家賃収入も確定申告が必要!その理由と申告の流れ、よくある疑問をわかりやすく解説
職業にかかわらず納める税金の金額は、前年の1月1日~12月31日までの所得を基準として決められます。サラリーマンの副業として不動産投資を始めた方や、賃貸経営を検討している方は、2~3月の確定申告も意識し始める時期。「まだ家賃収入は多くないから、確定申告はしなくてもいいだろう」「そもそも家賃収入ってどうやって確定申告するの?」という方のために、賃貸経営の確定申告についてまとめました。
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家賃収入も確定申告が必要。その理由は?
なぜ家賃収入は確定申告が必要?
家賃収入は「不動産所得」という所得区分になります。これは入居時の礼金や契約更新時の更新料なども含まれ、確定申告が必要です。
会社員の場合は給与から納税額が計算され、毎月天引きされます。しかし給与以外の収入については自分で所得を申告し、所得分を納税する必要があります。もちろん家賃収入も同じで、確定申告が必要となります。
確定申告の必要性とメリット
ただし、確定申告は義務として必要な場合と、そうでない場合があります。個人事業主は基本的に、所得が基礎控除である48万円以上ある場合、確定申告が必要です。
会社員と兼業の場合、不動産所得が20万以下であれば確定申告の義務はありませんが、例外もあります。また、家賃収入が20万以下だとしても、確定申告をしたほうがお得なケースがあります。
前述したとおり、副業だとしても家賃収入から経費を引いた不動産所得が20万円以上であれば申告の義務が生じます。経費として何が計上できるかは、経費の項で詳しく触れます。
不動産所得が20万円以下で確定申告が必要なケースはまず、給与収入が2,000万円以上ある場合です。これは給与明細で分かります。
また、賃貸経営の他にも副業をしており、その収入との合計で所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。
不動産所得が20万円以下でも、確定申告をしてはいけないわけではありません。むしろ確定申告をした方がメリットになることもあります。例えば次のような場合です。
家賃収入から必要経費を引いたものが不動産所得となり、それをもとに課税金額が決められますが、不動産所得には「給与所得と損益通算できる」という特徴があります。
損益通算とは、本業の給与と家賃収入をまとめ、そこから経費を差し引く方法です。つまり、家賃収入から必要経費を差し引いた結果がマイナス(赤字)だった場合、給与からマイナス分を差し引くことができるのです。
これにより、トータルの所得額が減るため、給与から天引きされた税金が「払いすぎ」ということになり、還付金を受けられる可能性があります。
つまり、確定申告をした方が節税になるのです。
キャッシュフローの基本である収入管理は賃貸経営には欠かせません。確定申告を自分でするのは大変ですが、年間の家賃収入や経費について明らかにする良い機会でもあります。
今後、物件を増やして本格的に不動産投資することを考えている方も、どれくらいの家賃収入があれば事業として成り立つのかを把握、検討できることは確定申告を行うメリットとなるはずです。
家賃収入にかかる税金
家賃収入から経費を引いた不動産所得には、どのような税金がかかるのでしょうか。具体的には次のような税金が課税されます。
所得税
家賃収入にかかる所得税は不動産所得(収入金額 ― 必要経費)× 所得税率で計算されます。所得税率は累進課税制度といって、所得金額によって税率が変わります。税率は以下となります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば所得金額が700万円の場合、税額は以下のような計算で求められます。
7,000,000円×0.23 – 636,000円= 974,000円
住民税
住民税は1月1日時点で住民登録をしていた都道府県や市区町村の自治体に納める税金です。税率は道府県民税4%、市町村民税6%を足した10%程度を基本として、地域によって少し変わる場合があります。
家賃収入がある物件には住宅ローン控除は適用不可
投資を目的に、賃貸物件をローンで購入する場合もあるでしょう。しかし、そのローンは住宅ローン控除の対象にはなりません。住宅ローン控除を利用する条件は「自宅として自分が住むこと」があるからです。ただし、賃貸併用住宅をローンで建てた場合、自宅として使用している部分には住宅ローン控除が適用されます。
家賃収入で発生する経費の種類とその計上方法
課税される「所得」とは、収入から経費を引いたもの。では、どんなお金が経費とされるのでしょうか。
賃貸経営における経費の種類とその計上方法
賃貸経営を行ううえでかかったお金は経費とされますが、経費には様々な種類があります。もし、経費と認められないものを計上してしまうと税務調査が入ることがあり、そこで不正とされた場合は追徴課税が発生してしまう可能性が。経費にできるもの、できないものを次にまとめます。
建物の維持管理や入居者募集にかかる経費として、管理費、退去時のリフォーム費用、修繕費、修繕積立費、共有部分の水道光熱費、入居者募集のための広告費、保険料があります。
また、「租税公課」として固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税、個人事業税などで納めた税金も経費とすることができます。
賃貸経営のために物件を取得した場合、取得した建物の耐用年数に応じた期間を分割した減価償却費が経費計上できます。耐用年数や償却率は建物の構造によって変わります。
物件を取得するためにローンを組んだ場合、借入金の利子分は経費とすることができますが、元本分は経費とすることができません。また、税金のなかでも所得税や住民税は租税公課に含まれないため、経費と認められません。
判断に迷うのが交通費や接待交際費などです。プライベート分は当然経費となりませんが、事業として打合せなどに行った交通費や食事代は経費計上できるため、領収書とともに名目が分かるように記録を残しておきましょう。
また、自宅兼事務所や兼用でインターネットを利用している場合などは、事務所分の家賃や賃貸経営に使った分の通信料を按分して算出する必要があります。
修繕費や保険料などの経費計上はどうすればいい?
