機を乗り切ろうと、空室を実験台にする覚悟でひたすらトライ&エラーを繰り返したのです。たとえば壁の全面にアクセントクロスを貼ったり、カラフルな塗り壁で仕上げてみたり。
「自由にチャレンジしてみよう。うまくいけば管理会社の新たなノウハウになる。ダメでも失敗材料になって次につながる」という思いをきちんと伝え、共有しました。
担当者との関係づくり「気に入られる大家になる」
会社員から妻の実家の賃貸経営を引き継ぎ神奈川県藤沢市で12 棟90 室を経営する専業大家に。その後、管理会社の立ち上げに参画。行動する大家さんの会代表としても活動している。
落合 頭ごなしに「あれをやって、これを急いで!」と頼んでも、うっとうしがられるだけ。こちらが管理会社にとって重宝な人間になれば、何も言わなくても「あの人の物件だけは手を抜いちゃいけない」と思ってもらえます。
そのために私は自分でも勉強して管理会社も欲しがるような情報を提供するようにしています。たとえば火災保険の電気式・機械式事故特約の存在や、リノベをして得たノウハウ、話題の民泊の状況などは、管理会社のみなさんも知りたいことなので喜んでもらえますよ。
秋田 確かに自分の物件に思い入れをもってもらうのは良い方法ですね。私は担当者とホンネで付き合いたいので、「こうしたいという思いがあったら何でもぶつけて、厳しい意見でも思ったことをどんどん言って」と伝えています。
廣田 以前新築を建てる際に、リアルな入居者ニーズを一番わかっている管理会社の意見を聞いてプランに反映させました。すると自分も参加してつくったという当事者意識が生まれますから、管理にも力を入れてくれましたね。
落合 管理会社に不満があるのに我慢して付き合うことはありませんよね。私たちの収入も担当者の給料もご入居者の家賃から出ています。そのお客様に迷惑をかけられたらアウトです。
まずは今の管理会社のやり方がベストなのか、自分で判断できる知識を持ち、ときには管理会社を替えるぐらいの勇気が必要だと思います。
【教訓】大家も意識を変えるべし
管理会社は賃貸経営の最も身近なパートナーだ。頭ごなしに不満を言うだけでは何も解決しない。まずは自分が求めるものや方針など明確にし、管理会社にしっかり伝えて思いを共有しよう。
さらに大家自身が「失敗してもいいから新しい提案があったらどんどん一緒にやってみよう」というくらいの協力的な姿勢で管理会社のモチベーションを高めるなど、相手の力を最大限に引き出す工夫をしたい。
※この記事内のデータ、数値などに関しては2016年9月6日時点の情報です。
取材・文/菱沼 晶、撮影/青木 茂也