賃貸経営のために使ったお金は経費となりますが、修繕費や保険料については扱い方に注意が必要です。その計上方法を見てみましょう。
建物は築年数が経つとともに劣化するため、修繕が必要となってきます。修繕費とは建物の原状回復や維持管理のために発生する費用で、20万円未満の補修費を指します。計上時期は支払った日ではなく補修工事が完了した日となるため、計画的に補修を行う必要があります。
原状回復だけでなく、物件の資産価値を向上させるリフォームなどの費用は修繕費ではく「資本的支出」とみなされます。例えば、その工事によって家賃アップが見込めるような間取り変更や共用部分の設備新設などが当てはまります。経費ではありますが、修繕費のように一括計上ができず、減価償却となります。
「経費にできるもの」の項目で触れたとおり、火災保険・地震保険・施設賠償保険などは経費として計上できます。
ただし、長期で入るほど保険料が安くなることから、5年契約などで加入している場合などは注意しましょう。経費計上できるのはその1年にかかった保険料ですので、保険料を5分割したものを5年間にわたって計上する形となります。
家賃収入の確定申告手続きの流れ
それでは、実際に確定申告をするときの流れを見てみましょう。前年1月1日~12月31日に生じた所得分について確定申告書を作り、2月16日~3月15日に税務署に提出するのが確定申告です。
申告方法の選択
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、まずはどちらの申告方法を選ぶか決めます。青色申告は事業収入から最大65万円の特別控除が受けられます。さらに、損失を3年間繰り越すことができる、専従者給与を全額経費算入できるなどのメリットがあります。
しかし、決算書として貸借対照表・損益計算書などが必要となり、確定申告の前年(申告の対象となる年)の3月15日までに青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
白色申告は青色申告のようなメリットはないものの、事前手続きや複雑な書類は必要ありません。節税効果が小さい分、手間も軽く、より簡易な方法といえるでしょう。
必要な書類の準備
確定申告では、確定申告書と青色申告決算書もしくは収支内訳書、固定資産台帳などを作成し提出します。作成書類に合わせて次のような準備が必要となります。
申告には本人確認書類(マイナンバーカード等)、銀行口座の情報(還付がある場合)の他、給与がある場合は会社から源泉徴収票、不動産業者から賃貸借契約書や家賃送金明細書、金融期間から借入返済表などを事前に入手し、準備しておく必要があります。
さらに修繕などを行った場合はその見積もりや領収書、火災保険などの証券も手元に揃えておきましょう。
確定申告書類の作成と提出
確定申告の書類作成・提出にはいくつか方法があります。手間と時間に応じて自分に合ったやり方を選びましょう。
以前は申告書に印鑑が必要でしたが、2021年4月の税制改正により不要となりました。手書きの場合、申告書は税務署や役所で直接入手するか、国税庁ホームページからダウンロードが可能です。
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を使い、パソコンやスマートフォン上で作成することもできます。画面の指示通りに必要事項を入力していけば、合計や税額などが自動計算されるため便利です。
申告書の提出方法も紙とインターネット、どちらでも行うことができます。紙の申告書は管轄の税務署に行って直接提出するか、郵送も可能。郵送の場合は消印の日付が提出日として扱われます。
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」で作成した申告書を、そのままe-Taxで提出(データ送信)する人が増えており、2022年分は前年の約1.3倍に増加。確定申告会場に足を運んだ人の約2倍にもなりました。
ちなみに、e-Taxによる申請者のうち約4割がスマートフォンで確定申告を行っています。
確定申告のよくある質問と注意点
確定申告は複雑なため、国税庁でも問い合わせの多い事項をまとめたQ&Aのページが設けられていますが、賃貸経営を始めた方が抱きやすい疑問をピックアップしましたので、参考にしてみてください。
青色申告か白色申告、どっちで確定申告すべき?
確定申告を行うにあたり、まず青色か白色かを決めます。青色申告は事前申請が必要なため、来年以降の確定申告での対応となりますが、賃貸経営にはどちらがふさわしいのでしょうか。
◎青色申告のメリット
「申告方法の選択」の項でも触れましたが、まず大きなメリットとして「青色申告特別控除」があります。これは、不動産収益から最大65万円を控除できるというもの。ただし65万円の控除を受けるには「事業規模であること」、「複式簿記での記帳」、「e-Taxによる申告」の条件を満たす必要があります。
また、賃貸経営において赤字が出た場合、それを3年間繰り越せるというメリットもあります。今年の赤字を翌年分としても計上できることで、翌年の節税となります。修繕が必要な物件がたくさんある場合などは、とても有利となります。
賃貸経営を家族に手伝ってもらっている場合は、専従者給与として全額を経費計上できます。ただし、確定申告対象年の3月15日までに税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。
▲青色申告のデメリット
デメリットは事務手続きの複雑さが挙げられます。例えば65万円の特別控除を受けるためには「複式簿記」で記帳する必要があり、それには会計や簿記の専門知識が必要となります。
さらに青色申告の場合は、所得が48万円以下だった年も確定申告の義務があります。
◎白色申告のメリット
白色申告のメリットは簡易簿記によるシンプルな手続きで済むことです。青色申告で必要な事前申請なども不要なため、まだ賃貸経営が事業規模になっていない人や、慣れないうちは白色申告からはじめるという人が多いでしょう。
▲白色申告のデメリット
白色申告のデメリットは特別控除や赤字の繰り越しなど、青色申告では認められている優遇がないことです。赤字繰り越しができないと、最初は赤字が続いて黒字に転じた場合や、赤字と黒字を繰り返している場合などは青色申告より税金が高くなってしまうことがあります。
また、専従者に対しての給与(控除)額にも上限が設けられており、最大で86万円までしか控除が受けられません。
2023年秋からスタートした「インボイス」、賃貸経営には無関係?
2023年10月からスタートした「インボイス」制度ですが、賃貸経営への影響はあるのでしょうか。まず、インボイスは消費税に関する制度変更です。マンションやアパートの家賃には消費税がかからないため、影響はありません。
ただし、店舗や事務所、駐車場の賃貸収入や太陽光発電収入、アンテナ基地局の収入に関しては消費税が課税されます。これらで収入を得ている人はインボイスを発行しない場合、取引先が仕入れ税額控除を受けられなくなります。詳しくは以下の記事をご参照ください。
確定申告を忘れたり、遅れたりした場合はどうなる?
確定申告は申告期限が設けられており、原則3月15日までとなっています。新型コロナウイルス流行などの社会的な問題で期限が延長されたことはありますが、申告期限をしっかり把握し、遅れないようにしましょう。
もし期限を過ぎてしまった場合、無申告加算税が課せられる場合があります。無申告加算税は、原則として納付すべき税額に5~20%が加算されます。
確定申告で忘れがちなことや注意点は?
申告が漏れやすいものとして、一時所得となる保険満期金があります。保険満期金から保険料の総支払額を引いた金額が控除額である50万円を超えている場合は確定申告が必要です。
確定申告において、見落とすと損をするかもしれないのが10万円以上の医療費に対する医療費控除やふるさと納税による控除。これらについても申告漏れがないか注意しましょう。
「経費の種類とその計上方法」で触れたとおり、確定申告では、事業にかかったお金(経費)を収入から引くことができます。しかし当然ながら、賃貸経営に関係のない支払いも経費にしてしまうのは不正にあたります。
例えば、プライベートでの食事代や交通費、仕事でも着るかもしれないもののほぼ私用で買ったスーツ代などは経費ではありません。確定申告では、一つひとつの領収書までは提出しないため、「バレなければいいか」という気持ちが生まれてしまうかもしれません。
しかし、もし税務調査が入って「本来納めるべき税額が納付されていない」と判断されてしまうと、追徴課税が課されます。これは本来の税額(追加本税)にペナルティーが加算されたもので、申告遅れに対する無申告加算税もこれに含まれます。他に過少申告加算税や重加算税など、内容によって税率が変わります。
隠ぺいなどの不正事実があった場合に課される重加算税が最も重く、追加本税に加えて、その35%~40%の金額を支払わなければなりません。さらに、追徴課税には通常の税金のような支払い猶予がなく、一括で納付する必要があります。
家賃収入の確定申告をスムーズに行うために
家賃収入には確定申告が必要であること、申告には青色と白色の二種類があること、申告に必要な書類や経費について解説してきました。
今後、より賃貸経営の事業規模を拡大していくのであれば、メリットの多い青色申告を検討してみても良いでしょう。まだそこまでの経営規模ではなくても、普段から収入や経費を意識し、必要書類や収支をまとめておくことで、いざ確定申告をするときもスムーズに行うことができます。
確定申告を初めて行う際は戸惑うこともあるかもしれませんが、現在は電子上で申告を行うことができ、帳簿を助けてくれる会計ソフトも多く登場しています。国税庁の相談窓口でも電話やチャットボットでの相談が可能です。
すべての事業において、今後の見通しや改善は収支の把握から始まります。確定申告をそのチャンスととらえ、より有利な賃貸経営を展開していく第一歩としてみてはいかがでしょうか。
※この記事内のデータ、数値などに関する情報は2023年10月10日時点のものです。
文/石垣 光子
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